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S7−17


18時になったら、ロビーに集合しましょう。


その、ママの一声で解散した。



ピアノの先生と生徒。

先生の息子と保護者。


その壁を感じさせないくらい、

家族間で仲良しになった。

もしかすると、実の親戚よりも。



「去年もだけど、酷い暑さね〜。」



部屋に入ると、急にママは

オフ状態になった。


セットアップの上着を脱ぎ、

汗拭きシートを取り出す。



「なっちゃんも使う?」


「うん。」



荷物を取り出すのは、後回し。


唱磨くんじゃないけど、久しぶりに味わう

人の多さと密度の濃さに、少し疲れた。



親子揃ってベッドに座ると

服を捲り、シートで拭き出す。



部屋は、自分とママ、

的野先生と唱磨くんの二部屋で分かれていた。


当然といえばそうだけど、最悪

みんな同じでも支障なさそう。

そのくらい、リラックスできそうな関係に

なっているような。

でも、流石に。

着替えとか、こういう汗拭きとか

しづらいかな。


なんて、変なことを考える。



「去年も思ったけど、東京って

 密度濃いよね。」


「自然に慣れたせいね。私も、

 こんなに息苦しかったかしらって

 思っちゃった。」



そう。それで帰ったらまた、

空気が美味しいってなる。



「······あなたが立ち直り早くて、

 安心したわ。」



ぽつりと落とされた、ママの呟き。


その意味は、分かっている。



「触れないようにしてるだけだよ。」



多分、また。その時になったら、

泣いてしまう。



「離れるのは、苦しいかもしれないけど

 ······きっと、ね。あなたたちなら、

 乗り越えられると思うの。」


「······うん。その為に、頑張るから。」



お互いに、乗り越えて。


同じ景色が、見たいから。



「ママだけに話すけど······付き合うって

 正直、分かっていなかったんだよね。

 別れるっていうのも、何か違う気がする。」



シートで拭いたところが、スースーする。


エアコンも効き始めて、涼しいな。



「······近すぎるのかもしれないわね。

 距離感というか。友だち以上だけど、

 恋人ってなると······どう接していいのか

 分からないっていうのかしら。」



小さくため息をつく、ママの表情。


母親としてではなく、大人の女性に見える。



「ねぇ、ママ。」


「んー?」


「パパとの出会い、聞かせて。」



これは、いい機会だと思う。


母親としての、姿じゃなくて。

一人の女性としての、姿が知りたい。



「······ふふっ」



なぜか、ママは笑った。



「どうしたの?」


「何か、ね。聞かれるんじゃないかと

 思ったのよ。予想通りだったから。」



服装を整えながら、立ち上がる。



「荷物整理して、落ち着いたら話すわ。

 夏芽も、そうしなさい。」




“話す時が、きたようね······”



という、言い回しのように聞こえて。


口答えせず、素直に立ち上がった。






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