第6話 †回路とマクロ†
酒場兼宿屋「素敵邸」に戻ると1階の飲み屋ですでにうちの連中が管を巻いていた。
その中からアマラを探し出し「オレ、魔法学園、受かった、あしたから、授業」と耳打ちした。
言葉を区切り区切りにしたのはアマラも相当酔っぱらっていたからだ。
アマラはこちらを振り向き「そうか~~~~~そうか~~~~~よかったなあ~~~~~~~」と言ってオレに抱き着いてきた。
まったく酔っぱらいすぎだ、アレ?なんか濡れてるんだが?アマラ泣いてる?
「よかったーーーーよかったーーーーーーーー!!」えんえんと同じ言葉を涙声で繰り返している。
オレもつられて泣いてしまった。
翌朝
「じゃあ学園行ってくるよ!」
「ああ、あたしらも荷造りすんだら村にかえるよ!」
「えええええええっ!!!?ずいぶん急じゃないか!!なんで昨日言わなかったんだよ!」
「言ったらあれじゃろ?しんみりするじゃろ?」
「それはそうだけどさー。水くさいぜ」
「ふふふ、そんなことより」
急に真面目な顔になったアマラにオレはドキッとした。
「アーシェ君!君は自由だ!!なんだってできるし何にでもなれる!!好きなことをして好きなように生きろ!!だけど忘れるなよ?お前の帰るところはあたしのいる場所だ!!帰るところがあることを忘れるんじゃないよっ!!!」
「それとこれ」
アマラから金貨2枚を握らされた。
「これから学園生活で金がかかるだろう?これを使え」
金貨1枚で大人1人が10年暮らせるくらいの価値があることをオレはこの時知らなかった。
「ありがとうアマラ!大事に使わせてもらうよ!!」
「じゃあ!たまには手紙よこせよっ!!」
と言いつつアマラは大泣きだ。
「ああ、落ち着いたら必ず手紙出す!!!」
オレは半泣き、男の子だから我慢我慢
「いってきます!!!!」
「いってらっしゃい!!!!」
こうしてオレはアマラ一行と別れ1人でクレッセン魔法学園へ向かった。
校門のところで昨日のイケメン、ネレウス・デュ・エルフリース学長が待っていた。
ニコニコしながら「昨日はよく眠れたかい?」と声をかけてきた。
「まあまあですかね」
そっけなく答える。
「じゃあ早速教室へ、というか学長室なんだけどね。移動しようか」
「付いて行きます。」
ネレウスに付いて校内に入ると行き交うひとが皆ネレウスに挨拶をしてくる。
中には顔を赤く染める女学生もいる。
まあ、イケメンだし学長だしな。
そしてそのイケメン学長の金魚のふんであるオレには好奇の視線が飛んでくる。
見られすぎて穴が開きそうだ。
そうこうしているうちに学長室へたどり着いた。
「じゃあその応接セットの椅子に座ってくれるかな?」
「はーい」
「昨日も聞いたけどアーシェ君は魔法が使えない。その理由を私の方でも検討してみたんだが・・・」
「・・・ごくり」
「1つはマナの存在を感じていない可能性、もう1つは魔法回路の働きを知らない可能性があります。」
「1つ目から説明していきましょう。」
「お願いします。」
「マナとは世界にあるあらゆる物の構成要素です。このマナの構成と運動量を自在に操ることで様々な結果、つまり魔法を行使することができます。」
「ふむふむ、そのマナを感じるにはどうすれば?」
「ちょっと肩に手を置きますね」
そういうとネレウスがオレの右肩に手を置いた。
「今からキミに私のマナを流し込みます。まずはそれを感じてみてください。」
しばらくするとネレウスの手を置いた方の肩からじんわりとぬくもりを感じ始めた。
「なんかあったかい感じがするんだけどこれは体温?」
「体温もあるでしょうけど3割くらいはマナのぬくもりです。違いを感じられますか?」
オレは右肩に意識を集中した。
温かさの中にわずかにヒリついた何かを感じる。
「なにかありますね。」
「それがマナです。感覚を忘れないようにしてください」
これがマナかー。ふむふむふむふむ
「そうしましたら次に自分の体内に同じ感覚のモノがあるか探してみてください。」
「例えばどのあたり?」
「例えばお腹や胸のあたりですね」
オレはお腹に意識を集中した。腹が減っている。朝飯を食ってこなかったからだ。
グー。腹が鳴った。恥ずかしい。
次に胸に意識を集中した。すると中央部で熱さを感じる。さらに意識を集中するとネレウスのマナのようにヒリついたものは感じなかったが、胸部から湯気がでている感じがあった。
「先生!胸から湯気が出てる感じがします。」
「湯気?マナがオーバーフローしているのか???とにかくそれがキミのマナです。」
「次にそのマナを体内、、そうですね、今回は胸部に集めるよう集中してみてください。」
もとから多量に熱を感じているけど更に集めたほうがいいのか。よしっ!
オレは胸部に熱を集中するイメージをした。さらに湯気が強くなった気がする。
「はい。よくできました。次に私に続いて同じ言葉を発してください。」
「はい」
「いきますよ。『闇夜に光る微かな輝きよ。我が声に応え、その身を現せ。迷いし者の足元を照らし、静かなる光よ、ここに灯れ』」
「闇夜に光る微かな輝きよ。我が声に応え、その身を現せ。迷いし者の足元を照らし、静かなる光よ、ここに灯れ」
「そうしたら右手の指さきに胸部の熱を集中するよう意識してください」
熱を右人差し指に集中!!
カッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
眩しい光が止み、眼が慣れてきたころ、指先を向けていた方を見ると壁が何層にも渡ってぶち抜かれ空の青色を直接視認することができた。
「せんせいっ!!!なんですかこの魔法は???レーザービームとかこんなところで使っちゃだめなやつじゃないですか???」
「そ、そそそ、そんなバカな!!??」
「た、ただの灯火の魔法、生活魔法レベル1で灯をともすだけの魔法なんですよ!??」
「えええええええーーーーーっ!!!??」
生活魔法で壁をぶち抜くとか、生活魔法のレベル1でこれじゃあ他の魔法もやばいんじゃ・・・??
「アーシェ君、私、ちょっと考える用事ができたので今日はこれで授業を終わりにしますね」
ネレウスは青ざめた顔で口元を抑えている。
「わ、わかりました・・・。それでは失礼します。」
オレはクレッセン学園を後にした。
適当に休憩できそうな場所を見つけ、芝生に寝っ転がった。
「魔法が使えるようになったのはいいが、威力がアレじゃなー」
呟きながらそばにあった小石を小川に投げる。ポチャンと音がした。
「魔法回路かー。電気回路みたいなもんだったら抵抗器を付ければいいんだけど・・・」
もう1つ石を投げた。ボチャンと音がした。さっきのよりも大きかったらしい。
「ん??抵抗器?」
オレは何か閃いた気がして飛び起きた。
「さっきのネレウスの講義では魔法を発動させるには・・・」
「マナ集約→マナ圧縮→詠唱→発動ってながれだったな」
「電気回路の方だと、電気→コンデンサでノイズを除去→抵抗器で電気量を調整→トランスで電圧を変換→ランプ点灯ってところかな?文系だったからうろおぼえだけど」
「これを魔法回路に組み込むと、マナ集約→マナ圧縮→コンデンサで精製→抵抗器で調整→トランスで変換→発動ってところか。すると『詠唱』はコンデンサと抵抗器、トランスの役割を果たしているってことになるな」
「一度やってみるか」
マナを胸部に集約、同時に圧縮、できた「圧縮マナ」をコンデンサで精製して質の高い「精製マナ」だけとし、抵抗器で使用するマナの量を「1」に設定、トランスでマナの性質を「光」に変換する。
「ルクスっ!!」
指先にマナを集中するとまばゆい光、ただし先ほどのとは違いほどよい明るさの光が発光した。
「成功だっ!!!!!」
「なるほどなるほど!こういう理屈なわけねw」
「そもそもあれだな?今あるマナを全てコンデンサまでの工程処理したものとしておけば魔法発動の短縮になるな?」
「常に体内のマナを循環させて、集約・圧縮・選別工程をしておくことにしよう」
そう考え付いた瞬間、オレはがくりと膝をついた。
「な、なんだ?なにがおきた?」
ステータスを開く、すると・・・
名前:アーシェ・ルーファス 種族:ヒューマン 性別:男
レベル41 階位:ステージ6 職業:クレッセン魔法学園生徒 称号:転移者
攻撃力:550 魔法攻撃力:326 防御力:395 魔法防御力:251
装備品:手斧(+13) クマ皮の服(+5)
〔ステータス〕残りポイント0
HP:99999999999/99999999999 MP:19999999999/99999999999
腕力:545 体力:415 知力:575 信力:340 魔力:735 敏捷:810 幸運:343
〔固有スキル〕
魔力操作:★★★★★ 状態異常無効:★★★★★ 豪運:★★★★★
SPO:★★★★★ 魔力圧縮:C 魔力精製:C 魔力回路編集:★
火魔法:★★★★★ 土魔法:★★★★★ 風魔法:★★★★★ 水魔法:★★★★★
光魔法:★★★★★ 闇魔法:★★★★★ 聖魔法:★★★★★ 無魔法:★★★★★
〔職業スキル〕
経験値UP(小) 皮はぎ:B 皮なめし:C
MPが五分の一になって、固有スキルに「魔力圧縮」、「魔力精製」、「魔力回路編集」が増えている。
さっきの衝撃はマナを精製マナに一気に変換した反動か・・・
もう一度試すか
魔力量1、光付与と頭の中で念じ「ルクス!」と唱えた。
またしてもさきほどと同様、指先が発光した。
「なるほどなるほど!これは楽ちんだw」
まてよ?ゲームみたいにマクロ設定とかできるんじゃないか?
たとえば、「ルクス」=魔力量1+光付与みたいに、これができれば単に「ルクス」と唱えただけで魔法が発動するハズ・・・
念じろーーー念じろーーー念じろ―――!!
「よしっ!どうだ!!?『ルクス』」
すると指先が先ほど同様光り出した。
「成功っ!!!いえいっ!!!」
これは魔法が簡単に発動できる。『詠唱破棄』とか『無詠唱』とか呼ばれてるやつかも?
あした学園にいったらネレウスに自慢しよう。
気付いたら夕方になっていた。




