第61話『新人ウルフ討伐』
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森へ続く道を、四人はゆっくり歩いていた。
カイルは少し緊張した様子で周囲を見ている。
ミアも剣の柄に手を添えたまま、落ち着かない様子だ。
その後ろを、タクミとリナが歩いていた。
「硬いね」
リナが小声で言う。
タクミも苦笑する。
「そりゃそうだろ」
後ろにSランクが二人いる。
新人からすれば、緊張して当然だ。
少し歩いたところで、タクミが声をかける。
「カイル」
「は、はい!」
驚いたように振り向く。
「そんなに力入れるな」
タクミは周囲を軽く見渡す。
「ウルフは気配に敏感だ」
ミアが小さく頷く。
「……はい」
タクミは続ける。
「まず一つ」
「囲まれないように位置を取れ」
二人は顔を見合わせる。
タクミは地面に枝で簡単な図を描いた。
「ウルフは群れで動く」
丸をいくつか描く。
「前に出すぎると、こうなる」
丸が囲む形になる。
「だから――」
タクミは線を引いた。
「背中を合わせる形を作れ」
カイルが頷く。
「なるほど……」
リナが横で笑う。
「タクミ、教えるの上手いじゃない」
「普通だろ」
そう言った、その時だった。
ガサッ。
森の奥で草が揺れた。
カイルの体が固まる。
ミアも剣を構える。
次の瞬間。
低い唸り声が響いた。
グルル……
茂みから姿を現す。
ウルフ。
一体。
そして、もう一体。
さらに後ろから、もう一体。
「三体……」
カイルが呟く。
タクミは落ち着いて言う。
「焦るな」
二人の位置を見る。
少し離れている。
「近づけ」
二人はすぐに背中を合わせる位置に移動した。
タクミは頷く。
「いい」
ウルフがゆっくり距離を詰めてくる。
カイルの剣先がわずかに震える。
「カイル」
「は、はい」
「一体目はお前が前に出ろ」
「えっ」
タクミは静かに言う。
「大丈夫だ」
「動きは速いが単純だ」
ウルフが飛び出した。
カイルが反応する。
剣を振る。
だが、浅い。
ウルフはすぐに距離を取る。
「深追いするな」
タクミが言う。
「次来るぞ」
別のウルフが飛び出す。
ミアが剣を振る。
ガンッ!!
刃がぶつかる。
「今だ」
タクミの声。
カイルが踏み込む。
剣が振り下ろされる。
ズバッ!!
ウルフが倒れた。
カイルの目が大きく開く。
「や、やった……!」
だが、残り二体。
唸り声を上げながら距離を詰める。
「ミア」
タクミが言う。
「次はお前」
ミアが息を整える。
ウルフが跳ぶ。
ミアは体を横にずらす。
回避。
そして剣を振る。
だが、浅い。
ウルフが振り向く。
その瞬間。
「カイル」
タクミの声。
カイルが反応する。
剣が振り抜かれる。
ズドッ!!
二体目が倒れた。
最後の一体。
ウルフは一瞬、迷うように動きを止めた。
「今だ」
ミアが踏み込む。
剣が閃く。
ズバッ!!
ウルフが地面に崩れ落ちた。
静寂。
カイルが大きく息を吐く。
「……勝った」
ミアも肩の力を抜いた。
「なんとか……」
タクミは頷く。
「悪くない」
カイルが振り向く。
「本当ですか?」
タクミは言う。
「最初の動きは良かった」
それからミアを見る。
「回避もちゃんとしてた」
ミアが少し照れる。
「ありがとうございます」
タクミは倒れたウルフを見る。
「群れでも、落ち着けばいける」
それを聞きながら、リナが小さく笑った。
「なんか懐かしいね」
タクミも少し笑う。
「ああ」
昔。
初めてウルフを倒した時。
あの時も――
必死だった。
今目の前にいる二人は、きっとあの頃の自分たちと同じだ。
タクミがそう思った、その時だった。
ガサッ。
森の奥で、何かが動いた。
ウルフとは違う。
重い音。
ズシッ……
ズシッ……
タクミの目がわずかに細くなる。
「……ん?」
カイルが振り向く。
「どうしました?」
次の瞬間。
森の奥の木が揺れた。
そして現れたのは――
巨大な影だった。
カイルが息を呑む。
「な……」
ミアの声が震える。
「なに……あれ……」
赤黒い巨体。
地面を踏みしめるたび、土が揺れる。
巨大な牙。
鋼のような体。
タクミが小さく呟いた。
「ブラッドボアか」
新人二人が固まる。
その魔物は――
明らかにウルフとは格が違っていた。
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