22.特訓の大成果:ゲルの王
小鬼、豚鬼、飛竜――
こいつらのおかげで、俺は短時間で成長できた。
特訓も、一週間なんて目じゃないほど早く終わったし、急激に強くなった。……ワイバーンは、ほぼ事故みたいなものだけど。
――あとは、その成果を出すだけだ。
『さて、と。ログさん、地下迷宮行くぞ』
俺の言葉の意図を正確に汲み取って応答する。
《迷宮封国アガストスのダンジョンですね。了解いたしました》
俺は逃げない。既にそう決めた。
逃げずに、迷宮の魔物共と戦ってやる。
最悪〝根〟が滅ぼされても、本体は無事だ。死ぬことはまあ無いだろう。
それに――簡単に戦線離脱するつもりもない。
『いざゆかん、封国の地下迷宮へ――!』
俺が格好つけて言いながら、根を駆り出す。
そして、極西へと地中を掘り進めながら考える。
ダンジョンのボスには、通じるのか?
俺の編み出した、〝竜の胴根〟達で倒せるのか――?
一瞬そう思ったが、考えても仕方ない。不安になるだけだ。
未来のことをネガティブに考えすぎても……なんか、こう、あれなだけだ。
実際に相対してから考えよう――と、そう思ったのだった。
◆◆◆◆◆◆
迷宮封国アガストス。
数多の迷宮と地下迷宮が集まる魔境。
迷宮内の魔物は通常とは格段に強く、生きて帰れるのも奇跡――との説明だ。
――そして、俺はそのダンジョンの一つに挑もうとしている。
『――先に聞いておこう、ログさん。《《俺》》のランクは今、どのくらいだ?』
《……ギルドによると、神樹は基本〝測定不能〟です》
そっか――と会話を終わらせようとしたが、ログさんの言葉で遮られる。
《レベル――貴方様のレベルを、どれくらいか知っておられるでしょうか》
レベル?
確か、今は七十六くらいかと――
『七十六くらいじゃないの?』
《完全否定。それは一ヶ月ほど前の話に過ぎないのです。現在、貴方のレベルは――〝超越〟となっております》
一瞬、理解ができなかった。
〝超越〟という単語をレベル表記に使われるなど、意味不明だったからだ。
『ちょ、超越? ……レベルマックスとかじゃなくて? M・A・Xのマックス』
《マックスではありません。〝超越〟です》
俺が現状を受け入れられずにいても、断言してくる。
『ええ……。でも、その超越が最大だとして、そこからはどう強さ分けするの??』
当然の疑問だと思う。
ギルドでは、A+~Eまでとなっているが、それはレベルによる成長などで変動されることがある。
超越――というのは、レベルそのものから脱却した存在。というのがログさんの認識らしい。
では、超越したらどうランク分けするのか。
それは――
《無双階位です!》
――この厨二そうなものである。
一人でどれほど多く倒せるかみたいなランク付けで、格好良いのか分からん。
尚、ログさんは真面目に解説している。
《無双階位というものは、我らが創造神様が制定したランク分けのことで、数字が少ないほど上位、多いほど下位となっております。その数字に関しては〝第一位階〟から〝第十五位階〟まで存在しており、どれかに該当すると必ず何かしらの称号が与えられます。称号と無双階位は自身の鑑定で確認できますので、後ほどご確認ください。では――》
ペラペラペラペラ、と擬音が聞こえてきそうなほど早口。
音のみに集中しないと、聞き逃してしまいそうだ。
『え、ええと……とりあえず、迷宮に行こうか……?』
《――恐らく、行っても無駄足かと》
『――え?』
――え?
おっと、現実と内心共に素っ頓狂な声を出してしまった。
『無駄足? それはどうして?』
《説明するよりも行ったほうが速いですかね……では行きましょう》
急に色々変わるから、せめて振り回されてる方を考えてほしい。
こっちも大変なんだよな――と、俺の心の叫びを発言するよりも早く、根が迷宮深部へと向かっていくのだった。
迷宮深部に到着だ。
今いる所は、多分迷宮の主の大部屋前だ。
《大丈夫ですって、肩の力抜きましょう》
『肩ないぞ』
《では腰――》
『腰も、肩も、首も、なにもない』
《……》
楽しく会話を交わしながら、迷宮の主の扉を突き破る。
『カチコミじゃ』
よくカチコミなんて言うが、ただ単騎での襲撃なんだよな――なんてことは置いておいて。
まずは迷宮の主の内情からだ。
――スライムだ。赤色で、五メートルほどあるスライム。
だがその体は硬そうで、鉱山が佇んでいるようだ。
『鑑定』
俺は構わず鑑定を仕掛ける。
○種族:火赤水晶の粘魔王
○ランク:A+
『ワイバーンより高い〝A+〟ランク。さて、奴に通じるか……っ!』
――――無駄足だと思った理由、それは――――
俺は魔力を最大限まで蓄積させる。スライムは敵意に気づいていないのか、全く動いていない。山のようなゲル状の物体が、光沢を放っているだけだ。
まあ、全然好都合だ。
魔力をどんどん蓄積させ、一部の魔力漏れなく根に集中させる。
『喰らえ! こいつが最大最高の――〝竜の胴根〟だ!!』
スライムロードは何も反応しない。抵抗する暇すら無かったのかもしれない。
俺の一撃がすぐ目の前に迫り――
――――A+ランクなんか楽勝で倒せるほど、貴方様が強いからです――――
そんな幻聴と同時に、粘魔の王――赤きスライムロードが弾け飛んだ。
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