リメイク服②
サーシャが「作り直してくる!」と嵐のように去ってから、それほど時間は経っていなかった。
魔道具店の調合用ハーブの香りが漂う中、ひよりがシャランとお茶を飲みながらのんびり待っていると、再びチリンチリンと激しくドアベルが鳴り響いた。
「ハァ、ハァ……っ! ひよりさん、待たせちゃってごめんなさい! 今度こそ、今度こそ完璧な『隠蔽ドレス』が完成したよーっ!」
サーシャが今度は本当に髪を振り乱し、額に汗を浮かべながら戻ってきた。その手には、先ほどよりも少しボリュームの増した新しいお洋服の包みが握られている。
「わあ、おかえりなさいサーシャちゃん! すっごく早かったね!」
「フフン、職人の意地よ! さあ、今すぐ奥の部屋で着替えてみて!」
ひよりは手渡されたお洋服を持って、再びウキウキとした足取りで奥の空き部屋へと向かった。
しばらくして、トビラが静かに開く。
パタパタと小走りで出てきたひよりの姿を見て、サーシャとシャランは思わず
「おお……!」
と声を漏らした。
「どうかな……? 今度はね、なんだかひらひらしてて、とっても可愛いお洋服だよ!」
鏡の前に立ったひよりの新しい『魔道具店用制服』は、まさにサーシャの天才的な閃きと技術が凝縮された素晴らしい二重構造になっていた。
内側のベースは、先ほどの抜群のホールド力を誇るタイトな衣装のままだ。どれだけ動いても、走っても、ひよりの大きな胸が激しく跳ねるのを防いでくれる安定感は1ミリも損なわれていない。
しかし、問題だった「形がくっきり出すぎてエッチに見える」という点が見事に解決されていた。
なんと胸元の位置から、上品で少し透け感のあるふわっとしたドレープ状の布が追加され、ひよりの大きな胸全体を優しく包み込むように覆い隠していたのだ。
そのふわっとした布は、胸の丸みに沿って生々しいラインを出すのを防ぎつつ、そのまま滑らかな曲線を描いて腰のあたりまで優雅に垂れ下がる二重構造になっていた。
歩いたり動いたりするたびに、その重なった布地が軽やかに揺れ、圧倒的なボリュームの段差をふんわりとカモフラージュしてくれる。
これなら、引き締まった細いウエストと爆乳のギャップが露骨に強調されることもない。どこか高貴な魔法使いのローブや、お姫様のドレスのような上品さと華やかさがプラスされ、完璧にお店に馴染むデザインに仕上がっていた。
中身が10歳のひよりは、裾を両手で少し持ち上げながら、鏡の前で嬉しそうにくるくると回った。
「すごーい! 動くたびにひらひらして、アニメの聖女様みたい! 胸のところも苦しくないのに、すっごくお洒落だよ!」
サーシャはそんなひよりを見て、満足そうにふんふんと鼻を鳴らし、腰に手を当てて胸を張った。
「どうよシャランさん! これなら胸の形が直接男たちの目に飛び込んでいくこともないわ!
ボリューム自体は隠しきれないけど、ラインをふんわりぼかしたから、これならエッチじゃなくて『上品で可愛いお姉さん』に見えるはず!」
シャランもカウンター越しに身を乗り出し、顎に手を当てて感心したようにうなずいた。
「ええ、本当に素晴らしいわ、サーシャ。あの過激だった服が、ここまで気品のあるデザインに化けるなんてね。これならお店の品格も上がるし、男のお客さんたちも(多少はそわそわするでしょうけど)ちゃんと正気でお買い物ができるはずよ」
「やったぁ! ちゃんとお買い物できるの、一番だもんね!」
ひよりはニコニコと無邪気に笑い、サーシャの手を取って「素敵な服をありがとう!」とぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
そんな二人を視界に入れながら、脳内ではキュアが、ようやくホッとしたような長い長い吐息をついていた。
(ふぅううう……。よかった、本当によかったよ……! たしかに、歩くたびにそのふわっとした布が揺れて、逆に『中には物凄いものが隠されているんじゃ……』っていう男の妄想を掻き立てる気がしなくもないけれど……! でも、さっきの皮膚に張り付くようなパツパツ状態に比べたら、健全さは100倍マシさ! サーシャちゃん、本当にグッジョブだよ……!)
純情な精神であるキュアの心臓も、これでようやくバクバク言わずに済みそうだ。
「よし! 服も完成したことだし、明日からの魔道具店のお手伝い、張り切っていきましょ!」
「はーい! わたし、がんばるね!」
新しい完璧な制服を身にまとい、ひよりは明日からの異世界でのお仕事に、胸を(ふんわりと隠しながら)大きく膨らませて期待に目を輝かせるのだった。




