第72話『三つの王の記憶』
すみません、昨日投稿できたなかったので今日は2話更新致します。
バーグの部屋の扉が閉まる。
外のざわめきが、少し遠くなった。
部屋の中には、タクミとリナ、そしてバーグの三人。
バーグは椅子に腰を下ろし、腕を組む。
「……さて」
タクミを見る。
「海の王の記憶、手に入ったって言ったな」
タクミは頷いた。
「はい」
リナが椅子に腰掛けながら言う。
「戦ってないんですけどね」
バーグが眉を上げる。
「戦ってない?」
タクミは少し苦笑する。
「ええ、まあ……事情がありまして」
バーグはしばらく二人を見ていたが、やがて肩をすくめた。
「まぁいい、お前らのやることにら今さら驚かん」
バーグは苦笑していたが少しだけ真面目な顔に戻る。
「で?」
「今日はそれを報告しに来たのか?」
タクミは首を横に振った。
「いえ」
「もう一つ、聞きたいことがありまして」
「空についてです」
バーグの表情がわずかに変わる。
「……そうなるか」
タクミは頷く。
「森、山、海」
「三つの王の記憶は手に入りました」
静かに続ける。
「残るのは、空だけなんです」
リナが腕を組む。
「でもさ、空って言われてもね」
「どこ行けばいいのって感じ」
バーグは顎に手を当て、少し考える。
「……最初にも言ったが俺にも分からん」
タクミは、やはりという表情をした。
バーグが続ける。
「森と山は場所がある」
「海も広いとはいえど、目指すところは一応あった」
「だが空には明確な場所がないからな」
リナも一緒に首を傾げる。
「そもそも王の記憶の話自体、ほとんど伝説みたいなものだからな」
「お前たちが伝説じゃなかったことを証明していっているだけのことで」
部屋に静かな時間が落ちる。
タクミはゆっくり息を吐いた。
「……そうですか」
その時、バーグがふと顔を上げた。
「そうだ」
タクミを見る。
バーグが手を差し出す。
「見せてみろ」
「もしかしたら何か分かるかもしれん」
タクミは一瞬だけ考え、すぐに頷いた。
「分かりました」
左手を軽く動かす。
インベントリを開く。
次の瞬間。
机の上に、三つの石のようなものが現れた。
緑。
白銀。
水玉模様の青。
森。
山。
海。
三つの王の記憶。
リナが小さく言う。
「並ぶと綺麗だね」
バーグも無言でそれを見つめていた。
その時だった。
ふっと。
部屋の明かりが、わずかに陰る。
「……?」
リナが窓を見る。
「ねえ」
「急に暗くない?」
タクミも視線を向ける。
さっきまで昼だった空が――
まるで夜のように、沈んでいた。
バーグが立ち上がる。
「なんだ……?」
ドンッ!
扉が勢いよく開いた。
受付嬢が飛び込んでくる。
息を切らしていた。
「バーグさん!」
「大変です!」
バーグが振り向く。
「どうした」
受付嬢は震える声で言った。
「街の上に……!」
「ドラゴンが現れました!!」
部屋の空気が凍りつく。
リナが目を見開いた。
「……ドラゴン?」
窓の外。
暗くなった空。
その向こうに――
何かがいる。
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