侵略阻止計画 其の八
「サテ……こいつは、どうしようカ」
〝鎌持ち〟が呟く。
目の前には、存在定義済みの神樹。
定義前では、魔力は圧倒的に〝鎌持ち〟のほうが上だった。
だが、定義された今では――
例えるならば、子供と大人。
見習い魔法使いと、上級魔術師。
蜥蜴人と、竜族。
蛙と、蛇。
それほどの実力差がある――と、鎌持ちは悟っていた。
(コノままでは、相棒までも失いかねナイ……。既に兵タチは、ニンゲンの手で全滅している。ニンゲン側にも死傷者はデテル筈だが、望ミは薄イ……ナラバ――)
〝鎌持ち〟は、閃く。
この方法ならば、リベルを殺せるかもしれないと。
だが、それは人から見たら非人道的だ。
――しかしそれを平然と実行し、自由を殺せるのが、〝鎌持ち〟であった。
「ハハ……さあ、やるゾ――」
悪意と憎悪が、牙を研ぎ始める。
◆◆◆◆◆◆
溢れ出る力。
定義前までは脅威と感じていた〝鎌持ち〟でさえ、今ではただのカマキリにしか見えない。
――おっと、いかんいかん。
こんな考えをするのはご法度だ。今すぐやめろ。
そう考えていると、鎌持ちが喋る。
「アノ時の力を、取り戻せテさエいれバ――」
――あの時?
もしかしてこいつは、かなり永く生きているのか?
口ぶりからして、四桁以上は言ってそうだが。
「――イや、モういい。リベルよ、自由を象徴する神樹ヨ――」
「…………」
「自由ナノダロウ? ナラバ、選べ」
怒気を孕んだ声で告げられる。
すると、ココンが目で追えない速度でバルドの方へ走り、腕でバルドたちを縛った。
これは、まずい――
「バルドを助けるカ、アラベルを助けるカ。あるいは、両方見捨てルカ」
俺は人を助けたことで、人類を救済するという、自分でもおかしいと思うほどぶっ飛んだ目標を掲げた。
そして、俺は止まらない性格だ。
「……バッカでぇ」
敵となる奴らと相対したことで、何も起こらないわけがなく――
だが、そんな自体になっても、俺は必ず目的を達成するのだ。
そう、決めたのだ。
「――ア?」
「我――いや、もうやめだ、やめ!」
もう吹っ切れた。
ロールプレイだぁ? んなもん楽しむだけでいいんだよ。日常生活でやっちゃただの《《フリ》》だよ!
「俺は、人を助ける。言ったよなぁ!? 両方見捨てるなんつーことも、片方だけ助けるなんてこともしねぇ!」
大きく息を吸って、叫ぶ。
「俺は――〝全員助ける〟んだよ!!」
目に映らぬ速度で伸縮自在の魔剣を水平に振り、鎌持ちを切り倒す。
ココンが鎌持ちを助けようと動くが、それを見逃さずに剣を突き立てる。
「グッ!」
「剣術って分かるよな? なら、コイツがただの〝斬撃〟だ、って分かるよな」
足腰に力を入れ、胴から上をねじり、縦に斬る。
その技は――
「喰らえ。〝天割〟――ッ!」
地面ごと、鎌持ちとココンを両断する。
悲鳴すら上げさせないまま、俺は二撃目の〝天割〟を横に繰り出す。
遅れてやって来た衝撃は、砂埃すらも斬る。
〝天割〟によって斬られた〝鎌持ち〟達に、刃状になった砂埃を連れた衝撃波が降り注ぐ。
「――グガァッ!」
「ギッ――!」
〝鎌持ち〟達は動けぬまま、衝撃波を喰らって身体に負荷をかける――
………
……
…
――再生はするが、遅い。
もう、ほとんど生きていないだろう。
敵と定まったからには、容赦はしない。
戦争は、油断したものが負けだと、創作で教わったからな。
「これが、神樹の実力――」
「すげえな……」
バルドとアルベルが感嘆の声を漏らす。
「――よし。俺の勝ちだ」
そう、勝利を確信する。
しかし、俺はまだ知らなかった。
喰われた獣蟲が生き残ると、どうなるかを――
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