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S7−18



ビジネスホテルって、好きかも。


観光とかで楽しむ為に泊まる用じゃなくて、

物足りないかもしれないけど。

無駄がない。

アメニティとか。ドライヤーとか。

消臭剤とかも。最低限のやつは揃ってる。


ケトルがあって、それでお水を沸かして。

サービスで付いてるティーパックで、

緑茶とか紅茶も飲める。とてもいい。


ただ、ご飯は付いてないから

外に食べに行かないとだけど。

でもそれは、自由に出かけられて

好きなグルメができると思えば。

その分、コスパできるし。


去年、その良さが分かって。

将来一人旅するなら、

ビジネスホテルにしようと心に決めた。




部屋内の温度が快適になったせいか、普通に

温かい紅茶が飲めている。


これって、贅沢だと思う。




「パパとはね、仕事で知り合ったの。

 何も、ドラマはないんだけどね······

 ただ、何ていうか惹かれるものがあって。

 気づいたら、ご飯に誘ってたわ。」



夏芽は、カップに注がれた紅茶を啜った後

テーブルで向かい合う沙綾に問う。



「ママから、誘ったんだ?

 どこが良かったとかないの?」


「そうね。······うーん。ないって言うと、

 誤解があるけど。総合的に良かったとしか。

 仕事できるし、オシャレだし。

 さりげないところが良かったかな。

 嗜好も、合ってたわね。」



何となく、分かる。

パパって、何でも

さりげなくこなしちゃうんだ。そこが、

スマートでカッコいいところ。

ちょっと、押しに弱いけど。



今のママは、とても若く見える。

ばっちりメイクのせいでもあるけど。

話し方も、友だち感覚で。


この空間が、楽しい。



「······それで?

 それから、付き合うようになったの?」


「······

 引くかもしれないけど、その。

 その一晩で、一線越えて。

 あなたができたの。」



夏芽は、きょとんとした。



「えっ、どいうこと?付き合ってないのに?」


「······その時の私は、どうかしてたのよ。」



どうかしてた。それで、片づけられるのか。


何か。聞いちゃいけない話を、

聞いてしまったような。



「当時、仕事に明け暮れていたから

 家庭を持つとか、結婚とか、

 全然考えていなかったわ。

 その上で、あなたを身籠ったって

 分かった時······恋愛どころじゃ、

 なくなってしまって。」



母親の、真摯な眼差しが向けられる。



「秀一さんに、相談せずに。

 堕ろそうと思ったの。」



その、一言で。


がん、と。頭突きされたような

衝撃を食らう。



「······でも、堕ろさなかった、の?」



そう聞くしか、できなかった。


そうじゃなかったら。今、自分は。

ここに、いない。



「病院に行って、待合室で

 彼女と出会わなければ······堕ろしていた。」


「彼女······?」


「橋本先生よ。」



急に、その名前が出てきて。


ハッとする。



「堕ろすの?って、直で聞かれて。

 最初、何だこの人は、って思った。

 でもね······彼女は、私を変えたの。

 あなたが、一生懸命

 生きようとしているって言われて。

 それで、思い直したのよ。」


「······えっ、えっ?待って、ママ。

 その時の自分って、まだ、

 形にもなってない、よね?」


「ええ。でも、そう仰ったの。」



ふっ、と。母親の表情が、優しく解ける。



「その出会いからよ。橋本先生と、

 交流するようになったのは。」




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