第二話~異変~
「………くん」
声がする。
「………神崎くん」
声が近づいてくる。
「神崎くん!」
「………っ」
龍は目を開けた。
「………良かった。目を覚ましたんですね」
見ると、咲がほっとしたような顔で龍の顔をのぞきこんでいた。
「ここは………?」
龍はまだぼんやりする頭で尋ねる。
咲は微笑んで答えた。
「病院です。神崎くんが助けた男の子は無事でしたよ」
「そうなんだ」
龍はほっとした。無事で何よりだ。
「では、私はこれで。神崎くんが目を覚ましたので、安心しました」
咲は立ち上がる。
「また来ますね」
そして病室を出ていった。
「………」
誰もいなくなった病室で、龍は目を閉じる。
眠気はすぐにやってきた。
「おい神崎、ちょっとこい」
「え?」
退院後、登校した龍に、複数の男子生徒が声をかけてきた。彼らは普段から日常的に龍にちょっかいをかけてきている。
「なんだろう………?」
不思議に思いながらも、龍はおとなしくついていく。逆らってもいいことがないのがわかっていたからだ。
男子生徒たちは、龍を校舎の屋上へと連れて行く。
屋上に着いた。
男子生徒たちは、龍を屋上の端に立たせる。そのうちの一人が、携帯の動画機能でその様子を撮影していた。
なんだか嫌な予感がする。
男子生徒たちのリーダー的存在の生徒が、龍の方へと近づいてきた。
龍は青くるなる。
「………ちょ、ちょっと。何するつもり?」
慌てて後ずさろうとするが、大して下がることができない。
このままでは大変なことになると、本能が訴える。けれど、龍にはどうすることもできない。
近づいてきた生徒が、龍の肩を思い切り突き飛ばした。
「!?」
龍の体がふわりと宙に浮く。龍はそのまま落下して、地面に叩きつけられた。
「っ………」
あまりの衝撃に息がつまる。
しかし。
「……あれ………?」
龍は起き上がる。全身がばらばらになりそうな程の衝撃を受けたのに、かすり傷ひとつない。普通なら、死んでいてもおかしくないというのに。
「おい、生きてるぞ。あいつ」
上から声がした。
見上げると、自分を突き飛ばした男子生徒たちが、自分を見下ろして騒いでいる。
彼らは龍と目が合うと、一目散に逃げていった。
そしてその様子は、携帯の動画機能にばっちり記録してあった。
次回から、龍の日常が崩壊していきます。




