第69話『海の街の夜』
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レインベルの夕方は、昼とはまた違う賑わいだった。
港に並んでいた船が、次々と戻ってくる。
網を引き上げる音。
木箱を運ぶ掛け声。
そして、潮の匂い。
リナはその光景を興味深そうに見ていた。
「すごい量」
漁師たちが魚を木箱に放り込んでいる。
銀色の魚が跳ねた。
「うわっ」
リナが少し驚く。
近くにいた漁師が笑った。
「姉ちゃん初めてか?」
「うん」
リナは素直に頷く。
「海の街ってこんな感じなんだ」
「今日はまだ少ない方だぞ」
漁師は魚をもう一匹放り込んだ。
「嵐のあとなんか、港埋まるからな」
「へぇ……」
リナは完全に見入っている。
タクミは少し離れた場所から、その様子を見ていた。
リナは魚を指差している。
「これ何?」
「アジだ」
「こっちは?」
「それはサバ」
「サバ……」
どうやら完全に質問攻めにしているらしい。
漁師も面白がって説明していた。
タクミは苦笑する。
……楽しそうだな。
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しばらくするとリナが戻ってきた。
「すごかった」
「魚ばっかりだった」
「港だからな」
リナは少し考えてから言った。
「あとで魚料理食べよう」
「食う気満々だな」
「だって美味しそうだった」
夕方の風が吹く。
港の喧騒はまだ続いていた。
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そのあと二人は港町の小さな食堂に入った。
木造の店。
中は漁師たちで賑わっている。
料理は単純だった。
焼き魚。
貝のスープ。
パン。
だが味は悪くない。
リナは魚を一口食べて、目を丸くした。
「美味しい」
「それは良かった」
「セントラルの料理と全然違う」
「まあ港だからな」
リナは満足そうに食べ続ける。
結局、かなりの量を食べていた。
「満足」
「それは何より」
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夜。
二人は宿に戻った。
港町の宿は、どこか潮の匂いがする。
リナはベッドに倒れ込んだ。
「海って面白いね」
「そうか」
「怖い場所だと思ってた」
少し考えてから言う。
「でも、綺麗だった」
タクミは頷いた。
「そうだな」
「じゃあ、おやすみ」
リナは自分の部屋に入って行った。
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タクミはしばらくして部屋を出た。
宿の外。
夜の港は、昼より静かだった。
遠くで波の音がする。
タクミは港の柵にもたれた。
海を見ながら、ふと考える。
森。
山。
そして海。
正直、ここまで来るとは思っていなかった。
ゴブリンロードから逃げてリナに出会い。
ゴブリンキングを倒して森の王の記憶を手に入れた。
気が付けば、王の記憶を集める話になっていた。
山に入ってキメラを倒してフェンリルとも戦うことになってしまった。
そして海まで来た今――
王の記憶が三つ揃っている。
タクミは小さく息を吐く。
「……あと一つか」
海の向こうには何も見えない。
ただ暗い水面が広がっているだけだ。
でも、次の相手は分かっている。
エンシェントドラゴン。
フェンリルが言っていた、空の王。
アビスも言っていた一番強い存在。
タクミは空を見上げた。
星が出ている。
「まぁ…」
小さく呟く。
「なんとかなるか」
これまでだって、そうだった。
計画してここまで来たわけじゃない。
流れで、ここまで来ただけだ。
それでも何とかなっている。
(元の世界では考えられないが…運が良かったのだろうか)
タクミは皮肉にも少し笑ってしまった。
港の夜風が吹く。
遠くで波の音がする。
明日になれば、また旅だ。
一度セントラルへ戻って。
そして――
空の王のもとへ。
タクミは海を最後にもう一度だけ見て、宿へ戻った。
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