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第三話~視線~

私は基本、更新するのが遅いです。我慢して付き合っていただけたら嬉しいです。


今回の初登場人物です。

・ジン

「見て、あの子………」

 通りすがりの女性が指をさす。

「ああ、屋上から落ちても死ななかったっていう子?」

 もう一方の女性が答える。

「怖いわぁ」

「近寄っちゃ駄目よ」

 小さな子どもを連れた母親が、子どもにそう言っている。

 龍は俯く。自分に向けられる好奇の視線から逃げたくて、俯いたまま歩く。

 好奇の視線を受け始めたのは、数日前からだった。先日、校舎の屋上から突き飛ばされて死ななかったときに撮られた映像が、ネットにアップされてしまったのだ。再生回数は瞬く間に上昇し、それに比例して、彼に向けられる好奇の視線は増えていった。

 別に、それだけだったらまだいい。自分が耐えればすむのだから。しかし、その視線が一緒にいる咲にまで向けられるのは、耐え難い。

「私は羨ましいですよ」

 咲が口を開く。彼女は、周りの視線など気にしていないようだった。

「え………?」

 龍は咲の方を見る。

 咲は笑っていた。自分の手を見つめている。その手には、絆創膏が何枚も貼られていた。

「私は家で料理の練習をするんです。料理が下手なので。でも、全然上手くならなくて、毎回怪我をします」

 龍は黙って聞いている。

「だから、神崎くんが羨ましいんです。神崎くんみたいに怪我が早く治れば、絆創膏なんか貼らずにすみますから」

「………」

 龍は思い出す。

 誰もが気味悪がった。怪我がすぐに治る、屋上から落ちても死なない、この体を。

 しかし、咲だけが羨ましいと言った。

「………っ」

 龍はなんだか泣きたくなった。






 数日後。

「………くしゅっ」

 龍は身震いした。

 屋上の風は強くて、少し冷たい。しかし今の龍には、人のいないこの場所が、天国のように思われた。

 相変わらず、好奇の視線は彼に向けられ続けている。

 そして今日は、咲がいない。風邪をひいて休んでいるのだ。

「大丈夫かな、咲さん」

 一人ぽつりと呟く。

 すると。

「人の心配より、自分の心配をしたらどうだ」

 声がした。

 龍は後ろを振り向く。

 見たことのない男子生徒が立っていた。細身で龍よりも背が高い。切れ長の目はナイフのように鋭い。

 龍は思わず身構える。先日、あんなことがあったばかりだ。油断はできない。

「誰?」

 龍が尋ねる。

 男子生徒は短く答えた。

「ジン」

「ジン………?」

 龍は男子生徒の言葉を繰り返す。

 するとジンは、いきなり龍に飛びかかってきた。

 龍の体に衝撃が走る。

「!」

 見ると、腹部の辺りに折りたたみナイフが刺さっていた。

「………っ」

 ナイフが抜かれる。

 しかしこの前のように、龍の傷はすぐに治った。

 ジンはそれを見ると言った。

「俺とこい」

「は………?」

 龍は首をかしげる。いきなり人を刺しておいて、どうしてそんなことが言えるのかわからなかった。

 ジンは続ける。

「お前を迎えにきた」

「え………?」

 ますます訳がわからない。

 龍は、開いた口がふさがらなかった。

咲って優しいですね(自分で書いておいてなんですが)。

次回、龍の家に意外なお客さんがきます。そして龍の母親が………。

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