表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/96

第74章 引き金



 金箔の壁を震わせるほどの衝撃音とともに、VIPルームの扉が内側へ弾け飛んだ。

 木片と鉄屑が宙を舞い、その隙間から氷室と数人の武装隊員が雪崩れ込んでくる。

 室内の空気が、一瞬で戦場の匂いに変わった。


 「全員、動くな!」

 氷室の声は鋭く、金属の冷たさを帯びていた。

 だが天城は、まるで事態を歓迎するかのようにソファに腰を下ろし直し、ワイングラスを軽く揺らした。


 「……氷室、お前はやはり血の匂いが好きだな」

 「天城、余計な口は要らない。こいつらは──俺の獲物だ」

 氷室の視線は竜司たち三人に固定されている。


 竜司は一歩も引かず、氷室を睨み返す。

 「獲物? 俺たちはもう、ただの追われる側じゃない」

 その声に、誠が刃を構え、沙希が端末を握り直した。


 天城は唇の端をわずかに吊り上げる。

 「面白い。……ではこうしよう。お前たち三人が氷室を倒せば、この部屋から生きて出られる道を教えてやる」


 その提案に、氷室の目がわずかに細まる。

 「……天城。俺を使って遊ぶ気か?」

 「お前も強者だろう? 退屈は嫌いなはずだ」


 次の瞬間、氷室が踏み込んだ。

 銃口が竜司の胸に向けられ、ほぼ同時に引き金が引かれる。

 乾いた銃声が室内を裂き、竜司は反射的に右へ飛び込む。


 弾丸は金箔の壁を抉り、背後に立っていた黒服の肩を撃ち抜いた。

 悲鳴と同時に、室内が一斉に混乱に包まれる。


 誠が低く構えたまま氷室の足元へ滑り込み、ナイフで太腿を狙う。

 氷室はわずかに身を引き、逆に誠の腕を蹴り払った。

 刃が床に転がり、火花が散る。


 沙希はこの混乱を利用し、部屋奥の通信端末へ走った。

 だが天城はその行動を見逃さない。

 「……どこへ行く?」

 低い声とともに、天城が立ち上がる。葉巻の火を床に落とし、重い靴音で沙希へ迫った。


 竜司は氷室の攻撃をかわしながら、沙希に向けて叫ぶ。

 「沙希、行け! 今しかない!」


 その声に応えるように、沙希は端末のパネルを叩き、暗号化通信を解除した。

 画面に複雑なコードが走り、施設全体のセキュリティが次々と無効化されていく。

 同時に、廊下から新たな足音が迫ってくるのが聞こえた。


 氷室が一瞬だけそちらへ視線を向ける。

 竜司はその隙を逃さず、低い姿勢で氷室の懐へ潜り込み、拳で腹部を打ち抜いた。

 鈍い息が氷室の口から漏れる。


 しかし、氷室は倒れない。

 逆に竜司の腕を掴み、そのまま壁際へ叩きつけた。

 衝撃で視界が一瞬白く霞む。


 誠が間に入り、氷室の銃腕を掴んで引き倒そうとするが、氷室は力で押し返す。

 「甘い!」

 短く吐き捨てると、氷室は誠の肩を撃ち抜いた。

 銃声と血の匂いが同時に広がる。


 沙希が振り返り、蒼ざめた表情で誠を見た。

 「誠!」

 しかしその瞬間、天城が沙希の背後に立ち、首筋に冷たい刃を押し当てた。


 「動くな、竜司」

 天城の声は、静かだが底冷えするほどの圧力を帯びていた。


 竜司は拳を握りしめたまま、わずかに呼吸を荒らす。

 氷室も天城を見据え、低く呟いた。

 「……人質か」

 「強者は手段を選ばん。お前もそうだろう、氷室」


 部屋の外から、さらに重武装の部隊が突入してくる足音が近づく。

 次の一手を誤れば、全員がここで終わる──その緊張が、空気を張り詰めさせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ