28話「クロネコ」
デートである。
柄にもなく、浮かれている。
浮かれ度で言えば、
さながら、高校生ではあり得ないレベルである。
多分、今なら誰に絡まれてもハイテンションに対応してしまうであろう。
こんな時に神様もいないし、神様がいれば馬鹿にされている所であろう。
「ねぇ!」
真宵との待ち合わせ場所まで行く途中であった。
とりあえず、前言を撤回といこう。
横を見れば、あのハゲ頭でわかる。
いつぞやの、神社の神主?である。
「なんでしょうか?」
ここは、機械的に対応して、切り抜け早くいかなければ…
「浮かれてるな。」
いきなり見抜かれた…だと…
抜かった…自分がこんなに顔に出るタイプだとは…
「ちょっといい事がありまして。」
…
そこから長かった。
彼の名前は、宮菜 唯一
宮菜は、神社の神主ではなく、誰もいない神社に住みついてるらしい…
身の程知らずと言うか…
神の程知らずだな。
「普通に不法侵入じゃないか!」
普通のツッコミに、
「ははは、違うよ。誰もいなくなったから、神様も寂しいし、寂しかったら人にちょっかい出しに行くだろ。」
屁理屈過ぎる。
「なにしてる人ですか?なにもしてない人ですか?」
「なにもしてない人、なんでもしてる、タダの人だよ。」
言葉遊びか?つまり、ニートで住む場所がないだけだろ?
……
…この人の話をしてたら、浮かれて早く家を出たのに、ギリギリ間に合う位かな?
宮菜をほっといて走った。
真宵との約束の時間に五分前に着いた。
ちなみに、一時間前に間に合う様に家を出たのだが…宮菜め…
冷静になって考えれば、一時間前は早か過ぎたかな…
一回帰って、
もう一回来ても、
お釣りが帰ってくる。正直馬鹿であり待つ姿は、さながら、滑稽である。
駅前は混んでいて、なにがなんやら…
携帯を見ると……!?
着信二十件!?
メールは…三十件…
いつ出会い系に登録した?
まぁ予測はできたが、全て真宵からで…
メールの最後には、地球の最後を感じさせる…
「この地球が、太郎ちゃんを消そうとするなら、この地球を私が消す。」
なにがあった?
時間を間違えたか?
いや…俺は家を出る前、時計を四回は確認した…
このメールと電話…十分前から始まってる…
たった十分程で電話二十件、メール三十件は異常だ…サイレントモードにするんじゃなかった。
いや…
俺が十分程知らずなだけか?
待ち合わせは…ここの本屋のま…え…
いた。
しかし、見る所普通である。
少し小走りで近寄って、
「っよ!」
「よ!」
ふつうだ。
「すまん、メールさっき見たのだが…」
「っえ!?あーあれ?冗談のつもりだったんだけど…」
「そっ…それならいいんだが…」
どう考えても冗談の域を軽々と超えてるのだが…
「どこか行きたい所があるのか?」
まぁデートにアクシデントは付き物。
アクシデントが例外過ぎるが…気にしないでおこう…
真宵は行きたい所があるらしく、着いて行くと、映画館だった。
映画はどっかの有名監督の作った、3D映画「朝バー」
内容はまぁまぁで、映像はすごかった。
しかし、真宵は、どんな性格と聞かれたら…
多重人格なのではないか?
…否めない…と言うか…
違いない。
それで全ての言動に合点がいく。
ツンデレやら、ヤンデレやら、…不特定多数の性格と言うか、キャラだな…
扱いにくいと言うか…
しかし、俺は決めた。
真宵を背負う事を、
真宵を幸せにする事を、
真宵の闇を、
それが、俺の勝手なエゴでも、
俺の勝手なありがた迷惑でも、お節介でも、責任だ。
でも考えてみれば、正直、俺の記憶がなくなってからの、出来事は、
奇想天外、
摩訶不思議、
意味がわからない。
映画は終盤、主人公とヒロインがキスの場面。
途切れる。
俺は吸い込まれる気分になり、
目の前が、回転した。
これが3D映画か、すごいな!
っと思ったが違った。
それは、記憶の欠落。
しかし、今は今ではない、ではなく、
詳しく、言うと映画は過去、四週間程前になる。
そして、今の俺が、記憶操作をしたのだ。
記憶操作をして来たのだ、
いや、自分ではないオリジナルキャラが、
今、いるのは、あの神社。
例の宮菜のいる、神社だ。
目の前には、
黒い猫。
黒猫、
俺はこいつの名前を知っている。
今俺が…
今まで俺が何をして来たか知っている。
そして俺は口を開く、
エピローグも、
プロローグもない、この物語の…
エンドロールを目指して…
エンドロールを目指して!!!
……
…
「久しぶりだな。神様。」
以下回想。
続く




