表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOOD LUCK  作者: risiyakaea


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/58

第22話『炎に宿る意志』

※ヴォルド視点です


工房の奥深く――


巨大な炉が、生き物のようにうねりながら赤々と燃えていた。


ゴォ……ゴォォ……


低く響く音が、空気を震わせる。


ヴォルドは額の汗を拭い、深く息を吐いた。


(初めてだ……)


視線の先。


そこにあるのは――


黒曜石のような光沢を持つ、異質な結晶。


内部を、赤い紋様が脈打っている。


まるで血管のように。


(ゴブリンキングの魔核……)


(こんなもんを、叩く日が来るとはな……)


口元が歪む。


(だが――)


「これをやらずに何が鍛冶師だ」


ハンマーを握る手に、力がこもる。


「――やるぞ」


魔核を炉へと放り込んだ。



初日。


結果は――惨敗だった。


炉の温度を限界まで上げる。


鉄も、ミスリルも屈してきた熱。


だが――


魔核は、びくともしない。


赤い脈動だけが、ゆっくりと揺れている。


「……舐めやがって」


歯を食いしばる。


そのまま打ち込む。


――バチィィン!!


「ぐっ……!」


火花が弾ける。


だがそれは、普通の火花ではない。


赤黒い、禍々しい閃光。


ハンマーが弾かれ、腕が痺れる。


「駄目だ……!」


吐き捨てる。


「鉄やミスリルと同じやり方じゃ……通らねぇ!」


拳を握りしめる。


(タクミの野郎に大口叩いたってのに……)


(このままじゃ、笑えねぇぞ……!)



夜。


工房の灯は消えない。


ヴォルドは一人、炉の前に座り込んでいた。


じっと、魔核を見つめる。


ゴウン……ゴウン……


赤い脈動。


規則的ではない。


だが、確かに“意志”を感じる。


(……なんだ、こいつは)


(ただの素材じゃねぇ)


(まるで――)



二日目。


ヴォルドは魔核に手をかざした。


熱ではない。


“何か”が伝わってくる。


ゴウン……ゴウン……


「……心臓みてぇだな」


ぽつりと呟く。


その瞬間――


ヴォルドの目が細められた。


(……合わせろってか?)


ハンマーを握る。


「いいだろう……乗ってやる」



ゴウン……


――カン!


ゴウン……


――カン!


脈動に合わせて、叩く。


すると――


わずかに、変化が生まれた。


「……動いた?」


確かに、形が歪む。


これまで微動だにしなかった魔核が。


「ハハ……!」


口元が歪む。


「そういうことかよ……!」


目が、爛々と輝く。


(こいつは“叩く”もんじゃねぇ)


(“応えさせる”もんだ……!)



三日目、四日目。


工房に響く音が変わる。


カン!ではない。


“対話”の音だ。


ゴウン……カン

ゴウン……カン


ヴォルドは食事も睡眠も削る。


ただ、打つ。


ただ、応じる。


(俺は鍛冶師だ)


(鉄を叩くだけの人形じゃねぇ)


(命を預けるもんを作る――それが仕事だ!)


腕が裂ける。


血が滲む。


だが止まらない。


「なぁ……」


息を吐く。


「お前、どんな形になりてぇんだ?」


魔核は、応えるように脈打った。



五日目。


変化は明確だった。


魔核はすでに短剣の形を取り始めている。


打ち始めは黒が基調だった外殻が、今では深い緑が大部分を占めている。


まるで、闇を感じる森の奥のような色。


その中心を――


赤い脈動が走る。


「……なるほどな」


ヴォルドは目を細めた。


(“森の王”ってわけか)


(性質が表に出てきやがった……!)


手応えがあった。


だが――


次の瞬間。


ゴォォォォォォ!!


炉が暴れた。


炎が噴き上がる。


「くそっ……暴れやがる!」


工房が赤黒く染まる。


だがヴォルドは退かない。


(ここで引くかよ……!)


ハンマーを振りかぶる。


「来い!!」


――カァァァァァァン!!


渾身の一撃。


その瞬間――


赤黒い光が、一気に収束した。


短剣が、低く唸る。


そして――静まった。



七日目の朝。


ヴォルドは、荒い呼吸を吐いた。


「……できた」


金床の上。


そこにあったのは――


一振りの短剣。


深い緑と黒が混じり合った刃。


中心には、赤い脈動。


まるで生きているかのように、かすかに鼓動している。


柄には、精緻な銀の彫刻。


荒々しさと、美しさを兼ね備えていた。


「……はは」


力が抜ける。


「やりやがったな、俺……」


ゆっくりと持ち上げる。


重み。


熱。


そして――確かな“存在感”。


「最高だ……」


心からの笑みが浮かぶ。



朝日が差し込む。


傷だらけの腕が、光に照らされる。


ヴォルドは短剣を見つめながら、静かに呟いた。


「待ってろよ、坊主」


口元が、力強く歪む。


「とんでもねぇ相棒、用意してやったぞ」

読んでいただきありがとうございます。

初投稿ですので、ブックマークや評価をいただけると励みになります。


毎日更新予定です。

時間は不定期とさせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ