第65章 嘘と銃弾の狭間で
深夜の薄暗い喫茶店。
竜司は煙草の煙をゆっくりと吐き出しながら、テーブルの向かいに座る男の顔をじっと見つめていた。
男は落ち着いた声で言った。
「お前たちの動きは、黒羽会だけじゃなく、裏社会全体のバランスを崩す可能性がある。だから……俺はお前に忠告する」
竜司は煙草の火を消し、静かに答えた。
「忠告はありがたいが、俺たちはもう引けないところまで来てる」
男はゆっくりと拳をテーブルに置いた。
「その決意、よく分かる。だが、この街はもう簡単には動かない。裏切りはお前たちの中にもいるし、外からも狙われている」
竜司の目が鋭く光った。
「誰が裏切り者なんだ?」
男は顔を曇らせ、視線を伏せた。
「それは……お前が見極めるしかない。だが、もし間違えばお前自身が狙われる」
竜司は短く息をつき、外の夜風を吸い込んだ。
店の外ではパトカーのサイレンが遠くに鳴り響いていた。
彼は覚悟を決めた。
「誰かを疑い、裏切り者を暴く。これが最後の戦いになる」
翌朝、竜司は沙希と美咲、九条を集めて会議を開いた。
「我々の中に裏切り者がいる。情報が漏れ続けているのはそのせいだ」
沙希が震える声で尋ねる。
「どうやって見つけるの?」
竜司は厳しい表情で答えた。
「偽の情報を流して反応を見て、誰がそれを外に伝えるかを探る」
計画は緻密に練られた。
偽の作戦計画を用意し、敢えて関係者の目に触れるように流す。
それに対しての反応を監視し、怪しい動きをする者を洗い出すのだ。
美咲は冷静に分析し、九条は動きを封じるための具体的な手段を提案した。
沙希は竜司を信じて、背中を押す。
数日後、偽情報は確実に外部へ漏れていった。
その中で、特定の名前が浮かび上がった。
仲間の一人――かつて竜司たちと共に戦った親友の名が、密告者として浮上したのだ。
竜司は激しい葛藤に苛まれた。
裏切り者は確かにいる。しかしそれが親友だとは認めたくなかった。
それでも、このまま放置すれば全てが崩れる。
「俺は……俺はどうすればいいんだ……」
竜司は膝をつき、手で顔を覆った。
その時、部屋の扉が激しくノックされた。
「竜司、開けろ! お前に話がある」
声は切迫していた。
竜司は深呼吸して、扉を開けた。
そこには裏切り者と噂される親友が立っていた。
その目は、かつての熱意を失い、どこか冷めていた。
「話がしたい」
親友は言った。
「俺には、俺なりの理由がある。話を聞いてくれ」
竜司は言葉を飲み込み、静かにうなずいた。
ここから、もう一つの真実が動き始める――。




