↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/59

幕間:武神降臨

 蟲魔ヴェールと、世界樹リベルが戦争する前に〝男〟は起きる――

 その事変は、ヴェールが宣戦布告する前に起こった。



 ――古びれた遺跡〝イヴラ〟は、アルテムラ大陸に存在する最古の遺跡だ。

 カルミリス王国やズームパム戦争法国などが存在するパラバル大陸より面積は小さいが、文明は確かに育っていたのだ。


 イヴラは、数々の調査記録が残されている。

 発見したのは、帝暦六百年からだと言われている。

 そして現在も、調査は続いていた。



「――っしゃあ! やっと仕事が来たぜ……!」


 一人の男が呟く。


「そう言わないでくださいよドランさん。俺達〝幻巨像の繚乱(ギリメカラ)〟は全連の組織なんですから、仕事はあまり取れないんですよ――あと、重用されているから」


 ダーガスが宥める。

 ダーガスすら相手にしない『ドラン』と呼ばれた男は、後ろに振り向いて叫ぶ。


「そういうところも、気に食わねえんだよ! 全連はよ――おっ? あそこになんかあるぞ!」


 愚痴をいいながら、ドランが何かを見つける。

 ドランが指を指した所は、古びれて開かなそうな扉だった。


「いやあ、流石にやめたほうがいいんじゃないですかね……」


「そうですよドランさん! 割と深部まで行ったし、ここらで切り上げたほうが――」


「うるせぇ!」


 隊員達が反対する中、怒号が鳴り響く。


「この七十人いる中隊を率いているのは、隊長代行である副隊長(オレ)なんだよ!! お前らは、つべこべ言わずに従っていればいいんだよ!!」


「――すみません」


 ダーガスと、他に意見を言っていた隊員が謝る。

 そして、ドランは勝手に扉を蹴り飛ばす。


「ドランさん! そんな乱暴にしないでください! 貴重な遺跡が傷ついてしまいます!」


「だから……黙って従ってろと、言っただ――」


 またもや怒号が飛ぼうとしたが、ドランはすぐに止(や)める。

 蹴破った先の部屋の光景に釘付けで、それどころじゃなかった。


「な、なんだ? この部屋――」


 機械的な、部屋。

 実験室や、研究室(ラボ)とでも形容されるべきか。

 培養液の入ったポッド、常に浮遊しているドローンらしき機械などが、その部屋にはあった。

 機械を使う文明など、少なくともこの世界には存在しない。


 ドランたちには、奇妙で謎な部屋だと感じるのも必然なのだ。


「すっげぇーー!!」


 と、ドランが叫び、部屋の中を散策し始める。


「ちょ、ドランさん! 勝手にどっか行かないでください!」


 隊員が注意するが、ドランはそれを軽く受け流す。


「こんなワクワクの前に、我慢してられっか! 行くぞ!!」


「――いい加減にしろ。ドラン」


 ダーガスが、最も低い声で言う。

 重圧で、他の隊員が気圧される。


「……あァ?」


 一瞬で、ピリついた空気となる。

 全隊員はダーガス側へと寄り、ドラン一人でダーガスを睨む。


「ダーガス……お前、誰にモノ言ってんだよ――」


「聞こえなかったか。なら、追加で言ってやろう。いい加減にしろ――お前の行動全てが、我ら隊員達の迷惑となっている。お前の自分勝手な行動で、この遺跡に損失ができる可能性がある以上、今すぐ遺跡からでなくてはならない。お前にも責任が問われるぞ」


「ふざけんな――ッ!」


「それは、こっちのセリフだ!!」


 ドランの怒りの言葉を、ダーガスの怒号で黙らせる。


「前々から感じていたが、お前は自分勝手過ぎる! 副隊長という地位に就いて、自(うぬ)惚(ぼ)れでもしたか。世の中には地位などに頓着しないイカれた連中どもだって居るのだぞ」


「黙れえええぇぇぇぇ――!!!」


 ドランの怒りのボルテージが限界に達する。

 全力でダーガスに向かい、ドランが殴りかかろうとする。

 ――その時に、異変は起こった。


「――貴様ら、騒がしいゾ……。我が永き眠りを、妨(さまた)げるか――」


 培養液の入ったポッドから、声が聞こえる。

 すると、その〝培養ポッド〟が割れ、人型の男が飛び出す。

 四メートルを超える全身を漆黒の甲冑――外骨格が纏い、その赤目はすべてを見通すかのように鋭い。

 そして、赤茶――えんじ色の一本角が、ギラギラと光を反射する。

 その外見は、まるで〝カブトムシ〟が人型になったかのような姿であった。



「な、なんだ!?」


「黙レ」


 手刀で、ドランの首を刈り取る。

 力なく身体は崩れ落ち、血溜まりが広がっていく。


「……!? ……う、うわあああぁぁぁッ!!」


 この一瞬で、隊員達は恐慌状態(パニック)に陥る。

 隊員達が次々と逃げ出そうとする中、ダーガスは落ち着いていた。


「俺は、ダーガスと申す。お前は……何者なのだ」


 ダーガスは、いつも冷静沈着だ。

 幾度の死線を乗り越えてきたからこそ、経験からの考え方ができるのである。

 故に、男の響くような声も、気にせずに声をかけられるのだ。


「……人間にも、礼儀をわきマエタ者がいるようダナ。ヨいダろう、俺も名乗ってやろウ」


 男はそう呟き、高らかに言う。


「俺は蟲魔族(インセクター)の王に仕エる十人の王。十(じゅう)王(おう)魔(ま)蟲(ちゅう)の一人〝甲(こう)王(おう)〟アルマ・コレオプテラ・グアと言ウ!!」


「〝アルマ・コレオプテラ・グア〟……聞いたことないな」


「当然だ。俺は数万――いや、数億年単位で生きているからな、人間。貴様は伝達役(メッセンジャー)として、特別に生かしてヤロウ……。さて、ゴミは殲滅だ」


 刹那、ダーガスが反応する間もなく、アルマの姿が消える。

 音も、空気の揺らぎも、何の痕跡もなく、消えたのだ。


『サラバだ。〝ダーガス・テイガー〟――』


 という声が遺跡中に響き、ダーガスはやっと振り返る。


「――ッ!」


 ダーガスの顔が蒼白に染まる。

 目の前にあったのは、恐らく腕で貫かれて死んだであろう隊員たちだった。


(まさか悲鳴を上げる間もなく、音速――それ以上の速度で殺したというのか――!!)


 更に、アルマはメッセンジャーと言っていた。

 自分のことを世に知らしめるつもりなのだろう。


「全く……やっと、神樹様との連絡役を辞退できたっていうのに――」


 ダーガスを、考えていた。

 アルマの危険性とアルマのことをどこまで伝えるべきか――

 下手すると、俺がアルマに殺されてしまうのではないか――

 Aランクの隊員が無力など、アルマはどれくらいの強さなのだ――

 という先が思いやられる感情と恐怖が合わさった複雑な感情が、ダーガスの頭の中に渦巻く。


 溜息を吐き、そこら中に転がる死体を見つめる。


「……俺、いつまで生きられるんだろうな……」


 最早、自分の人生すらも諦めて考えていた。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!


「面白い!」「続きが気になる!」

そう思っていただけたら、感想や評価をいただけると嬉しいです!


★★★★★やブックマークをしていただけると、作者が飛び跳ねて喜びます!


皆さまの応援が、次のお話を書く力になります。

これからもよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。