第87話『運命の一撃』
アストラヴェルの黄金の瞳が細くなる。
巨大な翼がわずかに広がる。
気配がさらに濃くなる。
次の瞬間――
巨体が消えた。
ドォン!!
爆発のような踏み込み。
爪が振り下ろされる。
タクミは横へ動こうとする。
――ゾワッ。
(横はダメ)
後ろ。
――ゾワッ。
(後ろもダメ)
前。
悪寒なし。
タクミは踏み込む。
爪が背後を砕いた。
だが、その瞬間。
尾が迫る。
横薙ぎ。
タクミは屈もうとする。
――ゾワッ。
(屈むのはダメ)
跳ぶ。
――ゾワッ。
(それもダメ)
タクミは前へ滑り込んだ。
尾の内側。
完全な死角。
だが――
アストラヴェルは止まらない。
翼。
叩きつけ。
ドォォォン!!
タクミは横へ転がる。
岩が砕ける。
砂煙。
(……速い)
歯を食いしばる。
アンラッキーアラート。
外れは分かる。
だが――
攻撃の機会がない。
猛攻が止まらない。
爪。
尾。
噛みつき。
翼。
すべてが繋がる。
避ける。
避ける。
避ける。
それだけで限界。
攻められない。
攻撃しようとした瞬間。
――ゾワッ。
(今じゃない)
(これも違う)
(全部ダメだ)
当たりが来ない。
体力が削られる。
(……このままじゃ)
終わる。
その瞬間。
アストラヴェルが踏み込んだ。
突進。
巨大な顎。
タクミは横へ動こうとする。
――ゾワッ。
(横はダメ)
後ろ。
――ゾワッ。
(後ろもダメ)
盾。
――ゾワッ。
(それもダメ)
前。
悪寒なし。
タクミは踏み込んだ。
顎の内側。
そして――
剣を振り上げる。
だが。
――ゾワッ。
(まだダメ)
止める。
斬らない。
代わりに。
跳ぶ。
顎を踏む。
さらに跳ぶ。
肩へ。
黄金の瞳が見開かれる。
タクミは体をひねる。
シルヴァリオンを握り直す。
その瞬間――
走る感覚。
今までとは違う。
拒絶ではない。
それ以外が“すべて外れ”。
(……ここだ)
タクミの目が見開かれる。
「はああああああッ!!」
振り下ろす。
全力。
魔力もすべてを乗せた一撃。
ザァァァンッ!!
刃が胸を裂く。
鱗を砕く。
肉を断つ。
――止まる。
「……!」
深い。
だが、届かない。
心臓まで、あとわずか。
黄金の瞳がタクミを捉える。
そして。
巨大な爪が振り上がる。
反撃。
至近距離。
回避は――間に合わない。
(……やば)
その瞬間。
【ラッキーストライクが発動しました】
シルヴァリオンが、わずかに沈んだ。
ほんの数ミリ。
だが――
それで十分。
刃が滑る。
鱗の隙間。
骨の隙間。
そして。
心臓へ。
ザンッ。
深い音。
アストラヴェルの動きが止まる。
爪が空中で静止した。
黄金の瞳が、わずかに揺れる。
『……なるほど』
低い声。
『それが』
『お前の運か』
タクミは剣を引き抜く。
巨体が揺れる。
ドン。
ドン。
二歩。
そして――
崩れる。
ドォォォォォン!!
天裂の断崖が震えた。
静寂。
風が吹く。
タクミはその場に立っている。
息が荒い。
腕が震える。
それでも。
剣は、まだ握られている。
目の前には。
動かなくなった巨体。
空の王、エンシェントドラゴン、アストラヴェル。
タクミはゆっくり息を吐いた。
そして、呟く。
「……勝った」
長い戦いが。
今、終わった。
読んでいただきありがとうございます。
初投稿ですので、ブックマークや評価をいただけると励みになります。
毎日更新予定です。
時間は不定期とさせていただきます。




