23.ついに人型になれた!!
鉱石のような敵の一部が、そこら中に飛び散っている。
『――え? ……ええ……?』
スライムロードを一撃で倒したという事実に、俺は理解に苦しんだ。
あ、あれ? スライムロードって、A+なんだよね――と何度も自問自答した。
《間違いありません》とログさんも肯定してくれたので、このスライムが強いのは間違いないのだろう。
『だ、だよね……』
じゃ、じゃあおかしいよな?
なんで、俺なんかがワンパン撃破できるんだよ。
《――あの、少しよろしいでしょうか?》
『え、あ、うん。どうぞ』
困惑しつつも、承諾する。
何かしらの説明かな?
《前日、ワイバーンに根を張りましたね。スキルを入手できましたので、その進化を行う許可を欲しいのです》
……スキル進化?
あれ、スライムロードを倒せた理由じゃないのか?
なんで急にスキル進化の許諾を貰うと……いや、まず何を奪ったのかも分からないし……。
『まず、先に何を奪ったのか言って欲し――』
《そこは進化させれば事後報告で申しますので、許可をください!》
なんか強引だな!?
そこまでワイバーンのスキルがすごかったのか?
事後で事故になったらたまったもんじゃないぞ……!?
《許可を下されば、更に強くなれますよ~》
『ぬ、ぬぬ……』
強くなれるのはかなり魅力的な提案だぞ。
いやでも、事故る可能性がある以上、簡単に許可をあげるわけにもいかないんだけど……っ。
『なんか言いくるめられた気がするけど、いいよ。やっていいよ! もう!』
逆ギレに近い感じで、快諾する。
それを聞いたログさんは、嬉しそうな声色でアナウンスをした。
《ありがとうございます。では、スキル進化を行います――――》
しばらく経って、ログさんが店内アナウンスのように声が響く。
《能力進化が完了しました。進化による結果をお伝え致します》
お、おう――と言いながら耳を傾ける。
《ワイバーンの『加速』と『炎の吐息』を獲得しました。それらを進化させ、炎の吐息を獲得したことにより火属性耐性が『火属性無効』へと進化させました。尚、ワイバーンのスキルを奪取したことにより、特異スキル『技能強奪者』を獲得しており、特異スキル『鍛錬成長』が『技能強奪者』内に組み込まれました。それにより、戦闘による成長が完全最適化されました――》
『ちょちょちょちょちょちょちょちょ!?!? 多い! 多いて!!!』
爆弾! こいつ、思いっ切り爆弾を入れやがった!
少しズレるかもしれないが例えるなら――喧嘩中のギスギス夫婦に、しれっと離婚届を渡すような恐ろしいことをしている!!
こいつ、俺をスパコンみたいに急速処理できると思ってるだろ。俺はそんなにハイスペックモデルじゃねえぞ……。
『ええと……?』
《そして――》
――え、あ、まだあるん?
《ついさっき、A+ランクの火赤水晶の粘魔王を『技能強奪者』を試用してみたところ、『万能変化』と『熱源感知』を手に入れたのでスキル効果は完全に保証されました。『熱源感知』は既に『魔力感知』と統合済みです。ですが、おそらくその格によって強奪率が変わると思われますので――》
……ん? 『万能変化』?
『万能変化って、なんでも変身できるの?』
焦燥の感情を胸の内に仕舞いながら、俺はログさんに問う。
《まあ理論上は、はいですね》
俺は、喜びの舞をする。傍から見たら完全に根をブンブン回してるだけだけど。
『イエーーーイ!!! 俺はついに! ついに木だけじゃなくなるんだ!!』
短い間だったけど、ほんっとうに辛かった。暴発する枝、意味わかんない植物たち、ずっと放っといた魔剣とか……本当に大変だった。
『よし、では早速〝万能変化〟を――』
待てよ?
これまたやり方がわからないという事態に陥らないか? 大丈夫だよなログさん???
《――大丈夫です、感覚でいけます》
それが怖いんだログさん!!
枝も感覚で行けるかなーと思ったら時間かかりすぎたし! 現実時間競争だったら最下位だぞ!
『ええい! ままよ!』
俺は感覚のままに『万能変化』を発動させる。
大丈夫だ、俺は想像力豊かなんだ。
ずっと憧れていた人型をイメージするなんて、訳ないんだぜ。
根に、魔力がかつてないほど集まる。まるで根自身が本体になろうとしているかのようだ。
形が定まらなくなる。
『うおお?!』
根が膨張したり、逆にしぼんだり。
伸びたり、縮んだり。
根が切り離され、スライムのように形が変わり続けていく。
『……これ、失敗したかも!! 制御し切れない……!』
《問題ありません……。成功しています》
その言葉と同時に、形が一気に人型へと近づく。
そして、急な眠気が襲いかかってきて、抗うことすらままならないで意識が落ちるのだった。
目が覚めたら、地下迷宮の中だった。
根を三人称視点として見てたわけじゃなくて、一人称視点でだ。
――知らない天井だ――を完璧に再現できている。
「おや――ッ!?」
声が、出る。男……というより、中性的だ。男性プラス女性イコール今の俺という感じ。
自分の見た目は全くわからないが、肩幅と体つきからして間違いなく男性だ。
視線の高さも、成人男性の平均くらいだ。
足の重力で地面を感じられる。
肩を回すことで関節の存在が分かる!
――胸の奥が、ジィンと熱くなる。
「う、う……うおおおおおおぉぉぉぉぉーーーッ!!! 念願の人の型! ついに、ついに! 動けない木から脱却したぞーーーッ!!」
他にも色々トラブルがありそうだけども、今はこの感動を噛み締めるのだった。
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