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『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


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第34章 亡霊の声


 「……嘘だろ」

 竜司の声は、自分でも驚くほど震えていた。

 スピーカーから流れるあの声——低く、乾いた響き、語尾のわずかなクセ。間違えるはずがない。


 神谷拓真。

 二年前、竜司と共に抗争の最前線に立ち、命を落としたはずの男。

 葬式まで出た。火葬の煙を、竜司は確かに見た。


 「お前……死んだんじゃなかったのか」

 竜司の問いに、スピーカー越しの拓真は笑った。

 「死んだ? そう思わせた方が都合が良かったんだよ」

 言葉の意味を飲み込む前に、制御室の蛍光灯が一斉に明滅し、低い駆動音と共にエレベーターのドアがゆっくりと開く。


 中は暗闇。

 ただ、その奥で緑色の誘導灯が一つだけ、点滅していた。


 桐生が竜司を見据える。

 「……知り合いか?」

 竜司は短く「昔の仲間だ」とだけ答える。

 美咲が警戒した声で言った。

 「今は罠の可能性が高い。ここで行動を間違えたら、全員終わる」


 だが、竜司の胸には言い知れぬ確信があった。

 拓真がもし本当に生きているのなら、この施設とカストリ搬送ルートの核心に近づけるはずだ。


 突然、天井スピーカーから別の声が割り込んだ。

 低く抑えた、しかし威圧感のある声——PMC部隊の指揮官だろう。

 「目標は制御室にいる四名。殺害は不要、捕獲を優先せよ」


 次の瞬間、制御室の外から重いブーツ音が迫ってくる。

 源が即座にライフルを構え、扉に向けて短いバースト射撃を浴びせる。

 火花が散り、PMCの一人が倒れる音がしたが、すぐに二人、三人と影が動いた。


 「行くぞ!」桐生が叫び、竜司たちはエレベーターに飛び込む。

 美咲が操作盤のカバーを外し、非常用下降ボタンを押すと、重力が一瞬だけ身体を引き上げる感覚が走る。


 ——ガタン。

 エレベーターが止まった。

 ドアが開くと、そこは予想もしなかった空間だった。


 薄暗い巨大なホール。

 中央には、透明な強化ガラスのカプセルがいくつも並び、その中には意識を失った男女が静かに横たわっている。

 腕や首にはチューブが接続され、体内を青白い液体が循環していた。


 美咲が顔を引きつらせる。

 「……これ、全部カストリの被験者……」


 竜司は息を呑む。

 被験者の一人、その顔は——拓真にそっくりだった。


 その瞬間、上空からスピーカーが再び響いた。

 「会いたかったろ、竜司。だが……“俺”は一人じゃない」


 ライトが一斉に点き、竜司の前に現れたのは——拓真の顔をした、もう一人の男だった。

 だが、その目は冷たく、記憶の中の仲間のそれではなかった。

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