侵略阻止計画 其の七
……眠い。
ここは、どこだ?
一面、真っ白い空間。
麻酔をかけられたかのような意識の不鮮明さ。
『どこだ……これ』
幼いときに見た空間にそっくり――っていっても全白だからそうだろうけど。
『あー、頭いてぇ』
体中が悲鳴を上げている。
全身が痛い。というより、頭を起点として全身に痛みが連鎖していってるような感じがする……。
『この痛みは、この音と関係あるのか?』
先程から、頭から鳴り響く〝音〟。
その正体は、ログさんではない――〝なにか〟の音声のことだ。
《――再構築終了。次に能力の更新――――終了。次に魔法の更新――――終了。次に耐性の更新――終了》
さっきから、ずっと更新をしている。
まるでパソコンのアップデートのように。
『――おい! ここはどこなんだよ!!』
叫んでみるが、ヤマビコのように声が反響するだけ。
――と思ったが……。
《待ちなさい。あと一工程で定義終了するのです》
『――定義?』
俺の疑問はそっちのけで、謎の声が淡々と進める。
《では、最後に――――――の更新――成功。定義完了。世界樹リベルは、幼体から成体となりました》
『おい、ちょっと待て! 最後に言った言葉――お前……!』
そう聞き出そうとする前に、俺の意識は覚醒し始めた――
◆◆◆◆◆◆
目が覚めたら、俺は森の中にいた。
『ん~~?』
しばらく見渡すと、すぐにヴァルデリン森林だということに気づく。
ヴァルデリン森林から戦場まで、約十二キロメートル。
……間に合うのか?
《全然間に合います。先にステータスの方を把握してから行った方がよろしいかと》
『どわあぁ!? ……って、なんだログさんか……心臓に悪い』
《何か、お化けがでたかのような声でしたね……?》
『あ、うん。まあそれは、うん』
じゃあステータスを見るよログさん――と適当にはぐらかしつつ、ログさんにステータスの開示をお願いする。
《――はぐらかされた気がしますが、まあいいでしょう。見てください! これが、新たに生まれ変わった主様の……ステータスです!!》
○名前:リベル
○種族:神樹……世界樹
○称号:定義されし神樹
○加護:創造神の加護
○技術:なし
○魔法:『土系統魔法』『精霊魔法』
○耐性:
・物理無効
・自然無効
・五大属性無効
○能力:
・鑑定
・念話 → 念力
・高速再生 ⇛ 肉体顕現
・万能変化
・超加速
・森羅万象
・魔力感知
・配下創造
・特異スキル『鍛錬成長』 → [未選択]
『おおう……。すげえな』
称号や耐性が変わったのは勿論、スキルが進化してる。
『ログさんや、「鍛錬成長」から進化したスキルが[未選択]ってなってるんだけど?』
《――あ、これはまだ何のスキルにするかを決めてないからですね。決めます?》
――決めれるんだ? スキルなのに。
まあどんなスキルがあるのかワクワクしているところがあるのも否めない。
正直に、俺はイエスと言う。
《では、選択できるスキルは三つあります! それは、こちらです!!》
選択肢一:特異スキル『武具の顕現召喚』
選択肢二:特異スキル『刹那の剣道』
選択肢三:特異スキル『歴代記録』
『……格好良いな』
それしか感想が出ないものである。厨二病大歓喜のかっこいい言葉だ。
さて、どのスキルにしようか。
まず『武具の顕現召喚』と『刹那の剣道』だが――これは、マニフェステーションの方が上かな?
マニフェステーションは武具を召喚して、チャンバラは技量を上げるみたいなスキルなんだろうけど、幸い、俺にはマニフェステーションのほうが合ってる。
技量は《《間に合っている》》し、後は武具の性能を拘りたいからな。
次に、めっちゃかっこいいスキル『歴代記録』なんだが……ぶっちゃけどういうスキルか全くわかんない。
変に選んで「使い方わかんねぇから結局使わね!」となったら選んだ意味がない。
『よし、ここは安全策を選んで――『武具の顕現召喚』を選ぶ!』
《了解致しました!! ――はい! 『鍛錬成長』から『武具の顕現召喚』へと進化させました!》
よっしゃー! 行ってやるぜ! 待ってろよ、〝鎌持ち〟!
……って、どうやって行くの?
《万能変化があるでしょう?》
ああ、あれで地面から顕現しようっていうこと?
『そういうことならやってやるぜ! あ、いざゆかん――!!』
そうして、俺は戦場へと顕現する。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
万能変化を使ったら、何故か、空中にいました。
「……なんで?」
まあそんなことは些細なことだ。問題は、下にいる濃密な魔力を持つ敵だ。
あいつ、『相棒』って呼ばれてたやつじゃね?
間違いない。〝鎌持ち〟とは正反対の赤い甲殻に、反転色である青紫色の瞳。そして、メリケンサックが比にならないほど暴力的な形をした拳。
定義された今なら……鑑定できるかもしれない。
「――鑑定」
○名前:ココン
○種族:[鑑定できません]
○称号:[鑑定できません]
○加護:――の加護
○技術:『魔闘法』
○魔法:『物理魔法』
○耐性:
・火属性無効
・精神攻撃無効
・魔法耐性
○能力:特異スキル『粒子結合』
で、できた……。
まだ虫食いの部分はあるけど、できた!
レベル表記がない――っていうことはコイツも超越だったのか……。
ココンというようだな。よし、やるか。
すぐに気持ちを切り替えて、俺は早速、新たに獲得したスキルを使う。
「何にしようかな? うーん……まあ、取り敢えず唱えとこうか――〝武具召喚〟――」
そういえば、〝アレ〟があったな。
エルフが供えてくれたけど、怖いからとずっと放置していた、あの『ドス黒い棒』!
そう、確か名前は――
「伸縮自在の魔剣――カラドヴォルグ」
そう告げると、神樹――俺の本体から蒼白の柱が立ち上る。
手元から一本の剣が、光から形作っていく。
そうして、『伸縮自在の魔剣』は顕現した。
外見は、変わらず黒い。
だが、間違いなく剣の形となっている。
「――安心したよ」
急降下し、一人の敵と同時に着地する。
――〝鎌持ち〟だ。
鎌持ちもいるのかよ……。
「――相棒。最悪の事態ダ」
「ああ、分かってイル」
[観測対象外]がやって来たのを見て、バルドが静かに剣を構え直す。
「アラベルよ、朗報じゃ。心強い味方が着いたぞ」
アラベルも槍を拾い上げる。
「そうみたいだな、バルド爺。これで生きて帰って、ボーナスがもらえるぜ」
ココンが低く嗤う。
「面白くナって来たナ……」
鎌持ちが、鎌を構える。
「笑ってイる場合ジャないゾ、相棒」
――どうやら、二対一で闘うつもりらしい。
バルドとアラベルが参戦してくれるならいいけど、「絶対参加しないぞ」という雰囲気を醸し出している。
……俺だけが、やらなくてはならないらしい。
仕方ない、と俺は勢いのままの宣言する。
「――やってやるよ〝鎌持ち〟……。この俺――世界樹〝自由〟が、相手してやるよ」
狂瀾怒濤の戦いが今、始まる。
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