初めての野営と大人の心構え
隣町へと続く街道を順調に進み、太陽が西の山並みに沈みかける頃。一行は街道沿いの見晴らしの良い開けた場所で、1泊目の野営の準備を始めた。
幸い、ここまでは魔物の襲撃もなく、道中はいたって平和そのものだった。
夕食は、ベテラン冒険者たちが手際よく火を起こし、干し肉と乾燥野菜を煮込んだ温かいスープを作ってくれた。みんなで焚き火を囲み、フーフーとスープをすすりながら、交代での夜間の見張りシフトを決めていく。
【ちょっとだけエッチな(?)焚き火の夜】
パチパチと爆ぜる焚き火のオレンジ色の光が、ひよりの新しいお店用制服を怪しげに照らし出す。
胸元から腰へと垂れるふわっとした二重構造の布が、夜風に揺れるたび、その奥にある完璧にホールドされた大迫力のバストの輪郭と、キュッと引き締まった細いウエストの高低差が、昼間よりもいっそう艶めかしく浮かび上がっていた。
「ひよりさん、スープ、おかわりありますからね……っ」
隣に座るスコットは、焚き火の光でいつも以上に大人っぽく、そして少しエッチな魅力を放つひよりの姿に、心臓がバクバクと言いっぱなしで、お椀を持つ手がわずかに震えている。ベテランの男性陣も、極力見ないようにしつつも、時折チラチラと視線を奪われてはドギマギしていた。
もちろん、中身が10歳のひよりはそんな視線には全く気づかず、
「わぁい、おかわりー!」
と無邪気に喜んでいる。
当然、実際の野営中にそれ以上のエッチなことが起きるはずもない。なぜなら、ここはいつ魔物が飛び出してくるか分からない、危険な街の外なのだから。ベテランたちもその辺りは完全にプロフェッショナルで、お酒も一切口にせず、張り詰めた空気の中で周囲の暗闇に目を光らせていた。
【テントの中での「大人の防犯レッスン」】
夕食が終わり、見張りの交代時間を残して、ひよりはパーティーの神官(僧侶)の女性と一緒に、女性用のテントへと入った。
フカフカの毛布にくるまりながら、ひよりは神官の女性と並んで横になる。
「ひよりちゃん、初めての野営で緊張してる?」
神官の女性が、ランタンの小さな灯りの中で優しく微笑みかけてくれた。
「うん……なんだか、お外で寝るのって、お星様がいっぱいでワクワクするけど、ちょっとだけドキドキするね」
ひよりが毛布を顎まで引き上げて答えると、神官の女性は少し真面目な顔になって、冒険者としての、そして「女性としての心構え」を静かに教えてくれた。
「いい? ひよりちゃん。野営の夜はね、絶対に深い眠りに落ちちゃダメ。何か物音がしたら、すぐに跳ね起きて動けるように、常に意識の片隅を尖らせて『浅い眠り』を保つのが鉄則よ。もちろん、いつ襲われるか分からないから、野営中にふざけたり、エッチなことをしたりするのも絶対に厳禁。危ないからね」
「うん、おっちゃん(ゴルド)も油断するなって言ってた!」
「そう。それにね、明日は隣町に着けば、綺麗な民宿(宿屋)に泊まれるわ。そこならフカフカのベッドで鍵をかけてぐっすり眠れる。……でもね、女の子は街の宿屋でも気をつけなきゃダメよ」
神官の女性は、自分の枕元にそっと置いてある護身用のメイス(戦槌)を指差した。
「民宿の部屋に入って、しっかりドアに鍵をかけたとしても、それで安心しきっちゃダメ。鍵をかけても、武器は必ず手元――すぐ手の届くところに置いて寝るの。もし万が一、悪い人や魔物が鍵を壊して入ってきたら、迷わず一撃で攻撃できるようにね。自分の身を守れるのは、最後は自分だけなんだから」
「……鍵をかけても、武器を手元に置いて、すぐ攻撃、だね……!」
中身が10歳のひよりは、そのリアルな「大人の防犯対策」を、ゴクリと唾を飲み込みながら真剣に頭に刻み込んだ。
脳内では、キュアがいつもより引き締まった男の子口調でうなずいていた。
(シャランさんの魔道具店とは違って、旅先の夜は本当に何が起こるか分からないからね。神官さんのお姉さんの言う通りだ。ひより、ボクも一晩中しっかり周りを警戒しておくからね)
(うん、キュア、ありがとう……!)
ひよりは、ゴルドから借りてきた訓練用の短剣を、毛布の中でぎゅっと胸元に抱きかかえるようにして持った。
初めて経験する、街の外の冷たい夜の空気。
周囲を警戒する緊張感と、神官の女性の教えを守るために、ひよりの意識は心地よい「浅い眠り」の波の中にあった。何かあればいつでも飛び起きる準備をしながら、上品なお洋服に包まれた体を丸め、ひよりは静かに、隣町へと続く最初の夜を過ごすのだった。




