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GOOD LUCK  作者: risiyakaea


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第73話『空の王』

本日2話目の更新です

ギルドの外に出た瞬間。


空気が違っていた。


人々が通りに溢れている。


全員が、空を見ていた。


「なんだあれ……!」


「ドラゴンだ……!」


「本物か!?」


「街が襲われるぞ!!」


悲鳴とざわめきが混ざり合う。


リナが空を見上げて息を呑む。


「……嘘」


タクミも視線を上げた。


そこにいた。


セントラルの上空。


巨大な翼を広げ、悠然と空を支配する存在。


黒に近い鱗。

長い尾。

空を切り裂くような翼。


誰が見ても。


ドラゴンだった。


その巨体が、ゆっくりと街の上を旋回する。


人々が慌てて逃げ出す。


「逃げろ!!」


「建物の中だ!!」


冒険者たちは反射的に武器を抜いていた。


剣。

槍。

弓。


だが、誰も踏み出せない。


圧倒的な存在感。


その時。


「おい!!」


後ろから聞き慣れた声。


振り返ると、ヴォルドが人混みをかき分けて走ってきていた。


「なんだこの騒ぎは!?」


リナが空を指差す。


「ヴォルドさん!」


「上!」


ヴォルドが顔を上げる。


「……おいおい」


その表情が固まる。


さらにその近くには、あの新人冒険者の二人もいた。


「タクミさん……」


「ドラゴンですよ……!」


誰もが身構えている。


街の空気が張り詰める。


その瞬間だった。


ドラゴンが羽ばたいた。


ゴォォォッ!!


強烈な風が街を吹き抜ける。


そして。


低く、重い声が空から響いた。


『王の記憶を集めた者は誰だ』


声は雷のようだった。


街全体に響き渡る。


人々がざわめく。


「しゃ、しゃべった……」


「ドラゴンって喋るのか……!?」


「なんなんだよあれ……!」


沈黙が広がる。


その中で。


タクミは一歩前に出た。


「……俺だ」


その声は静かだった。


だが確かに響いた。


ドラゴンの黄金の瞳が、ゆっくりとタクミを捉える。


リナが小さく呟く。


「タクミ……」


タクミは空を見上げる。


「森」


「山」


「海」


「三つの王の記憶を持ってる」


そして言った。


「あのSランク…ドラゴンと喋ってるぞ…」


周囲の冒険者たちが息を呑む。


ドラゴンの声が再び響いた。


『人よ』


『問おう』


『世界の真理に触れたいか』


タクミは少しだけ考えた。


だが答えは決まっている。


「ああ」


その時。


ドラゴンの目がわずかに細くなる。


『それが』


『世界の支えを失うことになってもか』


タクミの眉がわずかに動いた。


想定していなかった問いだった。


一瞬、言葉が詰まる。


ドラゴンが続ける。


『世界の真理に触れるとは』


『どういうことか考えたことはあるか』


タクミは正直に答える。


「……ない」


静寂。


そしてドラゴンは言った。


『王と呼ばれる我らは』


『世界を支える存在』


『すなわち』


『王の記憶を集め』


『世界の真理に触れるということは』


『世界を支えるものを倒すということ』


街が静まり返る。


誰も言葉を発せない。


ドラゴンの声だけが空に響く。


『それは』


『世界を作り変える唯一の方法』


『それだけの偉業を成し遂げた者にのみ』


『それだけの権利が与えられる』


タクミは黙って聞いていた。


そんなことは、考えたこともなかった。


ドラゴンが言う。


『……すまない』


『余計なことを言ったか』


タクミはゆっくり首を振った。


「いや」


少しだけ空を見上げる。


そして言った。


「最初は……ただの興味だった」


静かな声だった。


「この世界に来て」


「自分は何をしたいんだろうって」


少しだけ笑う。


「前の世界じゃ」


「運の悪い人生だったからな」


リナが小さく目を伏せる。


タクミは続ける。


「でも今は違う」


「色んな人に会って」


「助けられて」


「支えて、支えられて」


空を見上げる。


「だから」


「新しい人生をちゃんと生きたい」


「それを証明したい」


少しだけ肩をすくめる。


「……ただそれだけかもしれない」


しばらくの沈黙。


そして。


ドラゴンが笑った。


低く、静かな笑い。


『なるほど』


『人らしい答えだ』


黄金の瞳が細められる。


『よかろう』


『権利を得てからでも』


『遅くはない』


タクミが眉をひそめる。


「……遅くない?」


「どういう意味だ?」


だがドラゴンは答えない。


代わりに、改めて言った。


『もう一度聞こう』


翼がゆっくりと広がる。


『我は強いぞ』


空気が震える。


『それでも』


『世界の真理に触れることを望むか』


タクミは迷わなかった。


「ああ」


短く答える。


ドラゴンが頷く。


『ならば来い』


巨大な翼が広がる。


『天裂の断崖まで来い』


『お前を待っている』


次の瞬間。


ゴォォォォッ!!


巨大な翼が空を叩く。


エンシェントドラゴンは一直線に空へ舞い上がり、


西の空へと飛び去っていった。


街に静寂が戻る。


誰も言葉を発さない。


そして。


バーグがゆっくり言った。


「……お前」


タクミを見る。


「行くのか」


タクミは静かに頷いた。


「はい」


最後の王。


最後の戦い。


タクミは空を見上げた。

読んでいただきありがとうございます。

初投稿ですので、ブックマークや評価をいただけると励みになります。


毎日更新予定です。

時間は不定期とさせていただきます。

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