的屋のハラハ
「ひゃぅっ……ご、ごめんなさい! 呼び鈴がなくて、つい……!」
ひよりは慌ててペコペコと頭を下げた。トタンの扉の奥から現れたのは、鋭い目付きに無精髭を蓄えた、いかにも一筋縄ではいかなそうな男だった。
男はひよりのタイトな魔法使い服を一瞥すると、ふっと表情を和らげた。
「……いや、いいさ。トタンだから響くだけだ。俺はハラハ。この辺りで的屋の仕切りをやってる。あんたは?」
「あ、わたしはひよりです! 冒険者ギルドから、お祭りの依頼を受けて来ました!」
ひよりが元気よくギルドの依頼書を差し出すと、ハラハはそれを見て一瞬で満面の笑みを浮かべた。
「おおっ! ギルドからの助っ人か! 待ってたぜ。まあ、立ち話もなんだ、中に入りな」
ハラハは親切に扉を大きく開けてひよりを迎え入れた。その際、鍵を閉めたりガタガタと施錠したりする様子はなく、扉はただポンと閉じられただけだった。
中に入ると、そこは部屋と倉庫が合体したような広い空間になっていた。中央にはお祭りで使う立派な的屋の屋台がドスンと鎮座しており、その周囲には色鮮やかな景品や、大小様々なマトが山積みにされている。
「わぁぁ……っ! すごい、お祭りがいっぱいある!」
ひよりは一瞬で目を輝かせ、吸い寄せられるように景品の山へと駆け寄った。
子供の心が大興奮するようなキラキラしたメッキの玩具から、大人が欲しがるような細工の細かい高そうなオイルライターまで、まさに魅惑の宝の山だ。
ハラハはその隙に、部屋の隅から簡易的な折りたたみテーブルとパイプ椅子を二客引っ張り出してきた。景品に夢中になっているひよりの背中に声をかける。
「おいおい、お嬢ちゃん。景品は逃げやしねえよ。まずは打ち合わせをするぞ、こっちに座りな」
「あっ、は、はいっ! すみません!」
ひよりは慌ててハラハの出した椅子へと向かい、勢いよく腰掛けようとした。だが、その拍子に思い切り前屈みになってしまい、襟ぐりの広い服の隙間から、その発育抜群の豊かな胸元がばっちりとハラハの目の前に晒されてしまった。
「あ……っ!」
ひよりはハッとして、すぐに両手で胸元をギュッと押さえたが、時すでに遅し。ハラハの目には、その白くて眩しい谷間がしっかりと焼き付けられた後だった。
「……コホン。じゃ、じゃあ説明するぞ」
ハラハは一瞬ドギマギして顔を赤くしたが、すぐにプロの顔に戻り、丁寧な口調で依頼内容を話し始めた。
「今回の仕事は、【お祭り用の『的当てゲーム』のマト戻し&デモンストレーション】だ。やることはシンプルさ」
ハラハは手元の資料を指差しながら説明を続ける。
「初めは、客が来たらまずお前がデモンストレーションをやる。簡単なマトを『ストーンバレット』でパコンと撃って倒すんだ。それを見て『おっ、楽しそうだな』と客が集まってきたら本番スタートさ。
客が魔法やボールでマトを倒したら、お前は屋台の裏側に回って、倒れたマトを裏からストーンバレットでパコンと撃って元に戻す。これの繰り返しだ」
「なるほどぉ……。裏から撃って直すんだね!」
「そうだ。ちなみに景品が高価なものになればなるほど、マトは小さく、当てづらくなる。……で、ここからが肝心なんだが、客の入り具合によっては、基本報酬にプラスして歩合も出してやる。たくさん客を集めれば、お前もそれだけ大儲けできるってわけだ」
「えっ! ほんと!? がんばる!」
お金がたくさん貰えればサーシャに服の代金をたくさん払えるとあって、ひよりは身を乗り出した。
ハラハはニヤリと笑う。
「おう、その意気だ。じゃあ、客を大量に集めるために、手っ取り早い方法を教えてやる。……衣装を派手にするんだよ」
そう言うと、ハラハは部屋の隅にある大きな衣装棚へと歩いていき、その奥から一着の衣装をガサゴソと引っ張り出してきた。
「お祭りの特別仕様だ。お前のその素晴らしい体型なら、絶対に似合うと思ってな」
バッと広げられたのは、フリルとリボンがふんだんにあしらわれた、目が覚めるほど鮮やかで派手なお祭り用ドレスだった。それはまるで、ひよりの世界のアニメに出てくる魔法少女そのもののデザインだった。
ひよりは身を乗り出して、興奮のあまりプルンプルンと胸を揺らしながらドレスに見入った。10歳のひよりにとって、それはずっと憧れ続けた無敵のヒロインの象徴そのものだった。
「わぁぁぁ……っ! これ、キュアアップみたい……!!」
ひよりの目が、今日一番の輝きを放った。大好きなアニメのヒロイン「キュアアップ」にそっくりの衣装を前に、10歳の心が完全に抑えきれなくなっている。
しかし、そのドレスの「構造」を上から下まで凝視した頭の中のキュアは、すぐさまその異常なまでのエロさに気づき、背筋に冷たいものを感じて叫んだ。
『ひ、ひより! 騙されちゃダメだ、この服、デザインこそ魔法少女だけど……作りのエロさが尋常じゃないよ!!』
そう、このハラハ特製のドレスは、大人の女性が着ることを前提に、限界まで男の性癖を詰め込んで作られた「超絶セクシーな変態コスチューム」だったのだ。
まず、ドレスの上半分――上半身を包むビスチェ部分は、信じられないほど丈が短く、かつ生地が極薄だった。ひよりの発育抜群なワガママボディが型に収まるよう、胸の膨らみを下からこれでもかと押し上げて強調する「コルセット構造」になっている。
しかも、胸元はみぞおちの近くまで大胆なV字型に深く切り裂かれており、布地が左右に大きく引っ張られるため、豊満なバストの大部分が完全に剥き出しになってしまう設計だった。
さらに、腰から下を彩るピンクのフリルスカートは短く、ほんの少し前屈みになったり風が吹いたりしただけで、お尻の丸みが完全に丸見えになってしまうほどの超ミニ丈。おまけに、脇腹から腰のラインにかけては目の粗いレースのシースルー素材が使われており、汗ばんだ滑らかな素肌が透けて見える仕様になっていた。
『これは魔法少女の格好をした、ただの高級なエロ衣装だよ! 少女向けのアニメはこんなに胸元を爆発させてないし、お尻が見えそうなミニスカートなんて穿いてないってば!』
キュアは脳内で必死に制止の声をあげる。
「え~? でもリボンもついてるし、フリフリで可愛いよ? わたし、絶対にこれ着るもん!」
シャリンの「胸元が大きく開いたタイトな服」を見慣れてしまっているひよりにとって、この破格の露出度に対する恥じらいのハードルは、すでに崩壊していた。
見せるためのステージ衣装なのだから、堂々と肌を見せるのは当たり前――10歳の純粋すぎるロジックで、ひよりはそう結論づけてしまったのだ。
「着てみたい! 絶対に着てみたい! わたし、本当はキュアアップに変身するのが夢だったんだもん!」
ひよりはキュアの心配などどこ吹く風で、めちゃくちゃ乗り気になって椅子から立ち上がった。
「よし、じゃあ棚の脇に目隠しの着替えブースがあるから、そこで着替えてきな」
ハラハに促され、ひよりは嬉しそうにドレスを抱きしめて、衣装棚の脇にある着替えブースへと飛び込んだ。
カサカサ、シルクが擦れ合う淫らな音が狭いブース内に響く。ひよりが自分の服を脱ぎ去り、ハラハの最高傑作にそのわがままな肉体を押し込んでいく。
「う……ん、ちょっとここ、胸がキツいなぁ……よいしょ……」
贅沢な肉付きのバストが、容赦なくコルセットによって下からグイグイと強烈に押し上げられていく。むっちりとした柔らかい肉が中央へと凝縮され、尋常ではない深さと肉感を誇る、眩しいほどの谷間が形成されていく。
ブースの中に置かれた大きな姿見(鏡)の前で、
「すごい……! 本当にキュアアップみたい!」
ひよりは鏡に映る自分を見て、ぴょんぴょんと跳ねて大喜びした。プルンプルンと胸が揺れまくる。
だが、頭の中のキュアは、鏡に映ったその姿を見て完全に絶句し、震える声で突っ込みを入れた。
『ひ、ひより……! それ、やっぱり、大人が着ると……ちょっと、その……ひよりの胸が……っ!!』
キュアの言う通り、ひよりの発育抜群な胸が、これでもかと目立ちまくっていた。
ドレスの上半分は信じられないほど大胆に露出しており、深く開いた胸元からは、豊かなバストの膨らみと、深い谷間が完全に剥き出しになっている。
おまけにミニスカートからは、すらりと伸びた健康的な太ももが眩しいほどに露出していた。
しかし、シャリンの胸元が開いた服をすっかり見慣れてしまっているひよりは、この破格の露出に対しても全く動じなかった。
「え~? キュアアップもこれくらい堂々と見せてるよ? 見せるための服なんだから、恥ずかしがっちゃいけないんだよ!」
『あれは子供のキャラクターだから問題ないのであって、今のひよりのワガママボディでそれをやったら、問題しか発生しないよ!!』
キュアは脳内で頭を抱えて大騒ぎしたが、ひよりは「絶対にこれがいい!」と一歩も引かず、どうしてもこれが着たいと押し切ってしまった。
そのままブースのカーテンをシャッと開けて、ひよりが外へ飛び出す。
「ハラハさん、お待たせ! 着替えられたよ!」
その姿を見たハラハは文字通り息を呑み、手に持っていた打ち合わせの資料を床にポロリと落とした。
そこに立っていたのは、10歳の無邪気な笑顔を浮かべた、地上で最も淫らな「自称・魔法少女」だった。
弾けんばかりに実った豊かな双丘は、ピンクの薄い布地を限界まで押し広げ、今にも零れ落ちそうなほどドカンと主張している。動くたびに、その重みのある肉塊が上下左右にフルンフルンと激しく波打ち、中央の深い渓谷にはうっすらと汗の雫が光っていた。
コルセットによって限界まで引き締められた細いお腹とは対照的に、超ミニスカートの裾からは、むっちりとした肉感的な太ももと、安産型を思わせる大きなヒップのラインが、一歩歩くごとに露骨に強調されている。
『あ、頭が痛くなってきた……。ひより、それ、大人のプロポーションが完全に服を破壊してるよ……。後ろから見たらお尻が見えそうだし、前を見たら胸しか目に入らないよ!!』
キュアが脳内で涙目で絶叫する。
しかし、ひよりは姿見の鏡の前でくるくると回り、プルンプルンと全身の肉を震わせながら、満面の笑みを浮かべていた。
「すごーい! 本当にキュアアップみたい! わたし、お祭りでがんばって、いっぱいマトをパコンって倒しちゃうんだから!」
大人のエロティシズムの極みのような格好をしながら、中身は完全にピュアな子供のまま。
その常軌を逸したアンバランスなエロさに、職人であるハラハも、ゴクリと大きな唾を飲み込んで、ただただ圧倒されるばかりだった。




