侵略阻止計画 其の三
少し考えていたら、迫害の原因が見えてきた気がする。
カルミリス王国が信用できない。
ラミエルがそう言った理由は、おそらく貴族達にあるのだと思った。
異世界モノでお馴染みの、悪徳貴族っていうやつだ。
そういう奴らは悪逆非道な考えをするから、そいつらに扇動された奴らも含めて、亜人達は迫害されてこうなったのだろう。
……ギルドじゃないなら、の推測でしかないけど。
《貴族達が迫害している――という線で、カルミリス王国を監視していきましょうか》
『そうするかね……』
俺はそう区切り、新たな問題を考える。
ズバリ――〝鎌持ち〟とはどういう存在か、だ。
〝鎌持ち〟っていうヤツは、一体何者なんだ?
間違いなく、俺は会ったことはない……と思う。
種族――もよく分からない。情報が〝鎌〟だけだから、特定しようにもできない雰囲気だしな……。
まあ、珍しい種族なのは直感できた。
《それよりも、情報が極端に少なすぎます。人型と〝鎌〟を所持しているしか分かっていません》
『だよな。意図的に隠されてるってわけでも無さそうなんだよ――っと、そんなこんなしている内に、王国に着いたな』
《――カルミリス王国に行ったのですか?》
『〝着いた〟だけどな』
《……むぅ》
根を張っとけばすぐに顕現できるし、万能変化は本当に楽ちんだ。
楽だというだけで、万能な訳じゃないけどな。そこのところを履き違えないで、今後も使用していきたい所存である。
《――良い心がけですね》
『不貞腐れはもういいのか? ログさん』
《ふ、不貞腐れてたわけじゃありません!!》
『はいはい。今日が布告日なんだから、ちゃっちゃと行くぞ。約束の時間まであと七分しかないんだよ! 城門検査で三分使うから、早く行かないと!!』
《――ヤレヤレですね》
そうして俺は久しぶりに、根を本気で走らせる――
◆◆◆◆◆◆
「はー、はー。やっと入れた……」
万能変化で人型に変化して、城門検査を受けた。
ナガンに案内された時は超楽に通過できたのに、今回は物凄い時間がかかったのだ。大体、五分くらい。
なんかいつもより検査が厳しかったというか、殺意が入ってた気がするんだよな。
《宣戦布告日なので、スパイが入りこまないように注意しているかと》
そっか――って、ヤバい! 早く行かないと!
時間にルーズな人と見られないように、タイムリーな男として、早く行かないと!!
そう急いでいると……。
「――あ! 神樹が来たよ!!」
戦場には場違いなほど、明るく可愛らしい声が聞こえる。
タッタッと一人の少女が走り寄る。
「神樹さん、私はジュン! よろしくね!」
「へ? あ、ああ、よろしく……」
だ、誰や? この茶髪少女は?
「すまないね、神樹」
そう歩いてきたのは、前々から感じていた『死』の気配だけでも分かる。
カズサダだ。
「この子は僕の娘でね、ジュンっていうんだ」
「……ああ。それはさっき本人から聞いたのだが――」
「ちょっと破天荒だけど、仲良くしてやってくれ」
ハハハ――と愛想笑いをして、世間話を続けようと、口を開く。
口を開こうとした瞬間、カズサダの目の色が変わった。
「時間がないから、〝鎌持ち〟との戦闘――〝侵略阻止計画〟の編成を伝えとくね。一度しか言わないから、覚えておいて――」
曰く――
主軸はこの俺「世界樹」で、その主力部隊としてギルマス四人とその精鋭兵士百名。精鋭兵士はカルミリスの騎士団から借りてきたらしい。
次に、掃討強襲部隊。メンバーはギルマス六人と、ダーガスが率いる『幻巨像の繚乱』の一部隊。流石にリーダーが出るわけにはいかないらしく、一部隊なら問題ないと許可が降りたとのこと。
最後に、王国防衛部隊。メンバーは残りのギルマス十人と騎士団千名、カルミリスにたまたま居合わせたBランク以上の冒険者数十名。
これが、今回の計画の部隊構成らしい。
――城門前、部隊の中央に立つ。
合計千二百名以上の大部隊だ。
目の前には、数多くの虫の大群。
それに紛れた人型の怪物たち。
目が離せないのは――ど真ん中にいる、両腕が鎌の魔物。
こいつが、〝鎌持ち〟なのだと直感で理解した。
兵士たちの反応は様々だ。
奮起する者。怯える者。達観している者。
それを率いているのは、俺だ。
初めての戦争。
恐怖は、ないといえば嘘になる。
だが、俺は人を助けると決めた。
「戦争くらいで、諦めれると思うなよ!!」
《――流石です。ではその御力、思う存分振るえることを祈っています!!》
兵士たちへと、体を向ける。
一斉に視線が集まる中、俺はたった〝一言〟を叫ぶ。
それはいかなる時でも、己は戦場にいるということを感じさせる言葉。
それは、自分の大切なものを守るために、自らを犠牲にする言葉。
「とぉつげきぃ――――――ッ!!!!」
「「「う、うおおおおぉぉぉぉぉおおお―――ッ!!」」」
俺の合図と共に、兵士が一斉に敵へと襲いかかる――
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