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S7−16





その日の出来事が、切り取られたように。


何事もなく日常は、過ぎ去っていった。


触れないようにしていたのか。

それすらも、感じさせないまま。



気づけば、梅雨が明けて。

蝉が一斉に鳴き出して。


終業式を迎えた後、すぐに

コンクール前日を迎えた。











             *











飛行機で、約2時間弱。


コンクールが開催される会場の近くにある

ホテルへ、電車で向かうこと約20分。


無事に到着したものの、

博多駅の混雑さとは比較にならない

人の多さを味わい、唱磨は

疲弊している様子だった。



「一体、どっから湧いてくるん······

 東京、人多すぎやろ······」



ずっと、そればかり言ってる。



「だよね。」



思った事を口にせず、夏芽は

苦笑して相槌を打った。



「人に酔うなんて、マジであるんやな······」


「暑いのもあったけんなぁ。

 少し休んだらよかよ。」



恭佑は、額に噴き出ていた汗を

ハンカチで拭っている。



確かに外は、めちゃくちゃ暑い。

施設内のエアコンが

とてもよく効いてて、助かった。



「そうする······」


「うふふっ。唱磨くん、東京は

 初めてなんですね。」



げんなりしている彼を、微笑んで労う沙綾。



酷い暑さを感じさせないくらいに、

メイクもコーデも完璧に整っている。


そんな母親の姿を見るのは、

久しぶりだった。



「生まれたばかりの頃は、

 住んでいたんですけどね。」


「えっ。それ、知らんやった。」


「数ヶ月だけやったからね。」



じゃあ、移り住まずに

そのままだったら。唱磨くんは、

東京弁喋ってたんだ。


何か、変な感じ。



「唱磨。チェックインしてくるけん。

 スーツケース見とって。」


「りょーかい······」


「夏芽。私も、お願い。」


「はーい。」



それぞれの親たちがフロントへ行くのを、

二人は見送りながら会話する。



「······東京って、高い建物ばかりやな。

 首が痛くなった。」


「あははっ。都心は特に、そうだね。

 見上げてる人は、他県の人って分かる。」


「田舎もんって、すぐバレるってやつやな。」




あれから。


彼とは、ホントに。何事もなかったかのように

普通に喋って、スマホでもやり取りして、

仲良く過ごしている。


何か、吹っ切れたかのように。

期限まで、全力で楽しむように。

考えないように。


······


時々、思い出して。

胸の奥が、きゅうっとするけど。


特に、何も。変わりはない。




「せっかく来たけん、

 美味しいもん食べんとな。」


「ママの知り合いがやってるお店で、

 晩ごはん食べるみたいだよ。」


「何系?」


「イタリアンって言ってた。」


「へぇー。パスタか。いいやん。」



イタリア=パスタ。間違いはないけど。



「他にも、いろいろあるみたいだよ。」


「ピザもいい。」


「自分は、ティラミスが食べたい。」


「出たっ!甘いもん!」


「も、もちろん料理も食べるんだから!」


「ははっ。分かっとるって。」



可笑しそうに笑う彼に、釣られて綻んだ。






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