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『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


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第35章 もう一人の拓真


 竜司は、その男の瞳をじっと見つめた。

 確かに顔も声も拓真だ。

 だが、あの頃の熱を帯びた眼差しは、氷のような冷たさに変わっていた。


 「……お前は誰だ」

 問いかける竜司に、男はわずかに口元を歪める。

 「神谷拓真——そう呼ばれていた時期もあった」


 美咲が割って入った。

 「その“時期”ってどういう意味? 本物の拓真はどこにいるの?」

 男は答えず、代わりに背後のカプセル群へ手を向けた。

 ガラスの中、意識を失った拓真が、機械のように規則正しい呼吸をしている。


 「見ての通りだ。本物はここにいる。そして——俺は、作られた“もう一人”だ」


 源が低くうなった。

 「クローンか、脳移植か……」

 桐生は表情を変えずに問い詰める。

 「目的は何だ。なぜ竜司を呼び寄せた?」


 男は答える代わりに、ゆっくりと歩み寄ってきた。

 そして竜司の耳元で囁く。

 「お前も……次に作られる予定だったんだよ」


 竜司の背筋を冷たいものが走る。


 その時、天井のスピーカーから再び指揮官の声が響いた。

 「捕獲班、突入しろ」

 直後、ホールの扉が爆音と共に吹き飛び、黒い戦闘服のPMC部隊が雪崩れ込んでくる。


 源が先に反応し、二丁のサブマシンガンを左右に構えて連射。

 桐生も手榴弾を転がし、閃光と爆音で敵の動きを止めた。

 だが、その混乱の中——美咲が一瞬、竜司の背後に回り込み、何か小型の装置を彼のポケットに忍ばせた。


 「竜司、右へ!」

 美咲の声に従い、竜司はカプセルの陰に飛び込む。

 銃弾がガラスを割り、冷却液が床に広がっていく。


 割れたカプセルの中から、本物の拓真が咳き込みながら目を覚ました。

 その視線が竜司を捉える——だが、次の瞬間、拓真は何かを言いかけて再び意識を失った。


 戦闘の喧騒の中、「もう一人の拓真」が竜司に向かって手を差し出す。

 「生き延びたければ、俺と来い」


 その時、竜司のポケットの中で、何かが小さく点滅した。

 美咲の仕掛けた装置——位置情報発信機か、それとも……爆弾か。


 竜司の頭の中で、疑念が鋭く膨らんでいった。

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