表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOOD LUCK  作者: risiyakaea


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/92

第75話『ギルドマスター』

夜。


セントラルの街は、まだ落ち着きを取り戻していなかった。


昼間の出来事が大きすぎたのだ。


空に現れたドラゴン。


そして、そのドラゴンと会話した一人の冒険者。


街の酒場や通りでは、今もその話題で持ちきりだった。


その頃。


冒険者ギルドの奥。


バーグの部屋の扉が静かに閉まった。


「座れ」


短い言葉。


タクミは軽く頷き、椅子に腰掛けた。


バーグは机の向こうに立ったまま、腕を組んでいる。


しばらく沈黙が続いた。


やがてバーグが口を開く。


「……正直に言う」


タクミを見る。


「お前がここまでになるとは正直思ってなかった」


タクミは苦笑する。


「俺もです」


バーグが鼻で笑う。


「だろうな」


わずかに空気が緩む。


バーグは窓の外に視線を向けた。


「ギルドマスターってのはな」


ぽつりと呟く。


「止める仕事なんだ」


タクミが顔を上げる。


バーグは続けた。


「無茶するやつを止める」


「死にに行くような依頼を止める」


「調子に乗ってる馬鹿を止める」


一拍置く。


そして。


「……だが」


ゆっくりとタクミを見る。


「今回は止められん」


その一言は、はっきりしていた。


タクミは何も言わずに聞いている。


バーグは言う。


「お前はもう、そこまで来た」


指を三本立てる。


「三つの王の記憶」


「その時点で普通じゃない」


少しだけ笑う。


「そこにドラゴンまで出てきた」


「もう俺の管轄じゃねぇ」


タクミは小さく笑う。


「そうですか」


バーグは机に手をついた。


「だがな」


声が低くなる。


「一つだけ言わせろ」


タクミは自然と背筋を伸ばしていた。


バーグは真っ直ぐ言う。


「死ぬな」


短い。


だが、重い。


「冒険者ってのはな」


バーグの声が続く。


「死ぬやつが多い」


「強いやつも」


「弱いやつも」


「関係なくな」


一瞬、言葉が途切れる。


「だから」


「帰ってこい」


タクミは目を伏せる。


そして頷いた。


「……はい」


バーグは腕を組み直す。


「それと、もう一つだ」


タクミを見る。


「お前が何を選ぶかは知らん」


「世界の真理とかいう話もな」


少しだけ眉をひそめる。


「正直、俺にはよく分からん」


「だが」


静かに言う。


「お前が何を選んでも」


「ギルドは関係ない」


タクミがわずかに目を見開く。


バーグは続ける。


「お前はもう」


「ただの冒険者じゃない」


「お前個人の問題だ」


そして。


ほんの少しだけ口元を緩めた。


「……だがな」


「帰ってきたら」


「一杯ぐらいは奢ってやる」


タクミも笑う。


「それは楽しみですね」


バーグが鼻で笑う。


「生きて帰ってきたらな」


沈黙が落ちる。


重くはない。


だが、軽くもない。


やがてバーグが言った。


「ヴォルドが外で待ってるだろう」


タクミが立ち上がる。


「そうですか」


扉へ向かう。


その背中に、声がかかる。


「タクミ」


振り返る。


バーグは少しだけ真面目な顔をしていた。


「……お前は」


「いい冒険者だ」


短い言葉。


だが、確かな重みがあった。


タクミは一瞬だけ驚き。


それから、少しだけ照れたように笑った。


「ありがとうございます」


扉を開ける。


ギルドはいつもと変わらず賑わっていた。


外に出ると、そこには腕を組んだ大男が立っていた。


ヴォルドだ。


「やっと終わったか」


タクミを見る。


「次は俺だ」


その表情は、いつもの豪快な職人の顔。


だが、その目は少しだけ違っていた。


タクミは軽く頷く。


「お願いします」


ドラゴンとの戦いまで。


残された時間は、もう多くはなかった。

読んでいただきありがとうございます。

初投稿ですので、ブックマークや評価をいただけると励みになります。


毎日更新予定です。

時間は不定期とさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ