STEP10:夜道の自転車のベル
廃寺で急になった鐘の音。
誰かが忍び込んで鳴らしたのか。そのあと、ユウタが小学校で起きた不思議なことを話した。
◯登場人物
優太
高校二年生 帰宅部
読書、ゲームが趣味
陽真理
高校二年生 怪談倶楽部
ユウタの幼馴染、明るく友達が多い
麗華
高校二年生 怪談倶楽部 部長
ヒマリの一年の頃からの友達
ユウタの大伯父、修二
69歳 IT会社の会長 破天荒
「話終わったよー」
いつものように微妙な空気の中、僕の話は終わった。そして、いつものようにヒマリのツッコミが入る。
「ユウちゃん、それって単に引っ越していなくなった、っていうオチだったりしないの?」
ごもっとも。
「うん、その可能性もあるとは思う。というか、その倒れた女の子自体が誰かも結局わからなかったんだよね〜」
僕は一応弁解しておいた。レイカがそれに対して質問をしてくる。
「ユウタくん、耳鳴りって結構そういう何かある時の前ぶれだったりすることはありますよね。金縛りとかもそうだったり。ひとつ聞きたいのは、そのクラスのみんながおかしくなった時は、ユウタくん自身はなんともなかったんですか?」
そういえばそうだな。周りの様子がおかしいな、と思ってるということは、僕は大丈夫ってことなんだろうか?
「うん。まぁ僕までおかしくなっていたとしたら、こうやって話すこともできないような気もするけどね。もしかしたら、変にならなかった代わりに耳が痛くなった、ってことなのかも」
僕は思ったことを話した。
「ユウタ、世の中には色々な怪異があると思うし、実は普通に見えて、普通でないこともある。ユウタが体験したことが怪異に当てはまるのかはわからんが、俺もなんとなくわかる気がしたぞ」
大伯父が共感をしてくれるんだ。やはり大伯父もそういうことを考えることが多いんだろうか。
「多重人格と言われるようなことがある。まぁ文字通り一人の人間の中に複数の人格が潜んでいる、もしくはちょくちょく表に出る場合。あとは、外的要因でその人間がおかしくなっている場合もある。全く別人のようになってしまう時もあるし、元から心の奥に秘めたものが出てしまってる時もあるな」
「シュウジ伯父さん、なんか難しくてわかんないよー。じゃあつぎ〜! 次は私が話すね」
ヒマリが話すと、廃寺でも少し雰囲気が明るくなる気がした。
「ヒマリ、学校ネタとかで被らないでね」
僕は小声でヒマリに言う。
「大丈夫だよ〜、学校はあまり関係ないからさ。じゃあ話しますね〜」
——んーと、これは私が、小学二年生の時くらいだったと思う……
私は小さい頃から、割と運動神経はいい方だったんだよね。
女の子だったんだけども、遊ぶのもおままごととか、お人形さんで遊ぶよりも、男の子とかと外で走り回ったり、鉄棒とか、ブランコとか、とにかく体を動かすような遊びが好きだったの。
でも、自転車はあまり上手く乗れなくて。自転車ってバランス感覚とかだけじゃなくて、同時に色々な動作がいるじゃない?
たぶん、そういうのは苦手だったんだと思う。
まぁそんなこともあって、私が自転車に乗れるようになったのは、その小学二年生の頃だった。あ、それが早いのか遅いのかはもちろん人にもよると思うけどね。
んで、自転車に乗れるようになった時って、凄く楽しくて。学校が終わったらすぐ家に帰って自転車に乗って。学校がお休みの日は、朝から乗ってたりして。
どこに行くとか、そういうのじゃなくて、自転車に乗って走ってるのが楽しかったんだと思う。
二年生の夏休みの時だったと思うんだけど、仲良い男の子達と、自転車で公園に行ったり、原っぱで虫採りをしたりして、一日中遊んでいたの。
で、少し日も沈んできた頃。夏の日が沈む頃ってたぶんもう夜の7時とか結構遅めの時間だと思うんだけど、お友達もそろそろ夜ご飯だ、って帰ったりして。
でも、その日はなんだか、私はまだ遊んでたくて。
家から少し離れてはいたんだけど、自転車があるからすぐ帰れるよね、って自分に言い聞かせて。
一人きりになってたのに、ブランコのある公園に行って、一回だけブランコをしてから帰ろうって、公園まで行ったんだ。
私が公園についた時には、まだ少しは人がいた気がしてたんだけど、ブランコを私がしてる時には、もう誰もいなくなってて。
ブランコも気が済んでやめた頃には、ちょっぴり暗くなりかけていたの。
私は少しだけ怖くなって。
早くに帰ろうと思って、自転車に乗って、ベルを一回鳴らした。
リンリン
夜にうるさくしちゃだめ、ってわかってたけど、なんだか人気が無くなってきた怖さもあって、強がりで鳴らしたんだ。
リンリン
リンリン
二回ベルを鳴らした。
そしたら、
リンリン……
リンリン……
大きい音じゃないんだけども、離れたところから同じような自転車のベルが聞こえた。
あ、誰か同じように遅くまで遊んでいた子供が、私の鳴らしたベルを聞いて返事してくれたのかな、って。
私はそう思った。
リンリン リンリン リンリン
帰りながら、私は普通なら鳴らさないベルを何回も鳴らした。
そしたら。
リンリン…… リンリン…… リンリン……
同じ数を返してくれる。
でも、どこからなんだろう?
あとなんだか暗いのもあって、普段は迷うことのない道を、ちょっぴり迷ってしまったことに気づいたの。
急に私は怖くなって。ベルを鳴らすのもやめてしまった。
リンリン…… リンリン…… リンリン……
でも、どこからか聞こえる自転車のベルの音は止まない。
パパ……ママ……ユウちゃん……
私はどんどん心細くなってきて、色んな人の名前を心の中で呼んだの。
その時、後ろから。
「ヒマリちゃん、大丈夫かい?」
私はびっくりして、小さく悲鳴をあげてしまったんだけど。
声をかけてきたのは、ユウちゃんのパパだったの。
「ユウちゃんのパパ……暗くて帰れなくなっちゃったの」
私は半泣きで話した。
「うん。暗い道は怖いから一緒に帰ろうね。送ってあげるから」
私は無言で頷いた。
「あ、それとね。自転車のベルは必要のない時は鳴らしちゃダメだよ。特に暗い時は気をつけてね」
ユウタの不思議な話のあとは、ヒマリの話だった。
夜に自転車のベルを鳴らすと近所迷惑になるからね。




