せっかく怪談話するんなら、雰囲気出したほうが面白いだろ
今回から体調不良の伊坂先生の代わりに参加することになった大伯父が、話をした。
なんとなくユウタは、大伯父に対するイメージが少し変わった気がした。
◯登場人物
優太
高校二年生 帰宅部
読書、ゲームが趣味
陽真理
高校二年生 怪談倶楽部
ユウタの幼馴染、明るく友達が多い
麗華
高校二年生 怪談倶楽部 部長
ヒマリの一年の頃からの友達
麻衣
高校二年生 怪談倶楽部 副部長
レイカと同じくヒマリの一年の頃からの友達
ユウタの大伯父 修二
69歳 IT会社の会長 破天荒
ユウタの祖父 聡
67歳 酒好き
大伯父のした話は、なんとも言えない後味の悪いものだった。
「シュウジ伯父さん、その岩の中からの音って、その子供が原因だったってことなの?」
ヒマリが大叔父に聞く。
「んー、どうだろうな? 俺も毎日公園に行ってたわけじゃないし、そのあとどうなってたか、何が起こってたかもしらんからなぁ」
大伯父がそれに答えるが、その返事はだいぶテキトーだ。
「そういう大きな岩とかって全国各地にあったりして、道路を挟んで佇んでいる岩とかもあったりしますね。木とかもそうですけど、長い年月をかけて神が宿っていると言われているものもあったり、それを退かせようとすると、工事で人が亡くなったりとかいう話もたまに聞きますね」
部長のレイカがフォローする。
そういうありがたい岩なら尚更、大伯父はだいぶ失礼なことをしていたことになるな。もしかしてその子供はとばっちりだったんじゃないのか。
「まぁそういう話は山程あるわな。実際に神様や霊とかが絡んでいる場合もあれば、裏では人が絡んでいて、脅かすための作り話ということもある。そうそう、来週からの八月も週一で集まるんだよな? 学校でない怖い雰囲気の場所とかで集まるとか、そういう案はないのか?」
出たよ、大叔父のクビつっこみたがるクセ。さっきの若い時の話を聞いたところでは、人間嫌いと言ってたのにな。
大伯父の質問に副部長のマイが答える。
「えーと、伊坂先生と話していたのは学校内で、ていうことだったんだけど……もしそういう案とか、野外ではなくて、安全な屋内でみんなで集まれる場所があるんなら、先生に相談したうえで検討してみてもいいかも? レイカちゃん、伊坂っちが体調戻ったら聞いてみる?」
「そう……だね。伊坂先生に聞いてみないとだけど。あ、シュウジ……伯父さんですか。たとえばどんな場所があるんでしょうか?」
マイの質問を受け、レイカが大伯父に聞いた。
「んー、たぶん探したらたくさんあるんだろうけども……今思い当たったのは、この区内にある廃寺とか? 俺が今回、関西から出てきたのも、そのあたりの整理のためにきたからな」
そうだったのか、仕事としてしか聞いてなかったので、具体的には聞いてなかったけど。てか、廃寺??
「廃寺って、いつからかわかんないんですけど、人が入って大丈夫なんですかね……?」
吹奏楽部のダイスケが聞く。うん、僕もそう思う。
「あ、そんなボロボロとかじゃなくて、つい最近までやってたとこだから、中は綺麗だぞたぶん。一度聞いてみるけどな。八月中は少なくともこっちにいるし、せっかく怪談話するんなら、雰囲気出したほうが面白いだろ」
まぁ提案としては悪くないだけに、否定する生徒はいない。レイカが大伯父に答える。
「そうですね。とりあえず次の三回目はまた一週間後なので、それまでに伊坂先生に確認して、またご連絡させてもらってもいいですか? シュウジ伯父さんの仰るように、雰囲気がある場所でのほうが、よりいいのは間違いないですから」
というわけで、そのあとも吹奏楽部の人達や、部長のレイカのステップトークは続いたが、前回と同じく、真夜中までは続かず、22時半頃にお開きになった。
合同納涼祭の帰りのこと。
「ねぇねぇオジサン、オジサンってIT企業の会長って言ってなかったっけ? 他にも不動産売買とかも色々してるの?」
ヒマリが大伯父に聞いた。
「あぁ、不動産売買っていうのとは少し違うんだけど、会社関係の土地やら、テーマパークの開発とか、そのあたりをちょっとな。さっき言ってた廃寺は、色々と荷物を移動させたあとは全部潰して、ショッピングモールになる予定だ」
げ、お寺の跡地のモールなんて罰があたりそうだよな。でも……広い敷地とか、そういうことを考えると、無いことではないのかな。なんとなく現実的な話を聞いた気がした。
「シュウジ伯父さん、ひとつ聞いてもいいですか?」
「ん、ユウタなんだ?」
「さっき話の中で言ってた、色々なことを考えてしまうタイプだとか、人間関係が苦手だとか言っていたのはホントのことですか?」
今の大伯父の様子を見ると信じられなかったからだ。
「なんだ、そんなことか。人間関係が得意なやつなんてそうそういないと思うぞ。もちろん得手不得手はあるにしても、みんな何かしらストレスを抱えながら、人付き合いをしていると俺は思う。まぁさっき言ってたのは俺が若い頃だけどな」
なんというか。思ってたより、変な人じゃないのかな。
その時、大伯父の携帯が鳴った。
「どうした? ん? 一人呑みは寂しい? さっきちょうどガキたちのお守りが終わったとこだから今から行くよ〜ん♪ 夏はキュッと冷酒に限るね〜!」
やっぱ変な人だ。なんとなく電話の相手は予想できてたけど……
「お祖父ちゃんですか?」
「わはは、よくわかったな。というわけで今から行ってくるわ。帰りは遅くなると思うし、帰らないかもだから、待たなくていいからな」
いや、大伯父のことは誰も待たないぞ。
「ユウちゃんのお祖父ちゃんとシュウジ伯父さんって仲いいよね〜、同級生なのかな?」
「いや、確かシュウジ伯父さんのが少し年上だったと思う。もうでもあのくらいの年齢になったら、少し違っても同じでもわからないんじゃない?」
「だよね〜。ユウちゃん、じゃあ私あっちだから。またね〜」
ヒマリと別れた。
来週の合同納涼祭は、もしかしたら場所を変えて開催するかもしれない。
はじめは大伯父の参加を嫌がっていた僕だったが。なんとなく、苦手な感じが薄れていく気がした。
話のあとの雑談で、
次回の八月からの合同納涼祭の場所を、学校以外にしてはどうかと大叔父から提案が出た。
その場所は廃寺。
なんだか、危ない予感がするぞ……




