第51話『いつも通りの見送りとSランク冒険者』
朝。
バルゼの街は、いつもと変わらない朝を迎えていた。
早起きの商人が店を開け、
ギルド前では冒険者たちが依頼内容を眺めている。
タクミとリナは、街の出口へ向かって歩いていた。
「……ちゃんと寝られた?」
リナが聞く。
「まあ、そこそこ」
「“そこそこ”って顔じゃないけど」
「リナも人のこと言えないだろ」
そんな、いつも通りの会話。
街を出る直前。
「おーい」
聞き慣れた声がして、二人は振り返る。
「ダッカルさん」
リナが少し驚いたように言った。
ダッカルはギルドの前掛け姿のまま、軽く手を上げていた。
「もう出るって聞いたからな。見送りくらいはしとかねぇと」
「わざわざ来てくれたんですね」
タクミが言うと、
「そりゃ来るだろ」
ダッカルは、当たり前のように答えた。
「山の方はもう大丈夫だった。街も落ち着いてるよ」
「そうですか」
「お前らのおかげだ」
一瞬だけ、間が空く。
けれど、ダッカルは深い話をするでもなく、
「次は海、だったな」
と、軽く言った。
「はい」
「まあ……気をつけろよ」
それだけだった。
「また戻ってきます」
リナが言う。
「当たり前だ」
「帰ってくる場所があるから、旅なんだろ」
ダッカルはそう言って、軽く手を振った。
「行ってこい」
タクミは一礼し、リナも頭を下げる。
「あー、それとあれだ」
「?」
「お前たちのことは、Sランクにしておいた」
「……はい?」
「だから、今日からお前たちはSランク冒険者だ」
「……えぇー!!!!!」
「あれだけのことをやったんだ、当たり前だろ。フェンリルのことはみんなが知らないにしても、キメラのことや山の件を解決しただけでも、すでにSランク級だ。むしろこれでランクを上げなきゃ、俺が協会から怒られちまう」
「ははは……」
「そういうわけだ。胸張って行ってこい!」
「……はいっ!」
そして二人は、そのまま街を後にした。
⸻
道中は、特に何も起きなかった。
森を抜け、
街道を進み、
いくつかの街を通り過ぎる。
会話もあったし、
何も話さない時間もあった。
そうして――
⸻
数日後。
見慣れた石造りの街並みが、視界に広がる。
「……セントラルだ」
タクミが呟いた。
人の多さ。
建物の規模。
空気の違い。
「帰ってきた感じするわね」
リナが少し笑う。
二人は、街門をくぐった。
次に目指すのは、南。
海の王――アビス。
だが今はまだ、
ただの“帰還”だった。
セントラルは、
何も知らない顔で、
二人を迎え入れていた。
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