32話「戯言、戯言。(ざれごと、たわごと。)」
黒猫は言う。
神様が言う。
「いずれこうなるのはわかっていた。」
あの空間のでき事を思い出した俺は、急いでいた。
たぶん、
神様には、
それがわかっていた。
俺が焦っている事を、
俺が取り戻そうとしている事を、
「焦るなよ。」
ざわっとゆらいだ笹の音が、焦っている俺を見越して、見兼ねた、神様の言葉で鳴り止んだ。
ちょこんと神社をバックに座る神様。
「阻止なんてしようとしてないし、こんな体じゃできない。」
っと言って黒猫は前足を舐めた。
「…なぜ俺を選んだ?なぜ俺に漫画を渡した?」
知ってはいたが、こいつの本心を知りたい。
俺はこいつの、
俺には見えない本心を、
俺には聞こえない本心が、
知りたかった。
正直、神と言うには、あまりに幼く。
正直、子供と言うには、あまりにませている。
正直、騙していた者の振りまいではなかった。
正直、この世で一番信頼していた。
「退屈だよ。」
黙って俺の気を聞いていたであろう猫は口にする。
その言葉は…
それは…
「それは…」
「俺はこの地球を見てきて思った。退屈で、何をしても、何が起きても、何でも知っている自分の、この「神」の座さえ退屈。全ての起こる事がわかる。そこでお前らのオリジナルキャラだよ。」
退屈凌ぎ…
そんな存在か…
なんとなく理解者だと思っていたんだがな…
猫はそんな俺の気を知って、顔を手で撫でながら、
「まあ、俺は理解なんてされないだろうし…」
っと思春期の中学生男子の様なこと言い出し続ける。
「まあお前には、あいつらは言っていなかったが、奴らとも賭けをしててな。」
「奴って?」
「生乃達って言えばわかるだろ。まぁ…内容聞くか?」
「いや…いい…」
「賭けは俺の勝ちなんだがな…」
沈黙と言うか、何かを…俺を待っているように見える。
「はやく言えよ。」
こいつは知っている。
俺が今からどうするか…
ノーマルで、
予定通りで、
いつも通りで、
言う通りに、
本に手を置こうとする。
「まぁお前は中々面白かったよ。」
っと俺とは反対側を向いて猫に言われる。
何も言い返さず、
何も言い返せず、
生乃達の言う通りにして、
本に手を置く。
…
言葉を言おうと空気を大きく吸い込んだ時の寸刻…
空気とは違うものが頭の中に入ってきたと言うより、滲み出てきたっと思ったら…
フッ…
「負けたよ…」
っと猫が言った。
なんの事かすぐにわかった。
…
そして猫は某カードゲームのパラレルレア位に煌びやかな光を放ち始める。
猫はこちらを向いて
「そうきたかーまぁ完璧負けたよ。」
っと猫は言うと、
そこにパタリと倒れ、光が消えた。
なぜ猫がこんなことになったのか、
なぜ神様がこうなったか…
今の俺は知っていた。
数秒前の俺は知らなかった。
以下回想。
続く




