114話 父と娘の話
酔いつぶれていた美琴の父は夕方に目を覚ます。母は、父のために雑炊を作る。美琴は父に言う。
「お父さん、美人の酌で飲みすぎたんじゃないの。」「確かに玉枝さんは美人だったな。」
「お母さんに聞こえるわよ。」「これはお母さんに怒られるかな。」
「聞こえてますよ。」「これは浮気じゃないぞ。」「分かってますよ。」
母は父に卵雑炊を出す。父は酔い覚ましに雑炊を食べる。
美琴は、これほど自分のことを他人に話した父を見たことが無かった。彼女は父に話をする。
「お父さん、私のこと思ってくれてありがとう。」「どうしたんだ、急に。」
「今日のお父さんの話を聞いて見守られていたとわかったわ。」「当然のことだろ。」
「でも、うれしいよ。」「そうか。」
美琴はここで話を止める。彼女は父に言いたいことを整理する。それは父に伝わらないかもしれない。
それでも話さなければならない。もう、彼女は選んでしまっているのだ。
「お父さんは、つよしのこと嫌い。」「軽い感じの男だ。騙されているんじゃないのか。」
「私が軽い男に騙されるような娘に見える。」「そんなことはないぞ。ただ恋は盲目ともいうからな。」
「そうね、つよしは見た目が軽薄に見えるけど真面目よ。」「信じられないな。まあ、諦めると思っていたが、違っていたな。」
「つよしは諦めないよ。」「お前はどうなんだ。」
「私も諦めないわ。」「向こうのご両親に受け入れられるとは限らないぞ。」
「分かっている。」「まあ、私の娘だからだいじょうぶだろう。」
「お父さん、娘から卒業しなくちゃだめよ。」「お前は、ずうっと私の娘だ。何が悪い。」
「怖いお父さんを続けていると、結婚した時、来づらくなるよ。」「結婚だと。」
「たとえ話よ。」「あいつ、結婚を迫っているのか。」
「そんなことないわ。」「そうか、ならいいんだ。」
「つよしを家に呼んだ時は会ってね。」「私は付き合いを認めていないぞ。」
「娘を信じられないの。」「そうは言ってもなー」
「どんな男ならいいの。」「お前を幸せにできる男だ。」
「つよしがそうかもしれないわよ。」「分かった。あの男のダメなところを見つけたら別れるんだぞ。」
「その時は、私から別れるから大丈夫よ。」
美琴はつよしとお試しで付き合えることになる。




