第9話 †講義参戦†
それから三ヶ月が過ぎた。
オレはネレウスとの特別授業を終えて今日から同年代の学生とともに授業を受けることになっている。
支給された制服に着替え宿にしている素敵亭の3階から階段を降りていくと一階の食堂でマリアがモジモジしながら待っていた。
「ようマリア!おはよー」
「あっ、師匠おはようございます」
オレは席に着くと女将さんに朝メシを注文した。
マリアはこちらをチラチラ見ながらまだ同じ場所で立ちすくんでいる。
「どした?マリア?オレに話あるんか?」
「う、うん、、言いづらい話なんだけど・・・」
何だろう?
「気にせず話しな。かわいい弟子の話だ。聞くだけは聞こう」
「実はね、アレからアレが来ないの・・・」
「???アレからの『アレ』とアレが来ないのの『アレ』が全く分からないんだが?」
「だからっーー!!アーシェとキスしてから生理が来ないのっ!!!」
りんごよりも赤くなっていてかわいい。
「そのキスと生理来ないのと何か因果関係があるのか?」
「・・・だって、キスしたら赤ちゃん出来るんでしょ?だから・・」
「そんなことでは絶対に出来ない。お前には違う勉強も教えなくてはならないか」
「アーシェ、またキスするの?」
半分不安で半分は期待してそうな雰囲気だ。
「子どもの作り方まで教えてやろうか?」
ニヤニヤしながらマリアの反応を待つ。こうやって純真な女の子を揶揄うのは元いた世界では絶対にできない。異世界だからついつい揶揄ってしまう。
「アーシェが良ければ教えて欲しい」
顔は赤いが目は真剣でオレをジッと見ている。
「かなりエチィことになるんだけど覚悟ある?」
「アーシェがしたいならわたしはいいよ?」
あれれ?きゃー変態!!とかの反応を期待してたんだが??この流れはヤバい
「マリアはその前にオレから教わらなきゃならないこといっぱいあるだろ?そういうことは一人前になってからだな」
「一人前になれば教えてくれるんだ?」
「一人前になるにはある程度の条件を満たしていないとならない」
「どんな条件?」
「少なくとも自衛する力はないと困る」
「そこで、一月前に訓練始めた精製マナはどこまで進んでいる?」
「うん。二週間前に精製マナの常時精製と貯蓄を意識して行う訓練を始めて、今は大体つねにその工程をすることが出来てます」
「なるほど。オレの授業もそろそろ次の段階にした方がいいようだな」
「アーシェ、さっき言ってた条件って?」
「1つ無詠唱魔法を使えるようになること。2つ上級魔法士になること。この二つを最低でもクリアーしてもらいたい」
「ごくり・・」
「要は魔法戦力的にオレの横にいることが出来るヤツがオレの言う一人前だ。」
「逆に言えば2つの条件をクリアーすればわたしはあなたの横に並んでもいいということね?」
「そうだ。これから先いくらオレが才能があって一人で何でも出来てしまうとしても、仲間はほしい」
「じゃあわたし頑張るね!!」
「おう!がんばれよー」
マリアの横を通り過ぎ出口に向かおうとすると、「待ってよ?どこ行くの?」
「学園に決まってるじゃん。授業出なきゃ」
「そうじゃなくて!一緒に行くっていう発想はないわけ?」
「あっ!それもそうだな。ほらマリア行くぞ」
「もう、ほんとバカ。何でこんなのに・・」
二人仲良く?クレッセン魔法学園へと向かった。
素敵亭からクレッセン魔法学園までの道のりは約20分、ほかの学生に比べたら恵まれている。
なかには山の方から走ってくるひともいるっぽい。鍛錬には良いんだろうけど。
「おーい?マリア!そのおとこだれよ??」とオレ達の後ろから声がした。
振り向くとクレッセン魔法学園の制服を着た偉そうなヤツが立っていた。
「そのまえにおはよう!じゃないの?」少しイラついたマリアが返した。
「おはよう。で?そいつだれ??」
イラついた様子のそいつは年齢はオレ達と同じくらいで身長170センチくらい。同年代にしては背が高い方かな?銀髪で主人公面したすかしたイケメン。絵にかいたような王子様風。
「ひとの名前訊きたいならばさきに名乗るべきでは?」オレがマリアに代わって答えた。
「ボクかい?ボクはミドランティア帝国兵部卿を父に持つクロード・フォン・イオニス。よく覚えておけ」
「ふーん・・・じゃあ行こっか?マリア」
「うん」
踵を返し学園へと向かう。
「ちょ・・まて!ひとに名乗らせておいて貴様っ!!名を名乗れ!!」
「いなかもんなんで都会の作法を知りませ~~~んw」
スタスタと学園に向かう。
「くっ・・・。覚えていろっ」
クロードの遠吠えが遠くで聞こえた気がした。
「ねえ?アーシェ?大丈夫なの?」
「さっきのやつのこと?」
「アーシェは知らないんだろうけどアイツはA組、学園のクラスはアルファベット順に優秀な生徒がいてアイツはその中でも一番なんだよ?」
「はははっ、マリア、オレは何組だ?」
「特別選抜クラス…」
「クラスだけでもオレの方が強いって証明してるじゃん?」
「もー!そうじゃなくて、アーシェは気力を使える?」
オドか?前世で聞いたことあるな。気功とかオーラとかだったよな?
「使えない」
「アイツは貴族だから魔法だけじゃなくて気力、もしかすると闘気も使えるかも知れない。」
「ふむふむ、確かにそっちはまるで知らないなあ」
「わたしが知ってることは教えるからそれまで危ないことしないでよね?」
「今度からマリアを師匠って呼ばないとな?」
「もう!ほんと危機感ないんだからっ」
ほおを膨らませたマリアも割とかわいいな。
そんなことを考えていたら学園に到着した。
学園に入るとすぐにネレウス学長が待っていた。
どうやら特級クラスまで案内してくれるつもりらしい。
マリアは、「じゃあ、私はクラス違うからここまでね。帰りは一緒に帰ろうね!」と言い残し走って行った。
「お邪魔だったかな?」ネレウスには珍しく皮肉を言う。
いや、オレが邪魔されたと感じてそう聴こえただけかも知れない。
「いえいえ、ちょうど自分のクラスが分からなかったので助かります」
「ならばよかった」
ネレウスの先導で学園内に入る。
オレが行ったことがあるのは学長室まで。
特級クラスは更に奥の別の建物の中にあるみたいだ。
綺麗な花が咲き乱れている中庭を抜けるとその校舎が見えてきた。
なぜ黒?壁から屋根から全て黒色に塗られたソレは異様な雰囲気を醸し出し佇んでいた。
建物に入ると内装までも黒一色。
どういうセンスしているんだろう?
廊下を歩いて階段を1つ登ると大きなドアがあった。
「ここがキミの教室だよ」と言いネレウスはオレに進路を譲ったので、「入りまーーっす!」と元気よく部屋に入った。
大学の講堂みたいに段々畑のような席が扇状に広がっていて、見た感じ100人は座れると思われるところにせいぜい15人ほどの学生が俺を見ていた。
好奇の目、奇異なものを見る目はまだマシ。
中にはあからさまに敵意に満ちた鋭い眼差しを向けてくる者もいた。
教壇らしいところに歩いていき黒板を背にすると、「アーシェ・ルーファス、今日からここで受講しますのでよろしく!」と挨拶した。
普通ならば拍手が起こるところだが、講堂は静まり返っている。失礼な奴らだ。
「オマエはこのクラスにいる資格があるとでも言うのか?」最前列にいた猫耳獣人が割とデカめの声で吠える。
「いま挨拶したばかりのオレの名すら覚えられないオマエよりはあるんじゃないか?」
一触即発のバチバチの空気
ネレウスはドアの横で壁にもたれてニコニコしてる。
「オマエはオレ様よりも強いとでも?」
両手を広げ呆れたようなジェスチャーをする。
「ザコがイキがりやがってっ!!」
椅子から跳び上がりオレに向かって突進してくる。よく見ると手の指先から鋭そうな爪が出ている。
すごく頑張って素早い攻撃を繰り出しているつもりなんだろうけど、敏捷800を超えるオレにとってはスローモーションより退屈な動きだ。しかし何で物理攻撃?ここは魔法学園では??
疑問を抱えつつ猫耳の攻撃を躱し、後頭部にソフトリーな裏拳を添える感じで触れた。
ドカーーーーっん!!と漫画みたいな音がして振り向くと猫耳奴が黒板に刺さっていた。
講堂内がザワつく
「他に文句あるやつはいるか!!?」
シーンと静まり返る。
「居ないならいい」
オレは講堂の最上段にある椅子に座った。
このクラスにどんなヤツがいるのか知りたいからだ。
ネレウスはいつの間にか講堂から姿消していた。




