↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法では解けない謎がある  作者: 渋谷 爽月
第1章「鍵を握った死者」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/30

第5話 探偵への招待状

セラは逮捕された。


 彼女が帳簿を盗み、ヴォスに渡したという証言も記録された。ただし、ヴォスは正式な監査資料として受け取ったのだと説明した。


 殺人を命じたとは、セラも言っていない。


 疑いと事実の間には、まだ大きな隙間があった。


 テオは釈放された。彼は門の外で、姉へ頭を下げた。


「父さんの件を蒸し返されたら、姉さんの捜査官の資格が危なくなるって。監督官に言われて」


「それで、殺人を認めたの?」


「僕、うまく説明できなくて」


 ミラは弟の頭を、両手で挟んだ。


「説明が下手なら、時間をかけて。自分を消して解決しないで」


 テオが泣いた。


 夕方、工房の親方が彼を迎えに来た。


「仕事は?」


 テオは、小さな声で聞いた。


「遅れた分はある。針は逃げん」


「僕が戻って、いいの?」


「お前がやったという話と、やっていないという話なら、ちゃんと調べたほうを信じる」


 親方はテオの手を見た。


「ただ、糸屑まで持って帰るな。お前の部屋、巣みたいだぞ」


 少年が、泣きながら笑った。


 ミラは、レインへ視線を寄こした。


「よかった、で終わらせるつもりはない。あの自白ができた理由を、調べる」


「はい」


「あなたの名前も、捜査協力者として残していい?」


 レインは頷きかけて、少し考えた。


「間違っていた部分も、残してください」


「何が?」


「鍵が重要な遺言かもしれないと思いました。最初は、僕も」


 ミラは短く笑った。


「そこを訂正できる人なら、また頼める」


 レインはその夜、ハルへ事件の話をした。


 老記録官は最後まで聞き、机に置かれた靴へ目を落とした。


「探偵になる前に、足を直せ」


 靴底に、小さな穴が開いていた。


 レインは門の飾りを数えていた。こういうとき、どこへ目を向ければいいのか分からない。


 翌朝、彼の机へ封筒が届いた。


 封蝋は黒。押された紋章は、羽根をくわえた狐だった。


『記録官殿。

 君は昨日、魔法に勝ったのではない。

 人が勝手に付け加えた意味を、一つ剥がした。

 悪くない仕事だ。

 次は、七年前の鏡を見てごらん。

 今夜九時、白鷺館。

 怪盗ノクス』


 裏には招待券が二枚。王都最大の慈善競売だった。


 ミラは封筒を日に透かした。


「犯罪予告ね」


「僕には、宿題に見えます」


「あなた、捜査協力の申請もまだなのよ」


「では、申請書の書き方を教えてください」


 ミラは呆れた顔をして、それでも椅子を寄せた。


 申請書の横へ、アルマンの帳簿の写しを広げる。


 司法救済基金の支払い先。その一つは、白鷺館を経営する慈善財団だった。


「ノクスを捕まえる」


「鏡も見ます」


「両方よ」


 ミラが言った。


 その日の昼、レインは古い靴の底を修理に出した。


 夜、怪盗に会うために。


 捜査官と並んで歩いても、途中で底が抜けないように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。