第一話~約束~
前回の「後書き」でも書きましたが、私はルビの振り方がよくわからないので、「前書き」を利用してちょこちょこ人物名の読み方を書きたいと思います。
・神崎龍→かんざきりゅう
・神村咲→かみむらさき
今回は二人です。
「神崎くん、一緒に帰りませんか?」
いそいそと帰る準備をしていた神崎龍は、手を止めて顔を上げた。見ると、同級生の神村咲が笑顔で立っている。
龍は慌てて返事をした。
「うん、帰るよ。ちょっと待っててくれる?」
そう言って、急いで帰る準備を再開する。
咲は笑顔でそれを見ていた。
帰る準備を終えた二人は、揃って学校の門を出る。
咲が口を開いた。
「そう言えば、今日返ってきたテストの結果はどうでしたか?」
「ああ、あれ?」
今日は、この間あった定期テストの結果発表の日だったのだ。正直なところ、あまり褒められた結果ではない。
龍は苦笑した。
「………ぼろぼろだったよ」
「そうなんですか?私もです」
咲も苦笑する。
「来年は受験生なのに、こんな結果で大丈夫なのか心配になります」
「咲さんなら大丈夫だよ。たぶん僕の方が酷いから」
すると咲は、何かを思いついたように手を叩いた。
「じゃあ、次の定期テストのときは、一緒にテスト勉強しませんか?」
「え!?」
龍は驚いて、思わずすっとんきょうな声を上げる。
咲は、両手を胸の前で合わせた。
「ほら、『三人よれば文殊の知恵』と言いますし。……この場合は二人ですけど」
咲の楽しそうな様子に、次第に龍もつられて楽しくなってくる。
「………そうだね。一人でするよりもはかどるかもしれないね、テスト勉強」
「では、そういうことで。約束ですよ」
咲はにっこりと微笑む。
二人は街の交差点にさしかかった。横断歩道の前で立ち止まる。
隣には、両手でサッカーボールを抱えた男の子が立っていた。
龍と咲は、とりとめもない話をして笑っている。
道の向こうから大型トラックが近づいてきていた。
そのとき。
「あっ」
二人は小さな悲鳴を聞いた。視線を隣へと滑らせる。
男の子がサッカーボールを追いかけて、道路へと飛び出していた。
大型トラックが迫ってくる。
「危ない!」
気付いたときには、龍は男の子の方へと手を伸ばしていた。
クラクションの音が鳴り響く。
「神崎くん!?」
咲の叫び声がクラクションの音にかき消される。
龍の体を衝撃が襲った。
事故ってしまいましたね。
どうなることやら………。