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『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


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第26章 雨の屋上、脱出線


 竜司は全身の力を解き放ち、美咲の背後に迫った男の腕を掴み、そのままひねり上げた。

 乾いた悲鳴とともに銃が落ちる。竜司は拾い上げざまに後方へ発砲し、壁際にいたもう一人を牽制した。


 「動くな!」

 恭平が低く叫び、持っていたナイフを部下の喉元に突きつける。

 屋上は一瞬、緊張と混乱の渦に沈んだ。


 山岸は肩を押さえながらも、不気味な笑みを消さない。

 「やはり……君は面白い。だが、ここで逃げられると思うな」


 その言葉と同時に、ビルの下層からサイレンと無線の雑音が聞こえてくる。

 竜司は直感した——これは警察じゃない。山岸が手配した私設の武装部隊だ。


 「恭平、こっちだ!」

 源が非常階段の扉を開けるが、その下からも足音が響く。包囲されている。


 美咲は竜司の袖を掴み、息を切らしながら言う。

 「屋上から……反対側のビルへ飛び移れるわ」

 「何メートルだ?」

 「五メートル……無理じゃない」

 竜司は短く頷く。迷っている時間はない。


 山岸の声が背後から追う。

 「お前たちが持ち出したデータ——それはまだ半分だ。残りは、俺の手の中にある」


 竜司の足が止まる。

 「……残り?」

 山岸は唇の端を上げ、雨に濡れた瞳で竜司を射抜くように見た。

 「お前の弟の命運も、その中に含まれている」


 その一言が、竜司の胸を冷たく締め付けた。

 だが今は問いただす時間も、答えを聞く余裕もない。


 銃声が再び轟き、屋上のコンクリートが弾け飛ぶ。

 竜司たちは駆け出し、雨に濡れた縁へと向かった。

 足元には漆黒の夜の谷間、反対側のビルの屋上がぼんやりと霞んで見える。


 「行け!」

 竜司が叫び、美咲が先に飛び出す。濡れた髪が宙で揺れ、彼女は辛うじて向こう側の縁を掴んだ。

 恭平と源も続く。


 最後に竜司が飛び出す瞬間、背後で山岸の声が響いた。

 「次に会う時、お前は必ず選ばされる——命か、真実か、だ」


 竜司が振り返るよりも早く、銃声が耳を裂いた。

 弾丸は彼の足元をかすめ、雨の闇の中へ消えていった——。

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