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血濡れたヴェールを貴下の頭に 其の五

 左肩が破壊された。

 腕が千切れ飛んでいる。

 木だから出血はしないが、損害(ダメージ)が酷い。


「俺の勝ちだ! リベル!」


 ヴェールがそう高らかに宣言する。


「――攻撃を当てたくらいで、勝ち誇ってんじゃねーよ!」


 瞬時に『肉体顕現』で再生させ、左腕で鎌を掴む。

 ヴェールは驚いた様子で鎌を引き抜こうとするが、俺はそれを許さない。


「――離せ!」


 と言われたが、俺はより握力を強くする。


「離せと言われて、素直に離す相手(バカ)がいるかよ!」


 ――余裕で強気なことを言っているが、事態は深刻だ。

 あと〝五分〟、この場で力を抑えなくてはならない。

 そう。あと五分も、この化け物(ヴェール)と闘わなければならない。

 その上で、確実に攻撃を当てる必要があるのだ。


 そして、最悪の場合死ぬ危険まである。

 まさにクソゲー。レビューなら星ゼロだろうよ。

 だが、それも面白い。俺は社会人であり、世界樹であり、ゲーマーだ。

 ゲーマーなら、死ぬまでトライ・アンド・エラーの精神で、やってやるよ――


『ログさん、あと何分かを随時教えてくれ』


《はい。現在の蓄積率は八十三パーセントで、あと三分です!》


 このままこいつを抑えるためは、魔法しかない。

 俺と親和性が高そうな魔法を、使ってやる。


「樹木魔法――!」


 小さく呟くと、ログさんが詠唱する。


《魔法の詠唱を代行します――〝いと堅き大樹よ――》


「さあ、演劇のクライマックスだ!!」


「この流れ――魔法か!」


 ヴェールが気づいたようだが、力が拮抗しているこの状態、抜け出せるわけがない。


《根源たる樹木、母たる根、その子らである果実よ――》


「クッ!」


 ヴェールががむしゃらに、俺の固めから逃れようとする。

 だが、動けば動くほど、俺の握力と右腕の力は益々強くなっていく。

 しかし、ヴェールの力も凄まじい。

 固めている部位に意識を集中しないと、すぐにでも脱出されそうだ。


 ――ヤバい、そろそろ腕が限界だ! そろそろ発動してくれ!!


《行使者である我に、力を貸し給(たま)え〟――》


 できたな? できたな!?


《はい!!》


 そうして、俺はその魔法を発動する――


「〝来魔の縛り根(シールート)〟!!」


 俺が魔法名を叫ぶ。

 すると、無数の根が地面から出てきて、ヴェールの全身に巻き付く。


「こんなもの――」


 固定される前に切り刻もうとしているが、これはミリ単位でも動けば、固定する速度は速まっていく――という魔法だ。



《あと四十秒です――》


 そうログさんの報告を聞くのと同時に、ヴェールの固定が完了する。

 だが――



「まずい――!!」


 と思わず大声で言う。

 なにが起こったかって? 簡単だ。

 ヴェールが魔力を暴発させて、固定を解除しやがった。

 縛っていた樹木は、焼かれたかのように散っていった。


「これしきの魔法如きで、このオレを――私を封じ込めると思うなよ!」


 だが、間違いなく魔力は消費している。

 魔物と生態が似ているのなら――その行為は命を削ることとなる。


「コレで終わりにしてやる――〝悪意に塗れた鎌撃(ヘイトレット・サイズ)〟!!」



《あと三秒――》



 ここで『万能変化』を解くと、また溜めなくては――仕切り直しになる。

 やつの攻撃を、人型のままどうにか対処しなければならない。

 なら、どうするか?


「受けてやるよ、ヴェール!」


「殺す――」


 ヴェールの〝悪意に塗れた鎌撃(ヘイトレット・サイズ)〟が、俺の胸を貫く。

 右胸――元々肝臓があった位置だ。


「今度こそは! 確実に!」


「やられっぱなしじゃあ、やるせないぜぇ!!」


 叫び、自分から鎌に当たりに行く。

 ヴェールの鎌で胴体が切断され、上半身は空高く飛ぶ。


《完全蓄積(フルチャージ)です!》


 空高く飛んだ俺は、『念力』で自分の体を操れるのだ。

 自由落下せずに、絶対にヴェールを貫くために。


「さあ! フィナーレだ!!」


 俺が叫ぶと、ヴェールが無言で跳躍する。

 照準は定まっている。左胸を、ぶっ刺す。

 勢いよく、俺は右腕を繰り出す――





 ――ドスッ――





 俺の右腕が、ヴェールの胸を貫く。

 だが、そこは急所(コア)ではなかった。


「最後の最後で、運が向かなかったなリベル!」


 ヴェールがニヤリを笑う。

 それに対し、俺は絶望――はしないで、ヴェールよりも深い笑みを浮かべる。


「いいや、まだだね。ド派手のハイライトだ!」


《魔力、爆発させます――!》


 右腕に、魔力が集中する。

『魔力感知』で感じなくても、集中した光の量で分かる。

 魔力量から計算すると、周囲を更地にするには充分過ぎるほどの威力で――


「名前をつけるなら、〝魔力暴爆撃(マナ・スタンピート)〟ってところかな?」


「……! リベルゥ――ッ!」


 魔力が爆発し、空間が白く染まる――

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」

そう思っていただけたら、感想や評価をいただけると嬉しいです!


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