表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を揺るがす最凶獣、ただいま「待て」の最中です  作者: ペクチン21字


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

【第1話】最高に可愛い相棒(※ただし種族は黒柴?)

「……う、ん……」

心地よい風が、俺の頬を優しく撫でた。

ゆっくりと目を開けると、視界に飛び込んできたのは、見たこともないほど鮮やかで、どこまでも続く緑の絨毯だった。ここが神様から貰った俺だけの領地、人類未踏のフロンティアだ。

さっそく、神様から貰った『万能創造』のスキルを試してみることにした。

頭の中で「頑丈で過ごしやすいログハウス」と「トマトやナスを植えるための小さな家庭菜園の畑」をイメージし、体内に感じる不思議なエネルギー――魔力を練り上げる。

「――構築」

ポスン、という小気味よい音と共に、草原の真ん中に立派な2階建てのログハウスと、ふかふかに耕された黒土の畑が出現した。

「うん、趣味の拠点としては完璧なスタートダッシュだな。さっそく何か種でも植えるか」

「きゅ〜〜〜ん……」

感心していると、足元から、鼓膜がとろけそうなほど愛らしい、か細い鳴き声が聞こえた。

ビクッとして視線を落とす。そこには、俺の靴のすぐそばで、ちょこんと座り込んでいる小さな生き物がいた。

「……ッ!!」

プロのドッグトレーナーとして、数千匹の犬を見てきた俺の心臓が、一瞬で鷲掴みにされた。

毛並みは夜の闇をそのまま切り取ったかのような、艶やかな漆黒。眉の上には麻呂まゆのような可愛い茶色の斑点がある。大きさは両手にすっぽりと収まる、生後数週間といったところの超小型サイズ。

どう見ても、前世で大好きだった「黒柴の子犬」そのものだった。

「可愛い……なんだこの生き物、破壊的な可愛さだぞ……!?」

「おいで」

俺がしゃがんで両手を差し出すと、子犬はキャンキャンと嬉しそうな声を上げながら、短い足を一生懸命に動かして俺の胸に飛び込んできた。ペロペロと小さな舌で俺の顎や頬を舐め回す。

「よしよし、お前が俺の最初の相棒だな。これからよろしく。まずは、お前の体調に問題がないか確認させてくれよな」

職業病というやつで、俺は神様から貰ったもう一つのスキル『上位鑑定』を、何気なくその子犬に対して発動した。

ピロン、という軽いシステム音と共に、俺の視界に半透明のステータスウィンドウが展開される。

【ステータス詳細】

・名前:未設定(主人:犬飼 陣)

・種族:黒柴(?)

・年齢:0歳(生後3日)

・状態:極めて良好(※真の種族:魔王/成長速度:極めて緩やか)

【保有能力・スキル】

・魔王の覇気パッシブ:周囲の生物を威圧し、絶対の恐怖を与える。

・終焉の劫火:全てを灰に帰す黒き炎を放つ。

・空間断裂:対象の空間そのものを切り裂く。

「…………は?」

固まった。俺の脳細胞が一斉にストライキを起こした。

何度も目をこすり、表示されている文字を読み直す。

真の種族:魔王。

「神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!?????」

俺の絶叫が、静かな草原に木霊した。

黒柴(?)って書いてあるけど、カッコの中身が世界を滅ぼすラスボスってどういうことだよ! 神界の倉庫の管理体制どうなってんだ!?

「きゅん? ワンッ!」

俺がパニックを起こしているのを見て、黒柴(?)は不思議そうに小首を傾げ、俺の手のひらに自分の小さな頭をすり寄せてきた。「どうしたの?」とでも言いたげな、純粋無垢な瞳だ。

「……いや、落ち着け、俺。焦るな」

深呼吸を繰り返し、冷えそうになる頭で必死に考える。

仮にこいつが本当に魔王の卵だとしても、今は生後3日の赤ん坊だ。善悪の判断もなければ、世界の破壊なんて大それた思想を持っているはずもない。

前世でもそうだった。一歩間違えれば凶暴になり得る犬種だって、飼い主の正しい愛情としつけがあれば、世界一優しくて従順なパートナーになる。要するに、これからの俺の「育て方としつけ」次第なのだ。

「よし……決めた。お前が魔王だろうが何だろうが、俺と一緒に暮らすからには、俺の可愛い愛犬だ。畑仕事も一緒に手伝ってくれよな」

俺は覚悟を決め、その小さな身体をもう一度優しく抱きしめた。

「お前の名前は『ノア』だ。新しい始まり、って意味を込めてな。よろしくな、ノア」

「きゅ〜〜んっ!」

ノアは嬉そうに短く鳴くと、俺の腕の中で満足そうに目を細めた。こうして、元ドッグトレーナーの俺と、見た目は黒柴な魔王ノアの、のんびりとした異世界家庭菜園生活が始まったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ