表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/96

第24章 蛇の巣へ


 夜の雨が、摩天楼のガラス壁を叩きつけるように降りしきっていた。

 美咲は黒い防水コートのフードを深く被り、無言のまま高層ビルの裏口に滑り込む。

 指先には、奪ったばかりのUSBが冷たく光っていた。


 エレベーターは無音で上昇を続ける。数字が「49」を示した瞬間、彼女の唇が微かに動く。

 「ただいま、山岸」


 一方、竜司たちは車内でGPSの信号を追っていた。

 USBには小型の追跡チップが埋め込まれており、それが唯一の希望だった。


 「反応は……北浜の超高層ビルだ」恭平がモニターを睨む。

 源は短く息を吐き、「罠の匂いがするな」と呟く。

 竜司はアクセルを踏み込みながら、胸の奥のざわめきを押さえきれなかった。

 美咲が裏切ったのか、それとも別の目的があるのか——答えを確かめるには、行くしかない。


 その頃、山岸は最上階の執務室で夜景を背に座っていた。

 机上にはクリスタルのデカンタと二つのグラス。

 扉が開くと同時に、美咲が滑り込む。


 「よくやった」

 山岸の声は低く、湿った蛇のように絡みつく。

 美咲はUSBを机に置き、何も言わずに立ち尽くした。


 「君が戻ってくると信じていたよ。……だが」

 山岸はグラスに琥珀色の液体を注ぎ、美咲の前に置く。

 「忠誠の証明は、まだ終わっていない」


 美咲の瞳がわずかに揺れる。

 「何をすればいいの」

 山岸の口元が冷たく歪んだ。

 「竜司を、この手で消せ」


 49階下——

 竜司たちは地下駐車場に車を停め、装備を整えていた。

 エレベーターは既にセキュリティロックされ、非常階段しか使えない。

 「時間との勝負だ」恭平が低く言い、源がうなずく。


 竜司は心の中で、美咲の名前を呟く。

 信じたい気持ちと、撃たれる覚悟。

 その二つが、雨音のように胸の奥で打ち続けていた。


 最上階では、山岸が一枚の暗いモニターを見つめていた。

 そこには、非常階段を上がる竜司たちの姿が映っている。

 山岸の背後で、美咲が無言のまま拳を握り締めた。


 「今夜すべてが終わる」

 山岸の声が、夜景に溶けていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ