第44章 囚われの戦火
竜司の体は拘束具に縛られ、動きは極端に制限されていたが、彼の心は決して鎮まることはなかった。手首の冷たい鉄が、彼の不屈の精神を押しとどめることはできなかった。
部屋の薄暗い蛍光灯の下、汗と恐怖が入り混じる中、彼は壁に映るわずかな影に目を凝らした。足音が近づく。
「また来たか……」竜司は無言で覚悟を決める。
扉がゆっくりと開き、見慣れぬ白衣の男が二人、冷静な表情で入ってきた。
「おはよう、No.7。今日も実験の時間だ」男の声は冷たく、感情の欠片も感じられなかった。
その一人が手にしたトレイには、注射器のほか、薬瓶や不明な機械のパーツが並べられている。
「お前の身体はもう限界に近い。これ以上無理をすれば、即座に壊れるだろう」
竜司は目を閉じ、かすかな吐息を漏らした。だが、その瞳には揺るがぬ決意が宿っていた。
「俺の身体が壊れても、夢は壊れない」
「夢……?」男たちは軽蔑の色を含んだ視線を向ける。
「甲子園だ。俺はそこで勝つためにここにいる」
男たちは顔を見合わせ、やがて一人が機械を操作し始めた。
「よかろう。今回は新しい薬剤だ。これで反応が良ければ、次の段階に進める」
注射器が竜司の腕に突き刺さり、冷たい液体が体内に流れ込む。
瞬間、身体中に灼熱の痛みが走った。竜司は顔を歪め、声を上げた。
「……クソッ……」
痛みが全身を貫き、意識が遠のく。だが、彼は必死に抗った。
「負けるか……負けるか……負けるか……!」
心の中で三度唱えながら、なんとか耐え続けた。
数時間後、竜司は意識を取り戻し、静かに呼吸を整えていた。
壁の向こうからは、何者かの会話が聞こえた。
「今回の被験体は特異だ。通常の薬剤でこれほどの耐性を示す者は珍しい」
「だが、精神的な耐久度は限界に近い。早急な処置が必要だ」
竜司は耳を澄ましながら、自分の命運が彼らの手に委ねられていることを痛感した。
しかし、絶望の淵にあっても、彼の心は折れなかった。
「俺はここから出て、もう一度仲間たちの前に立つ」
閉ざされた檻の中で、竜司の闘志は静かに、しかし確かに燃え続けていた。




