第71話『再会と評判』
「タクミさん!!」
ギルドの奥から声が響いた。
タクミが振り返る。
人の間をかき分けるようにして、二人の若い冒険者が駆けてきた。
見覚えがある。
森でウルフ討伐を手伝った、新人冒険者の二人だ。
カイルが息を切らしながら立ち止まる。
「よ、よかった……」
隣のミアも目を輝かせていた。
「戻ってきたんですね!」
タクミは少し驚いたように笑う。
「久しぶりだな」
「元気そうで何よりです」
ミアが嬉しそうに頷く。
「はい!」
カイルも続ける。
「俺たち、あのあともちゃんと訓練してます!」
リナが笑う。
「えらいえらい」
ミアが少し身を乗り出す。
「それより……!」
「聞きました!」
タクミが首を傾げる。
「聞いた?」
カイルが頷く。
「フェンリル……倒したって」
ギルドの空気が、わずかに静かになる。
周囲の冒険者たちの視線が集まった。
タクミは困ったように苦笑する。
「……まあ、そうだね」
ミアがさらに言葉を重ねる。
「アイアンマンティスの件も調査団が言ってました」
「森の奥まで、巣がほとんど壊滅してたって」
周囲のざわめきが広がる。
「やっぱ本当なんだな……」
「二人でだぞ?」
「あり得ねぇ……」
タクミは頭をかいた。
正直、ここまで注目されるとは思っていなかった。
ミアが少し真面目な顔になる。
「私たち……」
「やっぱり思ってた通りでした」
タクミが聞き返す。
「通り?」
ミアはまっすぐタクミを見る。
「タクミさん、すごい冒険者だったんですね」
カイルも力強く頷く。
「あの時も思いましたけど……」
「やっぱり、本物でした」
タクミは一瞬、言葉に詰まった。
リナが横でくすっと笑う。
「照れてる」
「いや……」
タクミは苦笑する。
「そんな大したものじゃないよ」
カイルが首を振る。
「いえ!」
「俺たち、森で見ましたから」
ミアも続ける。
「ブラッドボアの動き、全部見切ってました」
「本当にすごかったです」
タクミは少しだけ目を逸らした。
どう返していいのか分からない。
周囲の冒険者たちも、完全にこちらを見ている。
リナが小声で言う。
「人気者だね」
「やめてくれ」
タクミも小声で返した。
その様子を見ていたバーグが、腕を組んだまま言った。
「……ほらな」
タクミが振り向く。
バーグが少し呆れた顔をしていた。
「だから言っただろ」
「噂になってるって」
タクミはため息をつく。
「ここまでとは思いませんでした」
バーグは肩をすくめる。
「冒険者の世界は広いようで狭い」
「デカい話ほど、すぐ広がる」
それから新人二人を見る。
「お前らも、ちゃんと仕事してるみたいだな」
カイルが背筋を伸ばす。
「はい!」
ミアも元気よく頷く。
バーグは軽く頷いたあと、タクミを見る。
「……で」
「お前の話は中で聞こう」
タクミも頷く。
「はい」
バーグは奥の部屋を指した。
タクミは新人二人に向き直る。
「またどこかで会うかもな」
カイルが嬉しそうに言う。
「はい!」
ミアも笑った。
「今度は私たちも、もっと強くなってますから!」
リナが手を振る。
「楽しみにしてる」
タクミとリナはバーグの後ろについて歩き出した。
ギルドのざわめきは、まだ続いている。
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