そういうのを聞くと、ヒマリも女子なんだなって思う
大伯父に遭遇しないように、近くのモールでヒマリと待ち合わせることになった。
◯登場人物
優太
高校二年生 帰宅部
読書、ゲームが趣味
陽真理
高校二年生 怪談倶楽部
ユウタの幼馴染、明るく友達が多い
「ドーナツ買いに行こうよ〜。私チョコのたっぷりかかったやつがいいな〜」
太るからどうとか言ってたのはどこのどいつだ。
「ヒマリ小さい頃からチョコ味のお菓子好きだったよな、そういえば」
周りがチョコでコーティングされたケーキみたいなお菓子があるんだが、それを手も顔もベタベタにしながら食べていたヒマリを思い出す。
「そうだったかな? チョコとコーヒーって合うよね〜。勉強する時もいいんだよ、集中力アップ!」
ホントかよ……まぁそんなことを言いながら、ドーナツを選んで買う。
結局三個買って半分ずつにすることになった。飲み物は僕はホットコーヒーのブラック、ヒマリはアイスコーヒーのブラックにしていた。
「ユウちゃんの変なオジサン、なんでこっち来ることになったの? 仕事の都合とかかな?」
ドーナツにかぶりつきながらヒマリが言う。
「そうそう、仕事でらしいよ。だから滞在期間は未定だってさ。別にあの人が嫌いってわけじゃないんだけどね」
オリンピック周期くらいでしか会うことのない親戚なんて、別に気にすることはないんだが。
「あのオジサンって、なんかグイグイくる感じだよね〜。面白いといえば面白いんだけど。それより次の合同納涼祭、ユウちゃんお話考えた〜?」
僕もドーナツのひとつをかじりながら答える。
「え、まだだけど……そういえばヒマリの話、僕が言ってたやつのまんまだったよな〜。なんか僕がスベったみたいで嫌だったよ」
「えっ! あれってスベってたの? めちゃくちゃシーンと静まってたから、怖すぎてみんな沈黙してるのかと思った」
「いや、あれは完全にスベってただろ。木琴が返り血を浴びた木材で作られたとかいう内容とかよりも、ヒマリの話し方じゃない?」
僕はホットコーヒーを一口飲む。ちょうど適温だった。あまり熱々過ぎるのは飲めないからだ。
「話し方ってなによ〜。私、普通に話してたと思うんだけどな」
「ヒマリはそのつもりだったんだね。なんか怖い話だぞ〜! ていう喋り方だったよ」
ドーナツの残りの一つを半分に割って僕に渡すヒマリ。
「え〜! それめちゃくちゃ恥ずかしいんですけど〜! てか、怪談なんて話したことないし仕方ないでしょ」
僕とヒマリが話していた時だった。
「お〜! 昼間からイチャイチャしてるカップルがいるなと思ったら、ユウタとヒマリじゃないか」
聞きたくない声が聞こえてきた。金髪にサングラス、完全に怪しいオジサンだろう。この身なりで60代後半というんだからな……いや、服装はカジュアルな感じのスラックスにTシャツに薄手のサマージャケットときちんとはしているんだけども。雰囲気がね。
「シュウジおじさん、こんにちは」
僕はなるべく感情を出さないように挨拶する。
「ユウタ、俺のことはアニキと呼べと言っただろ。小遣いやらねぇぞ」
いや、小遣いいらんし。
「母さんが確か迎えにいったと思うんですけど……?」
「おう、さっき会ったぞ。てか、このモールで待ち合わせてたからな。ユウタとヒマリも迎えに来てくれたのか?」
母親に迎えに行く場所を聞いておくべきだった。
「いや、僕らはたまたまです。母さんどこかで待ってるんじゃないんですか?」
「あぁ、すぐ戻るよ。そういえば父親は元気か?」
もう話はいいんだけどな。
「はい、父さんはまぁぼちぼちですかね」
「そうかそうか、それならよかった。んじゃ、また後でな」
大伯父は去っていった。
大伯父が見えなくなってから、ヒマリが口を開く。
「相変わらず、圧が凄いよねあのオジサン……」
確かに、僕もそう思う。
「母さんに待ち合わせ場所聞いてなかったよ、悪かった。ヒマリ、どっか買い物とか見たいものある?」
「ん〜、特にないけど……あ、日焼け止めと服を少し見に行こうかな。付き合ってくれる?」
日焼け止め。そういうのを聞くと、ヒマリも女子なんだなって思う。
「うん、いいよ」
そのあと僕とヒマリはショッピングモールで時間を過ごし、そして一緒に晩ごはんも食べてから、少し遅めに家に帰った。
来週の合同納涼祭に、苦手な大伯父が同伴することになることを知るのは、もう少し後のことだった。
大伯父を避けて来たつもりが、まさかモール内で出くわしてしまう。
そんな大伯父が納涼祭に来る??




