表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOOD LUCK  作者: risiyakaea


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/59

第38話『歪な翼』

グリフォンを倒してから、さらに山を登った。


空気が重い。

風の流れが、どこか歪んでいる。


「……さっきより、静かすぎない?」


リナが周囲を見回す。


「確かに」

タクミも頷いた。

「魔物の気配が薄い」


本来なら、小型の魔物がいてもおかしくない場所だ。

だが――いない。


“いるはずのものがいない”。


その違和感が、じわりと背中に張りつく。


「この辺りだ」


セリオが足を止めた。


「調査したかった場所は」


岩壁に囲まれた、半円状の地形。

風が淀み、逃げ場が少ない。


(……嫌な場所だな)


そう思った瞬間。


――ぐちゃり。


濡れた肉を踏み潰すような音が、上から落ちてきた。


「……っ!」


反応するより早く、

質量の塊が地面へ叩きつけられる。


轟音。

砕ける岩。

舞い上がる粉塵。


その向こうに――“それ”はいた。


グリフォンの翼。


だが、それ以外が異様だった。


発達しすぎた上半身。

人型に近い骨格。

隆起した筋肉。


そして――オーガの腕。


両脚も同様に、明らかに別種のもの。


胴体は無理やり繋ぎ合わせたように歪み、

肉の境界が不自然に盛り上がっている。


咆哮。


グリフォンの叫びに、

別の――低く濁った唸りが重なった。


「……なに、あれ」


リナの声が、わずかに震える。


「キメラだ」


セリオが、淡々と言った。


「融合された魔物だよ」


(融合……?)


自然に存在するはずのない組み合わせ。


キメラは翼を広げる。


空気が、震えた。



「飛ぶ……!」


リナが歯噛みする。


急降下。


タクミは踏み込み、迎撃する。


――だが。


ガギィン!!


「……!?」


刃が、弾かれた。


確かに当たっている。

だが――通らない。


(硬い!?)


オーガの筋肉と骨格が、

グリフォンの弱点を埋めている。

さらに"素"のものよりも強化されているようだ。


キメラは着地と同時に、腕を振り抜いた。


「くっ!」


衝撃。


タクミの体が宙を舞い、岩壁に叩きつけられる。


息が詰まる。


(さっきと同じじゃない……!)


ただ硬いだけじゃない。


(重い……!)


圧が違う。


「タクミ!」


リナの声。


「時間を稼いで!」


彼女は距離を取り、詠唱に入る。


キメラがそれに気づき、翼を広げる。


「させるか!」


タクミは前に出た。


再び斬る。


――弾かれる。


(ダメだ……削れない)


拳が迫る。


受け流す。

だが腕が痺れる。


その瞬間。


ふと思いついた。


(魔力……)


リナは、それを“外に出して”使っている。


(じゃあ俺は――)


自分の中にもあるはずのもの。


これまで使えないと思っていたもの。


だが今。


体の奥に、確かに“何か”があるのは感じる。

魔法というものを見たからだろうか。


熱のような、圧のような。


(……これか)


意識を向ける。


腕へ。

掌へ。

刃へ。


理屈じゃない。


ただ、“流す”。


イメージする。


その瞬間。


――ドクン。


刃の奥で、鼓動が返ってきた。


「……っ!」


赤黒い光が、血管のように刃を走る。


応えるように。


待っていたかのように。


「シルヴァリオン……」


名が、自然に漏れた。


キメラが踏み込む。


タクミは反射で、横薙ぎに斬る。


ズン。


鈍い手応え。


一拍遅れて、血が噴き出した。


「……通った?」


浅い。だが確実に。


キメラが、初めて怯む。


「今……何をしたの?」


リナが詠唱の合間に呟く。


「わからない」

タクミは短く答えた。

「でも――いける」


もう一度。


同じ感覚をなぞる。


今度は、迷わない。


ギィィィン!!


オーガの腕が、宙を舞った。


絶叫。


体勢が崩れる。


「――《風よ、穿て》!」


同時に、リナの魔法が完成する。


圧縮された風が、

キメラの胴体を貫いた。


悲鳴。


崩れ落ちる巨体。


タクミは間合いを詰め――


止めを刺した。


静寂が戻る。



「……なんだったの、今の」


リナが息を整えながら言う。


タクミは、剣を見つめた。


「俺にもわからない」

正直に答える。

「でも……さっき戦ったオーガやグリフォンとは別物だった」


セリオが、ゆっくりと近づいてくる。


倒れたキメラの前で立ち止まり――


「完全な融合体が……」


小さく呟く。


そして。


「……素晴らしい」


抑えきれない熱が、その声に滲んだ。


「……?」


リナが鋭く視線を向ける。


セリオははっとしたように顔を上げ、

すぐに穏やかな笑みを作る。


「いや、研究者としての独り言だよ」


だが――


その視線は。


倒れたキメラではなく。


タクミの剣に、向けられていた。

読んでいただきありがとうございます。

初投稿ですので、ブックマークや評価をいただけると励みになります。


毎日更新予定です。

時間は不定期とさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ