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『グラウンドの亡霊たち』 ―血と汗と裏切りの果てに―  作者: キロヒカ.オツマ―


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第23章 蘇る影


 赤い非常灯が薄闇を切り裂く中、美咲はゆっくりと歩を進めてきた。

 その歩みは迷いがなく、まるでこの場所の主であるかのようだった。


 竜司は銃を構えたまま、声を震わせる。

 「どういうことだ……あの日、お前は——」

 言葉が喉で止まる。二年前、血の海に沈んだ美咲の姿が脳裏に蘇った。


 美咲は薄く笑みを浮かべた。

 「死んだと思わせた方が、やりやすかったのよ。山岸の傍に近づくにはね」


 その言葉は、竜司の胸を鋭く抉る。

 彼女が本当に潜入していたのか、それとも完全に寝返ったのか——その判断がつかない。


 「USBを渡して」

 美咲は唐突に言った。

 背後では、黒服の兵士たちが廊下の奥に並び、銃口をこちらに向けている。

 だが、美咲自身は引き金を引こうともしない。ただ、その瞳は一切の情を排していた。


 恭平が低く呟く。「渡せば終わりだ……竜司、信じるな」

 源はじっと美咲を睨み、女は静かにナイフを握り直す。


 竜司は心の奥で葛藤していた。

 美咲は昔、自分の命を救ったことがある。

 その恩と、この場の現実——どちらを選ぶべきか。


 「私が持ち帰れば、全員が生き残れる」

 美咲の声は低く、しかし確信に満ちていた。

 「山岸は、このデータが外に出なければお前たちを殺さない。今なら手を打てる」


 恭平が笑い飛ばす。「そんな戯言、信じられるか!」

 「信じるかどうかじゃない、生きるか死ぬかよ」美咲は切り返す。


 沈黙が流れる。

 外のサイレンが遠くで響き始め、増援が近づいていることを告げていた。


 突然、非常灯が一斉に消え、室内が完全な暗闇に包まれた。

 次の瞬間——

 鋭い閃光と爆音が炸裂し、白い煙がサーバールームに広がる。


 「閃光弾だ、伏せろ!」源の叫びが響く。

 竜司は咄嗟に床に身を伏せたが、その間に美咲の気配が消えた。


 煙が薄れたとき、彼女も兵士たちもいなかった。

 ただ、冷却ファンの残響と、竜司の手の中に残された空のUSBケースが、すべてを物語っていた。



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