雷神の月兎、マッハ1の超絶ざまぁ!――全回復と物理粉砕の無限地獄(ヤキ入れ)がスタートします
雷神の月兎、マッハ1の超絶ざまぁ!――全回復と物理粉砕の無限地獄(ヤキ入れ)がスタートします
分厚い夜雲が風に流され、漆黒の夜空に、くっきりとした真ん丸な『満月』が顔を出した。
「あはっ……あはははははっ!!」
ポポロ村の広場。
私の作った『超回復ドリンク』によって体力を完全に取り戻した新村長、キャルル・ムーンハートの身体から、凄まじい魔力の奔流が巻き起こっていた。
普段の彼女の、あのぽわぽわとした慈愛に満ちたオーラではない。
ウサギ耳はピンと限界まで直立し、瞳孔は肉食獣のように細く収縮している。そして彼女の足元――タローマン製の『特注安全靴』から、バチバチと紫電を帯びた暴力的な雷光が迸り始めたのだ。
「な、なんだあのウサギの娘は!? 足から雷が……!?」
「ひるむな! ただのハッタリだ! 魔獣ども、あのウサギを食い殺せェッ!」
黒蛇商会のリーダーが怒鳴り声を上げ、数十匹の凶悪な魔獣と、完全武装した傭兵たちが一斉にキャルルさんへと襲いかかった。
「キャルルさんッ!」
私が思わず叫んだ、その瞬間。
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!
空気が、破裂した。
いや、大げさな表現ではなく、文字通り『音の壁』が打ち破られたことによる、凄まじい衝撃波が広場を吹き荒れたのだ。
「え……?」
誰も、彼女の姿を捉えることができなかった。
クラウチングスタートの姿勢から飛び出したキャルルさんは、満月の光を浴びたことでリミッターが完全に外れ、なんと『マッハ1』を超える超音速で戦場を駆け抜けたのである。
「あははははっ! 遅い遅い遅ーいっ!!」
頭上から、狂気じみた高笑いが響く。
見上げると、上空二十メートルの高さまで跳躍したキャルルさんが、空中でクルリと一回転し、凄まじい紫電の闘気を特注安全靴に一点集中させていた。
安全靴に仕込まれた『雷竜石』が、満月の魔力に呼応して完全に解放される。
出力、一億ボルト。破壊力換算、およそ二百七十七トン。
「――【超電光流星脚(スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク)】ッッ!!!」
紫色の流星が、一直線に傭兵団のど真ん中へと突き刺さった。
ズチュドォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
落雷と大爆発が同時に起きたような、天変地異クラスの轟音。
広場の石畳がクレーターのように抉れ、強固な重装甲を着込んでいた傭兵たちと巨大な魔獣が、まるでボウリングのピンのように空の彼方へと吹き飛ばされていく。
一撃。
たった一撃の飛び蹴りで、百人規模の傭兵団の陣形が、完全に消し飛んだのだ。
「……おいおい」
龍魔呂さんの口から、咥えていたタバコがポトリと落ちた。
「なんだ、今のデタラメな威力は……。あのウサギの嬢ちゃん、下手すりゃ俺の『創世のクワ』より破壊力あるんじゃねぇか……?」
「……あぁ。俺も、思わず大剣を構え直すところだった」
レオンハルト様すらも、冷や汗を流して呆然としている。
イグニス様に至っては、「ふ、ふんっ。我が炎に比べればあんな物理攻撃など……」と強がりながらも、尻尾の先がピーンと伸びて硬直していた。
「あははははっ! まだまだ行きますよぉ! 皆さん、運動不足みたいですから、心拍数もっと上げていきましょうねぇ!!」
爆心地に無傷で降り立ったキャルルさんが、満面の笑みでダブルトンファーを構えた。
そこからは、まさに一方的な蹂躙だった。
「ひ、ひぃぃっ! 化け物だ! 逃げ――!」
「はい、よそ見しない! 【乱れ流星脚】!」
逃げ惑う傭兵たちを、キャルルさんは周囲の建物や木々を三角飛びしながら、変幻自在の軌道で次々と蹴り飛ばしていく。
あまりの理不尽な暴力。冒険者たちから『雷神の月兎』と恐れられた彼女の、本当の姿。
「ク、クソがぁぁっ!!」
リーダーの大男が、やけくそになって巨大な戦斧を振り下ろしてきた。
しかし、キャルルさんはそれを最小限の動きで躱すと、ダブルトンファーに闘気を乗せ、男の胸当てに向かって強烈な一撃を叩き込んだ。
「【月影流 破衝撃】!」
「ガッ……ゴハァッ!?」
トンファーから放たれた衝撃波が、分厚い鋼の鎧を内側から粉砕する。
大男は血を吐きながら地面に倒れ伏し、手足の骨を複雑骨折して完全に戦闘不能となった。
「あ……あぁ……っ、お、俺の腕が……足が……っ」
全身の激痛に、大男は涙と鼻水を垂らして絶望の声を上げた。
これで終わりだ。悪党は裁かれた。誰もがそう思った、その時だった。
「ああっ! 大変! すっごい大怪我じゃないですか!」
キャルルさんが、慌てた様子で大男のそばにしゃがみ込んだ。
「て、てめぇがやったんだろうが……っ!」
「私はポポロ村の村長ですからね。いくら招かれざる客とはいえ、村の中で行き倒れさせるわけにはいきません!」
キャルルさんは、ニコニコと笑いながら『月光薬』の光を大男の全身に浴びせた。
シュゥゥゥゥッ……!
途端に、大男の折れた手足がバキバキと音を立てて繋がり、粉砕された肋骨も元通りになり、全身の痛みが嘘のように消え去ったのだ。
「え……? あ、あれ? 治った……? 俺の身体、完全に……」
大男が、信じられないというように自分の手を見つめる。
「よかったぁ! 全回復ですね!」
キャルルさんが、嬉しそうにパチンと手を合わせた。
そして。
可憐なウサギ耳の少女は、そのまま大男の胸ぐらをガシッと掴み上げ、満面の笑みでこう言い放った。
「それじゃあ、第二ラウンド。行ってみましょうか!」
「――はい?」
大男が間抜けな声を漏らした瞬間。
「【月影流 顎砕き】ッ!!」
キャルルさんの闘気を纏った強烈な膝蹴りが、大男の顎を綺麗にカチ上げた。
「ガベェッ!?」
再び空を舞い、地面に叩きつけられる大男。
顎の骨が外れ、白目を剥いて痙攣する。
「あああっ! またお怪我を! ダメですよ、そんなに転んじゃ! はい、全回復!!」
光が降り注ぎ、大男の顎が瞬時に治る。
「あ、あれ……? 俺、今、確実に顎が砕け――」
「【月影流 鐘打ち】ッ!!」
ドゴォォォォンッ!!
安全靴の回し蹴りが腹部にめり込み、大男がくの字になって吹き飛ぶ。
「はい、全回復!!」
「ひぃぃぃぃぃっ!? や、やめ……っ!」
「【乱れ鐘打ち】ッ!! アタタタタタタタタッ!!」
「アベベベベベベベベベッ!!!」
……それは、まさにこの世の地獄だった。
殴り飛ばして、骨を折り、瀕死にさせた直後に『全回復』させる。そしてまた殴る。
相手が気絶することすら許さない。死ぬことも許されない。
痛みと恐怖だけを永遠に味わい続ける、天国と地獄の無限ループ(ヤキ入れ)。
「……エグい。いくらなんでもエグすぎるぞ、あのウサギ」
「あぁ。俺も大概いろんな拷問を見てきたが、あれほど心を折るのに特化した暴力は見たことがない」
龍魔呂さんとレオンハルト様が、ドン引きした顔で青ざめている。
私も、あまりの光景に口をポカンと開けて突っ立っていることしかできなかった。
「あはははは! どうですか! ポポロ村の村長による、手厚いおもてなしは! 健康第一ですからねぇ!」
血まみれになっては治り、また血まみれになる。
その無限拷問を十回ほど繰り返された頃には、黒蛇商会のリーダーは完全に心が崩壊していた。
「あ、あばばばば……っ! ご、ごめんなざいぃぃぃっ! も、もう許してぐだざいぃぃぃっ!」
リーダーの大男は、キャルルさんの足元にすがりつき、ボロボロと大粒の涙を流しながら土下座をした。
「借金は! 借金はチャラでいいですぅぅ! なんならウチの商会の全財産、ポポロ村に寄付じまずぅぅ! 姉御、一生ついていきまずからぁぁ! だがら、だがらもう……回復しないでぐだざいぃぃぃっ!!」
裏社会の極悪シンジケートが、一人のウサギ耳の少女に完全に屈服した瞬間だった。
圧倒的な武力と、狂気じみた『慈愛(物理)』。
昼間、善良な村人たちを毒で苦しませた悪党は、その何百倍もの恐怖と痛みをもって、完全に制圧されたのである。
「えへへっ! 皆さん、とっても元気になりましたね!」
月明かりの下、タローマンの安全靴から微かな煙を上げながら、キャルルさんは無邪気なピースサインを作った。
……翌朝、満月の魔力が切れて正気に戻った彼女が、「ごめんなさぁぁい! 私、またやっちゃいましたぁぁ!」と頭を抱えて涙目になるのは、もう少しだけ先のお話。
ポポロ村の平和は、この最強で最狂の新村長によって、無事に(?)守り抜かれたのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
ついに満月が顔を出し、キャルルのリミッターが解除!
マッハ1で戦場を駆け抜ける【超電光流星脚】からの、気絶も死も許されない「全回復&物理粉砕の無限ループ」!!
昼間、善良な村人たちを苦しめた悪党への、これ以上ない最高(最恐)の『ざまぁ』をお届けしました!
強すぎるレオンハルトや龍魔呂すらもドン引きさせる、キャルルの極端すぎる二面性。
ボロボロに泣きながら命乞いをする闇金シンジケートの姿に、少しでもスカッとしていただけたなら嬉しいです(笑)。
次回!
翌朝、正気に戻って大反省するキャルルと、山のように届く「貢物」。
そして、キャルルの「ヤンデレ気質」が、クロエとレオンハルトのイチャイチャを巡って再び火を噴く……!?
「キャルルヤバすぎる(笑)」「回復魔法の正しい(?)使い方!」「最高にスカッとした!」と思っていただけましたら!
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