40.白銀のヴェールと一束のシンゴニウム
王城に避難した兵士達は、遠くから見守っていた。
リベルと、ヴェールの戦いを。
超スピードの戦闘。
ギルドマスターならまだしも、常人が目で追えるわけがない。
それくらいの速度で、戦いは展開されていた。
「な、なんてスピードだ……」
指揮官の一人が呟くと、もう一人が相槌を打ち、また一人が反応する。
それが連鎖していき、兵士たちはリベルを応援する様になっていく。
「頑張れー!!」
「負けるな!!」
「神樹殿――!!」
と、応援を叫ぶ。
自分達には何もできないという悔しさと、リベルが戦ってくれているという心強さを乗せて、彼らはエールの送るのだった。
すると――
遠くから、白い光が差し込む。
戦っていた方向から、天使の如き白さをした光が、兵士たちの目に入る。
後から大爆発の音がやってきたことで、兵士たちはすぐに攻撃だと感じた。
「な、なんだ!?」
「ば、爆発だな。……でも、《《どっち》》のだ?」
「帰ってこなかったら敵。帰ってきたら神樹。それでいいだろ――」
爆発音が、子供を叱る親のように、一瞬で静かにさせる。
彼らはもう、闘う気力などない。
強力な仲間が勝つことを、祈るしかなかった――
◆◆◆◆◆◆
白い光が、次第に消えていく。
視界が戻り、前には美しい〝青空〟が見える。
ヴェールと戦っていた時のような〝満天の星空〟ではなく、雲一つ無い晴天であった。
「グ……はぁ……疲れた――」
――マジで強いんだけど、あいつ。やっぱ判断間違えていたら、負けていたな……。
そう思いながら立ち上がり、倒れているヴェールへと、視線を向け、歩み寄る。
「グッ……ヴェ、ヴェール……」
青黒い外骨格は、ボロボロに砕け散り、胸から下と左腕は跡形もなく消え去っている。
煌めいていた黄金の瞳は、今は力尽きたように灰色に染まっている。
右腕は――俺の〝魔力暴爆撃〟をガードしたせいか、チリチリと焼かれていた。
「――リベルか?」
ヴェールが、今にも消え入りそうなほど弱々しい声で聞く。
ああ、そうだ――と対応し、俺はヴェールに話しかける。
「なあ、一つ、話があるんだが――」
「――フッ。敗者でアるオレに、何を話スことがあるト?」
「お前の〝憎悪で構成された領域〟で、見たんだ。昔のお前を」
――何かに気付いたような顔で、ヴェールはオレを見つめる。
何も映らない灰色の目が、俺を見据える。
「お前――いや、お前達は……かけられたことがないんだろ。慈悲――優しさ? をな」
ただ、同胞と主を除いて――だ。
昔から、残酷だったんだ。この記憶で、他種族やオレを憎んでいる理由が、やっと分かった。
「――ああ。オレ達は――私達は、主と同胞を除いテ、慈悲をかケられたコトがナかった。ドウブツ、カミ、シンジュ――そして、ニンゲン」
泣きそうな声で、ヴェールは打ち明ける。
「オレ達はもう、主のタメに闘うしか、ナイんダ……!」
「――でも、オレがいる」
「――エ?」
困惑した様子で、光のない目で俺を見る。
「ドウイウコトダ……?」
「俺は、救済すると決めたんだ。人間を助けたからな――だが、それは人類だけでないと、お前の技で分かった。だから、俺は――」
ヴェールに歩む途中で見つけた、何故か燃えていない〝一つの花束〟を置いて言う。
「俺は、お前らを――全種族が、平等公平となる世界を作る!」
「……バ、馬鹿な。そ、そんなコト、デキる訳が――」
「その花、なんの花だと思う? これはな、仏炎苞だ」
似てるから、そう言っちゃったけど、別にいいだろ。
花には、必ず花言葉が存在する。それがいい言葉でも、悪い言葉でもだ。
「ソイツの花言葉は……確か、〝平和の祈り〟だったっけな? 俺は全てを救う、お前も、あいつらもな。だから、安心して寝な」
そう告げると――ボロボロと、大粒の涙がヴェールの頬を伝う。
ヴェールの声は震えていて、弱々しかった。
「――ああ、リベルヨ――オレは、お前を憎んでいたのではナカッタのだな……」
ヴェールの傍らから、彼の力が集まった球が生成されていく。
生成されている球体は、ヴェールの力が凄まじく込められている。
「お前にハ、主を救えるのカモしれなイ――絶対強者の、我らの主――」
そうして、告げる。ヴェールが、主の存在を。
「オレの力は、コレに込める。そして、教えてヤル。我らが〝絶対王〟――〝グア・ヨルグ〟様を、救えるカモしれない――」
「グア……ヨルグ……?」
「絶対王を、救ッテくれ――」
そうして、ヴェールは力なく、頭が地面にぶつかる。
涙と、血が地面に流れる。
ヴェールの頭上に生成された球体を拾い上げる。
「――グア・ヨルグ、か」
振りゆく雨の中、様々な感情が脳内で渦巻いている中、俺はたった一人で呟く。
グア・ヨルグを救えば良いならば、やってやるよ。
それが、ヴェールを救ってくれるのならば尚更だ。
ならば、やる以外の手段は無え!
そうして、俺はまた一つ〝目的〟を定める。
その目的を達成させたら、ヴェールが浄化してくれると信じて――
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