50.ドラゴンと、ギルドに行ったら、大騒ぎ
ドラゴンロードであるウラノスが仲間になった。
でも、冒険者として同行させるわけには行かないんだよな……。
「お前、人になれない?」
こういう時は、率直に聞くのが一番だ。
アムスも人の姿に変化できたんだし、どう見ても魔力量が多い竜王さんならば、容易いのではないか――そう思っての問いだった。
『無論、余裕だ』
「えっ? 人に変化するドラゴンなんて、聞いたことないんだけど……」
『小娘よ、貴様は無知だな。我のような竜王はもちろん、一部のドラゴンは〝人化魔術〟を習得しておるのだよ』
人化魔術……そんな魔法まであるのか。
おおよそ、魔物とかが人型になるとき使う魔法だろうな。
《名前からしてすぐに分かります》
……言語化して整理しただけだ。
「むち……言ってくれるわね」
『グアハハハ!! では見せてやろう。竜王の〝人化〟を――ッ!!』
ウラノスの魔力が溢れ、圧で地面が軋む。
その魔力が大空を舞い、魔力が大きな竜に見えた気がした。
魔力で、地震にも似た振動を感じた。
「人化するだけで、こんなに魔力が出るものなの……!?」
少なくとも、アムスが変化した時はこんな魔力は溢れなかった。というか、溢れてすらいなかった。
当のアムスは、その光景に魅入られているようだ。
興味が尽きないかのように、ウラノスに釘付けになっていた。
「すごい……!」
――魔力から光が放たれ、やがて収束していく。
光の中から現れたのは、一人の青年だった。
火炎を体現したかのような赤髪に、赤金色の瞳をしていた。
だがその瞳孔は人のものではなく、猫のように縦長だった。
そして何より、その顔つきからは王者の風格を感じ取れた。
「どうだ? 我が勇ましき姿は?」
「……ッ」
『す……凄い!!』
ラービが感嘆する。
ちなみに、ラービの念話は俺とアムスだけ感じ取れるようにしている。のだが、何故かウラノスは聞き取れるようだ。
「確かに、こりゃ驚いた」
俺は改めて、コイツが竜王だと認識した。
試しに魔力感知をしてみると、ウラノスの魔力が漏れ出ている。
影が竜の形となって、視線を向けられるだけでも魔力圧がかかる。
魔力の制御ができない素人――のように見えるが……。
《魔力を抑える必要がないほどに、敵がいないのでしょう》
ログさんの答えが、俺の感想だった。
「いや、凄いな。これほどだとは思わなかった」
「だろう? 我の偉大さを感じ取るが良い!」
上から目線は相変わらずだ。
竜というものは、誇りを大切にするらしいからな、ウラノスも例外ではないのだろう。
ウラノスが人型になれるということは、冒険者に登録できるということ。
「これで、ウラノスがパーティに加入できるということだな。さっさと行くか」
すぐに街に戻って、ウラノスを加入させなければ。
そう考え、驚きで言葉を失っている二人を引きずって戻るのだった。
◆◆◆◆◆◆
カルミリスのギルドへ戻った。
しかし、一つ問題がある。
重要で、忘れてはいけない問題だ。
「あ、おかえり……ですよね? 依頼は終わったのですか? それに、その方は……?」
――依頼やってねぇ。
ゴブリン討伐、思いっ切り忘れてた! 言い訳なら『竜王拾った』でいけそうだけど……元社会人である俺の意思に反する!!
だが、正直に言うしかあるまい。
というか考える気力が湧かない。これも竜王とかいう奴のせいだちくしょうめ。
「あ、その……言い訳ではありますが、依頼どころじゃなかったんです……」
「へぇ、一体どんな言い訳があるのでしょうね?」
受付嬢さんの圧が、凄まじい。
下手したら、取引先に何千万もの損害を出してしまってガチギレした社長くらい怖い。
「イライ、とは何だ? 富か?」
ちょ、一回竜王は黙っててくれ。
それは後で教えるから。
「あの……先にお聞きしたいんですが、ドラゴンのランクってどれくらいですかね?」
「お答えしますけど……ロードとかなら、中位魔王種ほどでしょうか。……それ今関係あったんですか?」
「竜王拾いました」
「ほにぇ?」
受付嬢が、鳩に豆鉄砲食らったかのような顔と、ふにゃけた声を発する。
まあ無理もないなと、俺も同情しておこう。俺が受付嬢の立場でも、同じ反応をしていたと思うし。
「嘘でしょ?」
「今、竜王っつったか?」
受付嬢は固まったかのように立ちすくむ。
書類を落としたと思ったら、今度は天を仰ぎはじめた。
ハニワみたいな顔をしながら、だ。
他の受付嬢や冒険者も驚きはしたが、この受付嬢ほど驚きはしなかった。
もちろん、ドン引かれていた。
そこへ、ウラノスが追い打ちの一言をかける。
「我が竜王である。何か問題があるか?」
「ぷあふぁ……」
対応していた受付嬢が、死んだかのように倒れた。
気力尽きた、もう動きたくない――そんな目を、最後にしていた。
「何やってんだよウラノス! 受付の人気絶したじゃねーか!」
「ぬ? 駄目だったのか?」
「駄目も何も、竜王だと名乗るなよ!?」
全く……! アイビーはウラノスに対抗心燃やしてるし、アムスは崇拝の目で見てる……。ていうか、アムスはなんで尊敬を向けてんだよ。いやするのは構わないけどさ、主である俺についてくれよ……自分の世界に入らないでくれ……。
よし、切り替えるか。
これでもう、ウラノスは〝竜王〟として冒険者登録しなくてはならなくなった。
まあ、もう――いいか。なんか、対策すんのめんどくせぇ。
《まだ諦めるときでは――!》
いやいや、もう数十人に見られてんだぜ?
受付嬢と、ベテランであろう先輩冒険者たち。全員を口封じするなんて、ムリムリ。
やっても、喋られたら全て無駄になる。
それに、ウラノスのデカい魔力のせいで、ギルドの備品や壁がぶっ壊れてるし。弁償もしなくちゃいけないな。
「はぁ……」
ため息を付きながら、俺は別の受付嬢に声をかける。
別の――青髪の受付嬢さんはなにかに気づいた顔をし、書類を取り出した。
この人は優秀だな――と思いながら、俺は告げる。
「こいつ。名前は〝ウラノス〟で、『闘士』の役職で冒険者登録してください」
「はい。し、承知しました」
青髪嬢さんはテキパキと書類に記入し、それを裏にいる人に手渡しする。
このまま登録終了するか――そう思ったが、なにやらまだ終わる気配はない。
「あの、セルウスさん……」
やはり、なにか問題があるようだ。
「なんでしょうか?」
「竜王……ウラノスさんのランクについてですが……流石にEランクにするわけにはいきません!」
「じゃあ、ちょっと上のDランクとか?」
「あの……竜王のランクは、通常A+です。ですが、冒険者ランクにはAまでしかありません。ですので――」
「ですので?」
「〝特例〟ですが、『A+』ランク冒険者として登録致しました。特例ですよ? 特例なんですからね!!」
特例をよく言う子だな。
というより、A+か……あの火赤水晶の粘魔王と同じか。
周りの反応も辛い。
「おい、A+ってよ……」
「ああ、災害級じゃねぇか?」
このように、ベテランの方々も絶望する始末である。
「グアハハハ!! 小娘、貴様よりも我が上のようだな!」
「グヌヌ……でも所詮、ランクはランクだし……」
「負け惜しみはいらぬぞ! グアハハハ!!!」
二人は、気にしてねぇな。
俺は多少苛立ちを覚えたが、深呼吸をして落ち着かせる。
「あの、ウラノスさん、アイビー様……まだお話がありますので……」
「ぬぬ!? 我を差し置いて、小娘を様付けするとは! 貴様、我も敬称を付けろ!」
「ひっ!?」
「一回黙れ」
「……はい」
全く、叔母さんのブルドックを思い出すぜ。
暴れは暴れるくせに、ちょっと怒ったらすぐに止める。やらなきゃいいのに……。
怯えた青髪嬢さんを宥めて、話を戻す。
「それで、話っていうのは?」
「……竜王が加わったパーティを隠匿するのは、不可能です」
「――まあ、だろうね」
「ついさっき、その情報をキャッチした人がいたようで……」
警察犬かよ。情報が回るの速すぎだろ。
ポリスメン! もうちょっと飼い慣らしてくれ!
っと、おふざけはここまでにしておいて、そのキャッチした人からなにかあるのか?
「教会――〝アデレテレ教〟から、教会訪問の命令が来ました。拒否すると、冒険者免許の剥奪もありえます」
……は?
竜王が絡んで教会が動くって……普通じゃない。
嫌な予感しかしないと、全身の葉緑体が震える感覚がした。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!
「面白い!」「続きが気になる!」
そう思っていただけたら、感想や評価をいただけると嬉しいです!
★★★★★やブックマークをしていただけると、作者が飛び跳ねて喜びます!
皆さまの応援が、次のお話を書く力になります。
これからもよろしくお願いいたします!




