侵略阻止計画 其の一
「神樹、君はこっちに来てくれ」
ギルマス達が続々と退出していく中、カズサダに声をかけられる。
「分かった」
返事をして、促されるままカズサダの後をついていく。
「……」
俺は既に、カズサダを〝ヤバい奴〟と見なしていた。
会議中から、順番に『鑑定』を仕掛けていた。
ギルドマスター達は難なく『鑑定』できたのだが――カズサダだけ、結果が全く得られなかった。
何も分からないのは……前にも同じ事があったのだ。
〝真紅の金剛石〟のように、鑑定結果が[失敗]なのだ。
得られるのは、名前――〝北大路和貞〟の結果だけ。
レベルも、魔法もスキルも、種族すらも分からない。
それが何よりの恐怖であった。
原因も何も分からないので、無心で廊下を歩く。
廊下の道中で、カズサダが立ち止まる。
俺の方へ振り返ると、カズサダが問い掛ける。
「君は、この組織がどういう存在なのかは分かるかい?」
「――名前は、全連。貴殿が設立した組織で、冒険者が何かしらの依頼を達成する程度しか知らないな」
「うん、そうだね。概ねの認識は間違ってないよ」
そう相槌を打ち、カズサダが話を続ける。
「『全領域行動連合』は、僕が作った組織。部門によって職種が異なり、大まかには現地で依頼をこなす『冒険者』とギルドで商売をする『販売者』に分けられている。そして、魔物の情報などを収集したり公開する役割を持つ。ここまでは分かるね?」
コクン、と俺は頷く。
「でもね、それはあくまで表向き……いや、表向きっていうのも良くないな。公にされているギルドのルールに過ぎないんだ。今回の件も、ギルドが〝表に出るかどうか〟の〝境界線〟スレスレなんだよ」
「境界線……」
――全然ついていけない。
何? ギルドは表は体よくしているけど、裏社会とも繋がってるみたいな感じなの?
《――違いますよ》
んなもん分かってんねん!!
ログさんにツッコミを入れると、カズサダから返事が来た。
「そう、境界線。僕たちには、普通じゃ対処できない問題が依頼されてくることもあるんだ。例えば、魔王種――とかね」
「……では、何故我に話した?」
そう聞くと、カズサダは「フフフ」と笑って答える。
「君は〝保護対象〟じゃなさそうだからね。話せば色々と共有できると思ったのさ。だから、この話をした」
そう続き、だんだんと〝圧〟が強まっていく。
「――俺はギルドの総帥だ。総帥ゆえに、冷酷な判断や覚悟も必要になる。神樹、お前は何の覚悟を持っているのだ?」
――これが、ギルドの頂点。
前々から感じていた通り、今の俺では勝てないだろう。
だが、その問いには目的がある。
人にとって覚悟は、必ず抱かなくてはならないものなのだから。
「我はある日、人を助けた。魔物から、人を助けた。関与してしまったがために、我は境界線を超えてしまったのだ。一線を越え、関与したのならば、我は人類を助ける。そう決めたのだ、それが我の覚悟だ!」
「……なるほどね。神樹と言うには、随分と人間臭い」
そう答えると、カズサダの呟きと同時に圧が完全に消えた。
「面白いね。神樹のくせに、人を助けるとは」
「それが、我だ」
「アッハハ! 気に入っちゃったよ……引き止めて悪かったね。これからも、良い関係を築いていきたいと思うよ」
「こちらこそ」
ガシッ! と握手を交わし、俺は万能変化の人化を解いた。
これから、ギルドと色々関わっていくことになるだろう。
だが、それがマイナスな訳がない。人間をより知るための伝手だ。
ブラック企業で生き、働きながら死んだ俺には、最高最善の〝情報屋〟だと思っている。
『――さて、ギルドを通して、沢山人を救ってやるよ』
誰もいない森林にて、俺は呟くのだった。
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