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魔法では解けない謎がある  作者: 渋谷 爽月
第3章「嘘をつかない証人」

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第12話 緑色の嘘

ミラは拘束されたまま、裁判所へ戻された。


 レインの調査には、オルドが同行した。


「私は長く捜査をしている。長く間違いもしている。今回は少し減らしたい」


 ブラムは庭の椅子で待っていた。


 レインは誓約石を置いた。証言をやり直すためではなく、どこまで見たかを分けるためだった。


「相手の顔を見ましたか」


「襟巻きで口元を隠していて。目は、陰になって」


「髪は?」


「帽子をかぶっていました」


「相手がミラさんだと思った、一番の理由は?」


「声です。『先生、納入簿を見せてください』と」


 石は緑。


「そのあと、話しかけました?」


「朝が早いですね、と。返事はありませんでした。それから咳を。昨日、先生と話されていたときと同じ、小さな咳」


 レインは昨日の聞き取りの控えを借りた。


 冒頭の文は、同じだった。


『先生、納入簿を見せてください。少し古いものを探しています』


 咳の記録まではない。だが、録音筒の複製が見つかれば比較できる。


「私は、嘘をついたのでしょうか」


 ブラムが、石から手を離した。


「いいえ」


 レインはすぐ答えた。


「あなたは知っていることを話した。でも、赤い襟巻きと、ミラさんの声から、ミラさん本人だと判断した。見たものと、判断したものが、一つになっています」


 ブラムの目に涙が溜まった。


「昔、私は盗難を見た。今度こそ、ちゃんと話そうと思ったんです」


 彼は、膝の上で両手を組んだ。


「前のときは、身なりの悪い人を見かけたとだけ言った。その人が捕まった。あとで、持ち主の息子が持ち出していたと分かった」


 レインは返事を待った。


「だから、今回は誓約石を使った。嘘ではないことを、確かにしてもらえば」


 ブラムは石を見た。


 緑の光が、指の節に映っていた。


「石が確かめるのは、あなたの正直さです。見た人の正体までは、確かめません」


 オルドが、傍らから言った。


「そこの確認をするのは、我々の役目だった」


「私は、どう話せばよかったのでしょう」


「赤い襟巻きを見た。知っている声を聞いた。だからミラさんだと思った。そう話せば、分かれます」


 レインが答えると、ブラムは何度も頷いた。


 石から手を離す。


「もう一度、最初から話します」


 今度は、記憶を守るためではなく、記憶の中で混ざったものをほどくために。


「人を捕まえてしまった」


「だから、今、分け直しています」


 庭の隅に、ブラムが見た場所があった。そこから庭口までは二十歩。早朝の日陰では、顔を確かめるのは難しい。


 植木の陰から、赤い繊維が見つかった。庭口の釘に引っかかっていた。


 ミラの襟巻きは細い羊毛。繊維は、粗い麻だった。


「色の似た布を使った」


 オルドが包みを閉じる。


 レインは焼けた書庫の前に立った。


 襟巻きも、声も、身につけられる。


 身につけられないのは、その人のした選択だ。

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