第五話~困惑~
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今回の初登場人物です。
・市村ほまれ→いちむらほまれ
・神城雪子→かみじょうゆきこ
・藤神アスカ→ふじがみアスカ
月に着いた。
振り返れば、青と白のきれいな色をした地球が見える。龍はジンと共に、建物の中へと入っていく。
中は簡素なつくりになっていた。飾りのたぐいは一切なく、灰色の壁がむき出しだ。
通された部屋では、三人の人物が龍を待っていた。白衣を着た女性が声をかけてくる。
「ようこそ、神崎龍。私はここを仕切っている、市村ほまれだ。よろしく」
明るい茶色の髪を背中まで伸ばしたその女性は、龍に握手を求めてくる。
龍が握手をすると、残りの二人も自己紹介を始めた。
濡れたような長い黒髪の上半分をふたつにくくった少女が、手を差し出す。
「私は神城雪子。よろしく」
続いて、短めの茶髪を頭の後ろで無造作にくくった少女が、棒付きキャンディーで口をもごもごさせながら言う。
「アタシは藤神アスカ。よろしく~」
「………どうも」
龍は初めて会ったこの三人に、戸惑いを隠せない。
そんな龍に、ほまれは少し申し訳なさそうに言った。
「まだ着替えも用意できていないのにいきなりで悪いが、神崎龍。仕事だ」
「仕事………?」
龍は首をひねる。
ほまれは続けた。
「今回は、ジン、藤神アスカ、神崎龍の三人で行ってきてくれ。神城雪子はここで待機だ」
「ああ」
「はい」
「は~い」
ジン、雪子、アスカが、順番に返事をする。
龍は首をひねるばかりだった。
「仕事って、なんのこと?」
地球に向かう宇宙船の中で、龍は二人に尋ねた。
アスカはジンを横目で見る。
「説明してなかったわけ?」
「ああ」
ジンは短く答える。
アスカは仕方なく、棒付きキャンディーを口から離すと、説明を始めた。
「アタシたちが異能者だってことは、知ってんでしょ?」
龍は頷く。
「アタシたちは人間と対立してる。だから戦う。今回だってそう」
「戦争ってこと………?」
「そーいうこと。これは、人間と異能者の全面戦争。ちなみに、アタシたちが産まれる前から続いてる」
龍は黙り込む。これから自分は、戦わなければならない。
船が地球に着く。着陸したのは、どこかの知らない島。
「ここは?」
龍は宇宙船から降りると、辺りをきょろきょろと見回しながら尋ねた。
ジンが答える。
「敵の本拠地だ。……よそ見をするな」
アスカが銃を構える。
「来るよ」
周りのしげみががさごそと音を立てる。そこから、何人もの子どもたちが銃を持って飛び出してきた。彼らはみな、焦点のさだまらない目で龍たちを見据えている。
「子ども………?」
龍は呟く。
ジンが早口で説明した。
「あいつらは全員孤児だ。人間サイドのリーダーは、世界中から身寄りのない子どもたちを集めて兵士にする」
「子どもたちを、兵士に………?」
ジンは続けた。
「そして集めた子どもたちの脳を改造して、意のままに操る。身寄りのない子どもが消えたところで、周りはなんとも思わないだろうからな。今のあいつらは、生きた操り人形だ」
「………っ」
龍は絶句する。人間の脳を改造するなんて、今まで想像すらしたことがなかった。
アスカはもう戦い始めている。彼女が撃った弾は、一発もはずれることなく敵の兵士へと撃ち込まれていく。
ジンも敵の懐につっこんでいった。
龍は一人きりになる。
敵の兵士が近づいてきた。
「………っ」
龍は息をのむ。例え死ななくても、撃たれるのは怖い。そう本能が訴える。
敵の兵士が撃ってきた。弾は、避けようとした龍の手足をかすめる。
「い………っ」
龍は痛みに顔をしかめた。やはり、痛いものは痛いのだ。
「おいっ」
ジンが龍を撃った敵を倒す。
「何をしている。殺らなければ殺られるぞ」
しかし、今の龍にはそれが聞こえない。
痛みと恐怖が龍の思考をからめとる。
痛い。怖い。痛い。怖い。痛い。
急にがたがたと震え出した龍を、ジンが軽く揺さぶる。
「おい!」
「龍!?」
ジンとアスカの声が重なる。
龍の意識は遠のいていった。
たくさんの人に読んでいただけて嬉しいです。
次回は、龍とジンが喧嘩します。




